ヒアルロン酸注入で支持靭帯を補強しリフトアップする技

顔のたるみは皮膚表面だけの問題ではありません。その深部にある骨や靭帯の衰えが雪崩のような崩れを引き起こしています。

本記事で解説するのは、単に溝を埋めるだけの従来の対処法とは一線を画すアプローチです。顔の構造を支える「支持靭帯」の根元にヒアルロン酸を注入し、建物の基礎を補強するようにたるみを引き上げる技術について詳述します。

メスを使わずに自然で若々しい輪郭を取り戻すための、解剖学に基づいた論理的な解決策を持ち帰ってください。

目次

支持靭帯(リテイニングリガメント)の構造と役割を理解する

顔の若々しい形状を維持する上で、支持靭帯は建物の「柱」や「杭」に相当する重要な役割を担います。皮膚とその下にある組織が重力に負けて滑り落ちないよう、骨にしっかりと繋ぎ止めているのがこの支持靭帯です。

たるみの根本原因を理解するには、まずこの強力な接着組織の働きを知る必要があります。表面の皮膚だけを引き上げようとしても限界があるのは、深部で支える力が弱まっているからです。

顔の組織を骨につなぎ止めるアンカーとしての機能

私たちの顔は外側から表皮、真皮、皮下脂肪、筋肉、そして骨という層構造になっています。これらは単に重なっているだけでなく、特定のポイントで強力に結合しています。

この結合を担うのが支持靭帯(リテイニングリガメント)です。支持靭帯は骨膜から立ち上がり、筋肉や脂肪層を貫いて皮膚の裏側まで到達する、樹木のような構造をしています。

この「生きた杭」がしっかりとしている間は、顔の皮膚や脂肪は本来あるべき高い位置に留まります。

笑ったり表情を動かしたりしても顔の皮膚がずり落ちないのは、この靭帯がアンカー(錨)として機能し、組織を骨に固定しているからです。特に頬や顎周りのシャープなラインは、この靭帯の張力によって保たれています。

真性靭帯と偽性靭帯の違いと重要性

支持靭帯には大きく分けて「真性靭帯」と「偽性靭帯」の2種類が存在します。

リフトアップ治療において特に重要視するのは「真性靭帯」です。真性靭帯は骨から直接皮膚へとつながる非常に強固な繊維束であり、顔の主要な揺るぎない支点となります。

一方で偽性靭帯は筋膜や筋肉から皮膚へとつながるもので、真性靭帯に比べると固定力は弱く、可動性があります。

ヒアルロン酸注入によるリフトアップでは、骨に根差している真性靭帯の根元を補強することで顔全体を構造的に持ち上げる力を生み出します。

揺らがない土台である真性靭帯へのアプローチこそが、自然な若返りの鍵を握ります。

顔の若さを保つための深部組織の連携

顔の美しさは、皮膚、脂肪、筋肉、骨、そして靭帯のすべてが調和して保たれています。

若い頃の顔がパンと張っているのは、骨の体積が十分で靭帯がピンと張っており、脂肪が適切な位置に保持されているからです。これら深部組織はお互いに密接に関わり合っています。

骨格がテントのポールだとすれば、皮膚はテントの布、支持靭帯はポールと布をつなぐロープの役割を果たします。ロープが緩めばテント全体が崩れて見えるように、靭帯の緩みは顔全体の印象を大きく損ないます。

したがって、治療においては単一の組織だけでなく、これら深部組織の連携を考慮した立体的なアプローチが必要です。

顔面組織の層構造と役割

組織の層主な役割と特徴老化による変化
皮膚(表皮・真皮)外界からの保護と見た目の質感。コラーゲンやエラスチンが弾力を維持。弾力が失われ、薄く伸びることでシワや表面的なたるみが生じる。
皮下組織(脂肪・支持靭帯)ボリュームの形成と組織の固定。靭帯は骨と皮膚をつなぐアンカー。脂肪は重力で下垂・萎縮し、靭帯は緩んで固定力が低下する。
骨格顔の土台。すべての組織を支える基礎構造。加齢とともに骨吸収(骨が痩せること)が進み、土台が縮小して上の組織が余る。

加齢によって靭帯と骨に起こる変化とたるみの仕組み

なぜ年齢を重ねると顔がたるむのか、その物理的な理由は「支持靭帯の緩み」と「骨の萎縮」にあります。

長年重力に晒され続けた結果、組織を支える力が弱まり、さらに土台となる骨自体が小さくなることで、皮膚や脂肪が雪崩のように下方向へと移動を始めます。

この構造的な変化を理解することは、正しい治療法を選択するための第一歩です。

骨の萎縮が引き起こす支持靭帯のゆるみ

加齢とともに私たちの骨は少しずつ吸収され、体積が減少します。これを「骨萎縮」と呼びます。

顔の骨も例外ではなく、特に眼窩(目の周りの穴)が広がり、頬骨が低くなり、顎の骨が後退していきます。骨は支持靭帯が付着している土台そのものです。

土台である骨が小さくなって後退すると、そこに付着していた支持靭帯は余ってしまい、ピンと張っていたテントのロープが緩むような状態になります。

緩んだ靭帯はもはや脂肪や皮膚を元の位置に留めておくことができず、重力に従って組織が下垂します。これが、深いほうれい線やマリオネットライン、フェイスラインの乱れとして表面化するのです。

長年の重力負担によるコラーゲン繊維の劣化

支持靭帯自体も、強靭なコラーゲン繊維の束でできています。しかし、ゴムが長期間引っ張られ続けると伸びてしまうように、支持靭帯も長年にわたる重力の負担や表情運動の繰り返しによって徐々に弾力を失い、伸びてしまいます。

さらに、加齢によって体内のコラーゲン生成能力が低下すると、靭帯の修復や維持が追いつかなくなります。強

度が低下し、伸びきってしまった靭帯は、上の脂肪組織の重みを支えきれなくなります。その結果、頬の脂肪が下がり、口元の脂肪が押し出されるというドミノ倒しのような現象が顔の中で発生します。

支持靭帯が支えきれなくなった脂肪の下垂

顔の皮下脂肪はいくつかのコンパートメント(区画)に分かれています。若い頃はそれぞれの区画が支持靭帯によって適切な位置に保たれていますが、靭帯が緩むと、この脂肪の区画ごと滑り落ちていきます。

例えば頬骨付近にあった脂肪が下がると、鼻の横に深い溝(ほうれい線)を作り出し、さらに下がると口角の横に溜まり(マリオネットライン)、最終的にはフェイスラインを越えて顎下にまで及びます。

単に皮膚が伸びたからたるむのではなく、中身である脂肪の位置移動がたるみの本質的な正体であり、それを許してしまったのが靭帯の機能不全なのです。

靭帯劣化を加速させる外的要因

  • 紫外線(UV-A)による真皮および深部組織へのダメージ蓄積
  • 急激な体重の増減による皮膚と靭帯への過度な負荷
  • 喫煙習慣による血流不全とコラーゲン生成の阻害
  • 過度なマッサージや摩擦による物理的な組織への負担
  • タンパク質不足など栄養バランスの乱れによる組織修復力の低下

ヒアルロン酸で靭帯を補強する注入テクニックの理屈

従来のヒアルロン酸注入は「凹みを埋める」ことが主流でしたが、最新のトレンドは「下がったものを元の位置に戻す」ことです。

これを実現するのが、支持靭帯の根元にヒアルロン酸を注入し、杭を打ち直すように補強するテクニックです。少量のヒアルロン酸で大きなリフトアップ効果を生み出す、解剖学に基づいたアプローチの論理を解説します。

「杭を打つ」ように靭帯の根元を支える発想

この技術の核心は、緩んでしまった支持靭帯の根元(骨との接着点)に硬めのヒアルロン酸を的確に注入することにあります。

骨と靭帯の間にヒアルロン酸という「詰め物」をすることで萎縮した骨のボリュームを補い、同時に緩んだ靭帯を再びピンと張り直させるのです。

イメージとしては、緩んだテントのロープの根本に杭を打ち込み、ロープの張力を回復させる作業に似ています。

靭帯が再び緊張を取り戻すことで、その靭帯がつかんでいた皮膚や脂肪組織が本来の位置へと引き上げられます。これにより、自然なリフトアップ効果が得られるのです。

ボリュームで膨らませるのではなく構造を立て直す

かつての注入治療では、シワの溝そのものにヒアルロン酸を注入して平らにする方法が一般的でした。しかしこれでは顔がパンパンに膨らんでしまったり、不自然な表情になったりするリスクがありました。

対して靭帯補強テクニックは「溝を埋める」のではなく「溝ができる原因となった下垂を引き上げる」方法です。

顔の構造的な崩れを立て直すため、必要最小限の量で最大限の効果を引き出すことが可能です。顔が大きくなることを防ぎながら、立体的でメリハリのある、洗練された若々しさを取り戻すことができます。

これは「フェイスリフト手術」の理論を、注射だけで再現しようとする試みとも言えます。

ヒアルロン酸の弾性を利用したリフト力の発生

このテクニックにはヒアルロン酸製剤の物理的な性質、特に「弾性(Gプライム)」が大きく関わっています。

使用するのはジェル自体が硬く、変形しにくいタイプのヒアルロン酸です。この硬さが、組織を持ち上げる「柱」としての役割を果たします。

柔らかいヒアルロン酸では周囲の組織の圧力に負けて広がってしまいますが、弾性の高いヒアルロン酸は注入された場所に留まり、上から乗ってくる脂肪や皮膚の重みをしっかりと支え返します。

この物理的な反発力が、重力に逆らうリフトアップ力となるのです。

従来法と靭帯補強法の違い

比較項目従来のシワ埋め注入法支持靭帯補強リフト法
目的表面の溝(シワ)を埋めて平らにする組織全体を引き上げ、たるみを根本改善する
仕上がり平らにはなるが、平面的でのっぺりした印象になりがち立体的で本来の骨格が際立つ自然な若返り
使用量深いシワを埋めるため多量になりやすいポイントを突くため、比較的少量で変化を出せる

リフトアップ効果を最大化する主要な注入ポイント

顔にはいくつかの重要な支持靭帯が存在しますが、リフトアップにおいて特に攻めるべき「鍵となるポイント」が決まっています。

解剖学的に計算されたこれらのポイントに的確にアプローチすることで、顔全体を効率的に引き上げることが可能です。

ここでは代表的な注入ポイントとその効果について解説します。

頬の高さを取り戻す頬骨リガメントへのアプローチ

顔の若々しさを象徴するのは、高い位置にある頬のボリュームです。ここに関与するのが「頬骨リガメント(Zygomatic Ligament)」です。

頬骨の弓なりになった部分に付着しているこの靭帯が緩むと、頬の脂肪が下がり、ほうれい線が深くなります。このポイントにヒアルロン酸を注入して靭帯を補強すると、下がっていた頬の脂肪が元の高い位置に戻ります。

これにより、ほうれい線が薄くなるだけでなく、横顔に美しいS字カーブ(オージーカーブ)が復活し、立体的で華やかな印象が蘇ります。

フェイスラインを整える下顎リガメントの補強

口元の横から顎にかけてのラインが崩れる「ブルドッグ顔」の原因となるのが、「下顎リガメント(Mandibular Ligament)」の緩みです。

この靭帯は皮膚を骨に強く固定しているため、加齢で周囲の組織が下がってきても、この靭帯の部分だけは凹んで残り、その上に脂肪が覆いかぶさることでマリオネットラインが形成されます。

この靭帯の周辺、特に後方の顎角部(エラ付近)や顎先に適切に注入を行うことで、フェイスライン全体を後上方へと牽引します。

これにより、マリオネットラインが目立たなくなり、シャープですっきりとした顎のラインを取り戻すことができます。

目元のたるみを改善する眼窩周囲への注入

目は年齢が出やすい部位ですが、ここの老化も骨と靭帯の変化によるものです。眼窩(目の穴)が広がり、眼輪筋を支える「眼窩支持靭帯(Orbital Retaining Ligament)」が緩むことで眉が下がり、目の下にクマやたるみが生じます。

眉の骨の部分や、こめかみ、目の下の骨の上に少量のヒアルロン酸を注入することで、この靭帯を支え直します。

すると、まぶたの重みが取れて目が開きやすくなったり、目の下の影が減少して疲れた印象が払拭されたりといった効果が期待できます。

目周りの注入は非常に繊細な技術を要しますが、顔全体の印象を明るくする効果は絶大です。

主要な支持靭帯と改善エリア

ターゲットとなる靭帯注入による主な効果改善される悩み
頬骨リガメント
(Zygomatic Ligament)
中顔面のリフトアップ、頬の位置を高くするほうれい線、ゴルゴライン、頬のコケ
下顎リガメント
(Mandibular Ligament)
フェイスラインの引き締め、顎周りの形成マリオネットライン、ブルドッグ顔、二重顎
眼窩支持靭帯
(Orbital Ligament)
目周りのリフトアップ、目の下の安定化目の下のたるみ・クマ、まぶたの被さり

外科手術と比較した際のメリットと自然な仕上がり

たるみ治療にはメスを入れる外科手術(フェイスリフト)もありますが、ヒアルロン酸による靭帯補強には手術にはない独自のメリットが数多く存在します。

現代の美容医療において、なぜこの「切らないリフトアップ」が多くの支持を集めているのか、その利点と実際の仕上がりの自然さについて掘り下げます。

ダウンタイムが極めて少ない社会復帰の早さ

最大のメリットは、日常生活への影響が極めて少ない点です。

外科手術であれば、抜糸までの期間や強い腫れ・内出血が引くまでに数週間を要することも珍しくありません。仕事や家庭を持つ多くの人にとって、長期間の休みを確保することは困難です。

一方、ヒアルロン酸注入であれば、処置時間は15分から30分程度で終了します。直後からメイクが可能で、腫れや内出血が出たとしてもメイクで隠せる程度であることがほとんどです。

「ランチタイムトリートメント」と呼ばれるほど手軽でありながら、直後から変化を実感できる即効性は、多忙な現代人にとって大きな魅力です。

周囲に気づかれずに「なんとなく若返った」印象を作る

「整形しました」という明らかな変化ではなく、「最近なんだか綺麗になった?」「痩せた?」と聞かれるような、自然な変化こそがこの治療の真骨頂です。

皮膚を切って無理やり引っ張り上げるのではなく、骨格の補正と靭帯の補強によって解剖学的に正しい「若い頃の状態」に戻すアプローチだからです。

顔の表情筋の動きを阻害することもないため、笑った時の表情も自然です。急激な変化を好まない方や、あくまでナチュラルにエイジングケアをしていきたい方にとって、この「バレにくさ」は非常に重要な要素となります。

将来的なたるみ進行を予防する効果

この治療法には今あるたるみを改善するだけでなく、将来の老化を遅らせる「予防的効果」も期待できます。

ヒアルロン酸が骨の上に存在することで、加齢による骨吸収のスピードを物理的に緩衝する役割を果たしたり、皮膚が折り畳まれて深いシワ(真皮の断裂)として刻まれるのを防いだりします。

定期的にメンテナンスを行い、靭帯の緩みをこまめに補正しておくことで、5年後、10年後の顔の状態に大きな差が生まれます。

「たるんでから治す」のではなく「たるませないように管理する」という、プロアクティブなエイジングケアが可能になります。

外科的リフトと注入リフトの比較

項目外科的フェイスリフトヒアルロン酸靭帯リフト
侵襲性(体への負担)高い。皮膚切開、剥離を行う。低い。注射針による穿刺のみ。
ダウンタイム1〜2週間以上の強い腫れ、包帯などが必要。ほぼ無し〜数日程度の軽い腫れ・内出血。
効果の持続5年〜10年程度と長い。1年〜2年程度(製剤による)。定期的なメンテが必要。

施術に伴うリスクと解剖学的な注意点

いくら「切らない」とはいえ、医療行為である以上、リスクはゼロではありません。特に顔面には無数の血管や神経が走行しており、誤った注入は重大な事故につながる可能性があります。

安全に高い効果を得るためにはこれらのリスクを正しく理解し、解剖学に精通した医師による施術を受けることが重要です。

血管閉塞などの重篤な合併症を避けるために

ヒアルロン酸注入において最も警戒すべきリスクは「血管閉塞」です。

誤って動脈内にヒアルロン酸が入ってしまったり、周囲から血管を圧迫して血流を止めてしまったりすることで、皮膚壊死や、最悪の場合は失明などの重篤な障害を引き起こす可能性があります。

これを防ぐために、医師は血管の走行位置を熟知している必要があります。また、針先が血管に入っていないかを確認する手技(吸引確認)や、先端が丸いカニューレ(鈍針)の使用など、安全対策を徹底することが求められます。

支持靭帯への注入は深部へのアプローチが多いため、解剖学的知識の深さが安全性に直結します。

正しい層(骨膜上)への注入の重要性

支持靭帯を補強するテクニックにおいて、注入する「深さ」は極めて重要です。基本的には血管や神経が多く走行している浅い層を避け、最も深い「骨膜上(骨のすぐ上)」をターゲットにします。

この層は比較的血管が少なく安全性が高い上、土台となる骨を補強するという目的に合致します。

逆に、浅すぎる層に硬いヒアルロン酸を入れてしまうと皮膚表面に凸凹ができたり、筋肉の動きで製剤が移動してしまったりする原因になります。

ミクロ単位での正確な層の捉え方が、美しい仕上がりと安全の境界線となります。

起こりうる一時的な副作用への理解

重篤なトラブル以外にも、軽度の副作用は誰にでも起こり得ます。針を刺すことによる内出血(青あざ)や、注入直後の腫れ、異物感などがこれに当たります。

これらは身体の正常な反応であり、時間の経過とともに自然に消失するものがほとんどです。

また、ヒアルロン酸は水分を引き寄せる性質があるため、施術後数日は少しむくんだように感じることがあります。

これらの経過を事前に知っておくことで、術後の不安を軽減することができます。大切なのは、これらが「失敗」ではなく「経過」の一部であることを理解することです。

知っておくべき潜在的リスク

  • 内出血(1〜2週間で消失、メイクでカバー可能)
  • 施術部位の腫れ・むくみ・違和感(数日で軽快)
  • アレルギー反応(非常に稀だが、赤みや痒みが生じることがある)
  • 感染症(清潔操作の不備などで稀に発生)
  • チンダル現象(浅い層への注入で皮膚が青白く透けて見える現象)

使用するヒアルロン酸製剤の選び方と特性

ヒアルロン酸なら何でも良いわけではありません。支持靭帯を補強し、骨格レベルでリフトアップを図るためには、その目的に適した「力強い」製剤を選ぶ必要があります。

製剤の硬さや弾力性、持続期間など、適切な材料選びが成功の半分を担っていると言っても過言ではありません。

リフト力に必要なGプライム(弾性)の高さ

ヒアルロン酸製剤の性質を表す指標に「Gプライム(G’)」というものがあります。これは製剤の「弾性」や「変形しにくさ」を示します。

支持靭帯の根元に注入し、重力に逆らって組織を持ち上げるためには、このGプライムが高い(=硬くて弾力がある)製剤が必要です。

Gプライムが高い製剤は皮膚の上から押されても潰れにくく、シャープな形状を維持する力に長けています。逆に、唇や細かいシワにはGプライムが低い(=柔らかくて馴染みやすい)製剤を使います。

適材適所の製剤選択が、自然で効果的なリフトアップを実現します。

長期持続型製剤のメリット

リフトアップ目的で使用される高弾性のヒアルロン酸は一般的に体内での分解吸収が遅く、効果が長持ちするように設計されています。多くの製剤で1年半から2年程度の持続期間が見込まれます。

長持ちすることは頻繁な通院の負担を減らすだけでなく、コストパフォーマンスの観点からも有利です。

また、高品質な製剤は組織親和性が高く、体内で炎症反応を起こしにくいという特徴もあります。安価で持続の短い製剤を繰り返すよりも、信頼できる長期持続型製剤を適切に使用することが長い目で見て賢明な選択となります。

アラガン社製などが選ばれる理由

世界中で多くのシェアを持つアラガン社の「ジュビダームビスタ」シリーズ(特にボリューマXCやボラックスXCなど)は、この靭帯補強テクニックにおいて標準的に使用されています。

その理由は、リフト力に優れた特許技術による製法と、厚生労働省の承認を得ている安全性にあります。形成力が高く、注入した位置に留まる力が強いため、狙った通りのリフトアップ効果を出しやすいのです。

医師にとっても扱いやすく、結果の予測がつきやすいため、多くのクリニックで第一選択として採用されています。

ヒアルロン酸製剤の硬さと適応部位

製剤のタイプ特性(硬さ・弾性)主な適応部位・目的
ハードタイプ非常に硬く、リフト力が強い。変形しにくい。支持靭帯の補強、顎や鼻の形成、こめかみ、頬骨上の土台作り。
ミディアムタイプ適度な弾性と馴染みの良さを両立。ほうれい線、マリオネットライン、額の形成、頬のボリューム調整。
ソフトタイプ非常に柔らかく、サラサラしている。唇、涙袋、目周りの小じわ、首のシワなどの浅い層。

よくある質問

痛みはどの程度ありますか?

注入時にはチクッとした痛みがありますが、多くのヒアルロン酸製剤には麻酔薬(リドカイン)が含まれているため、注入が進むにつれて感覚が鈍くなり、痛みは軽減します。

また、痛みに敏感な方には事前に麻酔クリームを塗布したり、笑気麻酔を併用したりすることで、ストレスを最小限に抑えることが可能です。

効果はどれくらいの期間続きますか?

使用する製剤の種類や個人差によりますが、リフトアップ目的で使用される高密度なヒアルロン酸の場合、一般的に1年半から2年程度効果が持続します。

完全に吸収されて元に戻る前に少量をタッチアップ(追加注入)することで、良い状態をより長く、少ない量で維持することが可能になります。

施術後のダウンタイムはありますか?

ほとんどありません。直後からメイクをして帰宅できる程度です。

針を刺した箇所に小さな赤みや、数日間軽い内出血が出る場合がありますが、コンシーラー等で隠せる範囲内であることが大半です。

大事なイベントがある場合は、念のため1週間から2週間程度の余裕を持って施術を受けることを推奨します。

糸リフトとどちらが良いのでしょうか?

たるみの状態や目的によって異なります。ヒアルロン酸は「土台の補強とボリュームロス(凹み)の改善」に強く、糸リフトは「垂れ下がった脂肪を物理的に移動させる」ことに優れています。

多くの場合、まずヒアルロン酸で土台を整え、それでも残るたるみを糸で引き上げるという併用療法が、最も相乗効果が高く美しい仕上がりになります。

気に入らなかった場合、元に戻せますか?

はい、可能です。ヒアルロン酸の大きな利点は、可逆性があることです。

「ヒアルロニダーゼ」という分解酵素を注射することで、注入したヒアルロン酸を数時間から1日程度で水と二酸化炭素に分解し、吸収させることができます。

万が一仕上がりに満足できなかった場合でも、修正やリセットができる安心感があります。

参考文献

WANG, Chao-Chin. Combination Treatment: Threads and Dermal Fillers: With Special Emphasis on Restoring Lower Face Curvature in East Asians. In: Thread Lifting Techniques for Facial Rejuvenation and Recontouring. Cham: Springer International Publishing, 2024. p. 377-389.

FERNEINI, Elie, et al. A review of new facial filler techniques for facial rejuvenation. The American Journal of Cosmetic Surgery, 2014, 31.3: 166-173.

PENG, Jui-Hui; PENG, Peter Hsien-Li. HA Filler Injection and Skin Quality–Literature Minireview and Injection Techniques. Indian Journal of Plastic Surgery, 2020, 53.02: 198-206.

CHUANG, Andy Deng‐Chi, et al. Cephalometric analysis following combined Sub‐SMAS hyaluronic acid injection and subdermal and supraperiosteal poly‐L‐lactic acid injections in Asian women. Journal of Cosmetic Dermatology, 2022, 21.6: 2429-2436.

ISSA, Maria Claudia Almeida, et al. Global facial rejuvenation using a new cohesive, highly concentrated hyaluronic acid filler: A descriptive analysis of 35 cases. Cosmetics, 2023, 10.4: 105.

BHOJANI-LYNCH, Tahera; BERROS, Philippe; SNOZZI, Philippe. Optimizing Infraorbital Hollows Treatment With Hyaluronic Acid Fillers: Overview of Anatomy, Injection Techniques, and Product Considerations. In: Aesthetic Surgery Journal Open Forum. Oxford University Press, 2025. p. ojaf069.

支持靭帯と顔のたるみに戻る

老化メカニズムと顔のたるみ・シワTOP

この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

目次