頬を支える頬骨リガメントの衰えがブルドッグ顔を作る理由

頬を支える頬骨リガメントの衰えがブルドッグ顔を作る理由

顔の印象を大きく左右する「ブルドッグ顔」は、単なる皮膚のたるみではなく、骨と皮膚をつなぎ止めるアンカー(錨)の役割を果たす「頬骨リガメント」の機能低下が根本的な原因です。

この強靭な支持組織が加齢や生活習慣によって弾力を失い、伸びきってしまうことで、支えきれなくなった脂肪や皮膚が雪崩のように下垂し、口元のもたつきやフェイスラインの崩れを引き起こします。

本記事では、この深部組織の変性が顔貌を変化させる構造的な理由を解明し、リガメントの維持に着目した具体的な対策法を提示します。

目次

ブルドッグ顔の正体と頬骨リガメントの基本的役割

ブルドッグ顔と呼ばれる顔貌の変化は皮膚表面の問題ではなく、顔の深層部にある支持組織「頬骨リガメント」が結合力を失い、重力に対抗できなくなることで発生する構造的な崩壊現象です。

私たちの顔は、皮膚だけで形を保っているわけではありません。皮膚の下には脂肪があり、筋肉があり、そして土台となる骨が存在します。これらを強力につなぎ止めているのがリガメント(靭帯)と呼ばれる組織です。

中でも頬骨リガメントは頬の最も高い位置にある脂肪や皮膚を骨に固定する重要な役割を担っており、この結合が強固であるかどうかが、若々しい輪郭を維持できるか、あるいはブルドッグのように頬が垂れ下がってしまうかの分かれ道となります。

リガメントが正常に機能している状態では顔の組織は本来あるべき高い位置に留まりますが、この「留める力」が弱まると、すべての組織がドミノ倒しのように下方向へと移動を開始します。

顔のたるみを引き起こす組織構造の変化

顔の解剖学的な構造を理解することは、たるみの本質を知る上で重要です。顔は外側から表皮、真皮、皮下組織(脂肪)、筋膜(SMAS)、筋肉、骨膜、骨という層構造を成しています。

これらは独立して存在するのではなく、互いに密接に連携しながら形状を保っています。若い頃の顔が張りを持っているのは、これらの層が互いにしっかりと接着し、密度が高い状態にあるからです。

しかし、年齢を重ねるとともに骨は萎縮し、筋肉は拘縮あるいは弛緩し、脂肪は移動し、皮膚は弾力を失います。

特に影響が大きいのが、これらの層を垂直に貫いて骨から皮膚までをつなぐ「杭」のような存在であるリガメントの変化です。

家を建てるときに基礎と柱が重要であるように、顔の構造においてもリガメントという柱がしっかりしていなければ、外壁である皮膚や断熱材である脂肪はずり落ちてしまいます。

ブルドッグ顔は単に皮膚が余っている状態ではなく、内部の柱が傾き、中身が崩れ落ちてきている状態と捉える必要があります。

頬骨リガメントが担う皮膚と骨の結合

頬骨リガメント(Zygomatic Ligament)は、数ある顔面の靭帯の中でも特に強靭で重要な役割を持っています。このリガメントは頬骨の弓状の部分から始まり、咬筋の上を通って頬の皮膚へとつながっています。

この組織の最大の使命は、頬のボリュームを作る脂肪パッド(メーラーファット)を正しい位置に「吊り上げておく」ことです。

笑ったときに頬が高く盛り上がるのは、このリガメントが脂肪をしっかりと支え、筋肉の動きに合わせて適切に形状を変えつつも、位置をキープしているからです。

この結合部分は、貝殻が岩に張り付いている様子に似ています。岩(骨)に貝(皮膚や脂肪)を強力な接着剤(リガメント)で固定している状態を想像してください。

この接着剤が強力であれば、どんなに重力がかかっても貝は落ちません。しかし、接着力が弱まり、繊維が伸びてしまうと、貝は自重に耐えきれずに下へと滑り落ちます。

頬骨リガメントは顔の中で最も重力を受けやすい頬の脂肪を支えているため、他の部位のリガメントよりも負担が大きく、その衰えが顔全体の印象に直結しやすいという特徴があります。

加齢によって生じるリガメントの質の変化

リガメントはコラーゲン繊維を主成分とする結合組織ですが、この組織自体も老化の影響を免れません。若い頃のリガメントは太く、短く、弾力に富んでおり、ピンと張ったゴムのような性質を持っています。

しかし、加齢とともに体内のコラーゲン産生能力が低下し、酸化ストレスや糖化の影響を受けると、リガメントの繊維は細く、硬く、そして伸びやすくなります。

一度伸びてしまったゴムが元の長さに戻らないのと同様に、変性して伸びきったリガメントが自然に元の強さを取り戻すことは困難です。

この質の変化は、組織を骨に固定する力の低下を意味します。さらに、リガメントの付着部である骨自体も加齢によって萎縮(骨吸収)を起こします。

土台となる骨が小さくなり、つなぎ止めるロープであるリガメントが緩むという二重の要因が重なることで、支えを失った組織は急速に下垂します。

これが、ある年齢を境に急に顔が老け込んだように感じる原因の一つです。

リガメントの状態変化と顔貌への影響比較

比較項目健全なリガメントの状態衰えたリガメントの状態
組織の弾力性太く強靭なコラーゲン繊維が密集し、ゴムのような強い弾力を持つ。繊維が細くなり断裂や硬化が見られ、弾力を失い伸びきっている。
脂肪の保持力頬の脂肪を高い位置で強力に固定し、重力の影響を最小限に抑える。脂肪の重さに耐えられず、支えを失った脂肪塊が下方へ移動する。
皮膚表面の形状頬に自然な丸みと高さを形成し、フェイスラインがシャープに見える。頬が平坦になり、下顎付近に肉が溜まることで輪郭が四角くなる。

頬骨リガメントが衰えるとなぜ脂肪が下垂するのか

頬骨リガメントの保持力が低下すると、本来頬の高い位置にあるべきメーラーファットが重力に従って雪崩のように落下し、その終着点である口元やフェイスラインに滞留することでブルドッグ顔が形成されます。

物理的な観点から見ると、これは「吊り橋のワイヤーが切れた状態」に例えることができます。吊り橋の床板(脂肪や皮膚)を支えているメインケーブル(リガメント)が緩めば、床板は必然的に沈み込みます。

顔の場合、この沈み込みは「下垂」として現れます。

特に重要なのは、顔の組織は均一に下がるのではなく、リガメントによる「留め」が効かなくなった部分から選択的に落ちていくという点です。

頬骨リガメントの下にはスペースがあり、支えを失った脂肪はそのスペースへと滑り落ちていきます。これにより、目の下は窪み、逆に口元には厚みが生まれるという、顔の重心の逆転現象が起こります。

重心が下がった顔は、視覚的に老いを感じさせる最も大きな要因となります。

支えを失ったメーラーファットの移動

メーラーファットとは、頬骨のあたりに存在する逆三角形の形をした脂肪の塊です。若々しい顔立ちにおいて、このメーラーファットは高い位置にあり、笑顔を作ったときにふっくらとした立体感を生み出します。

しかし、この脂肪塊は比較的重量があるため、常に強い重力負荷がかかっています。

頬骨リガメントはこの重量を支えるハンモックのような役割を果たしていますが、リガメントが緩むとハンモックの紐が伸びた状態となり、メーラーファット全体が下方向および内側方向へと移動を開始します。

この移動は単に位置が変わるだけでなく、周囲の組織を圧迫しながら進行します。下に落ちてきたメーラーファットは、小鼻の横から口角にかけての皮膚を折り畳むように押し出し、深いたるみの溝を作ります。

本来あるべき場所に脂肪がなくなり、あってはならない場所に脂肪が移動することで顔の凹凸バランスが崩れ、疲れた印象や不機嫌な印象を与えることになります。

重力の影響をダイレクトに受ける仕組み

地球上で生活している以上、私たちの体は常に重力の影響を受けています。立っている状態では顔の皮膚や脂肪には常に下方向への牽引力が働いています。

リガメントが健全であれば、この牽引力に対抗し、組織を骨側に引きつけておくことができます。

これは、テントを張る際にロープをペグで地面にしっかり固定しているのと同じ原理です。ロープに十分な張力があれば、テントは風(外圧)や重力に負けずに形を保ちます。

しかし、リガメントが衰えると、この対抗力が失われます。すると、皮膚や脂肪は重力に対して無防備な状態となり、文字通り「垂れ流される」ように下がっていきます。

特に、頬の皮膚は比較的厚みがあり重たいため、一度支えを失うと下垂のスピードは加速します。仰向けに寝ると顔のたるみが目立たなくなるのは、重力の方向が変わり、組織が背側(骨側)へ移動するためです。

これは、いかに普段重力が顔の組織を下に引っ張っているか、そしてリガメントがいかにそれに抗っているかを示す証拠でもあります。

ほうれい線とマリオネットラインへの波及

頬骨リガメントの衰えによる脂肪の下垂は、単に頬の位置が下がるだけでは終わりません。

落ちてきた脂肪や皮膚は、口の周りにある筋肉(口輪筋)や他のリガメント(咬筋リガメントや下顎リガメント)の上に乗っかる形で止まります。

この「堰き止められた」部分に深いくぼみや溝が発生します。これがほうれい線やマリオネットラインの正体です。

特にマリオネットラインはブルドッグ顔を決定づける要素です。頬から落ちてきた脂肪が口角の下に溜まり、あごのラインを越えて垂れ下がることでフェイスラインのシャープさが完全に失われます。

頬骨リガメントの崩壊は、上流での土砂崩れのようなものです。上流(頬)で止めることができなかった土砂(脂肪)が、下流(口元)に押し寄せ、そこに堆積してしまうのです。

したがって、口元のたるみを解消しようとするならば、口元だけを見るのではなく、その供給源である頬のリガメントの状態を考慮することが重要です。

組織下垂が進行する方向とベクトル

  • 頬骨エリアから口角に向かう斜め内側方向への移動
  • 目の下の眼窩縁から頬中央部への垂直方向への落下
  • フェイスラインを越えて首との境界を曖昧にする下方への突出

リガメントの衰えを加速させる日常的な要因

頬骨リガメントの変性や劣化は、単なる加齢現象だけではなく、日々の生活習慣や環境要因によって加速的に進行します。

リガメントは一度損傷すると修復に時間がかかる組織であるため、何がダメージを与えるのかを理解し、日常的にその要因を排除することが、ブルドッグ顔の予防において極めて重要です。

多くの人が無意識に行っている習慣が、実は顔の内部組織に微細な損傷を蓄積させ、リガメントを「伸ばして」しまっているのです。

特に現代社会では、長時間の下向き姿勢やストレスによる食いしばりなど、リガメントに過度な物理的負荷をかけるシチュエーションが増えています。

また、栄養状態や紫外線などの化学的・環境的ストレスも、リガメントを構成するコラーゲン繊維の質を低下させます。

これらの要因が複合的に絡み合うことで、本来の年齢以上に組織の老化が進んでしまうケースも少なくありません。

紫外線ダメージによるコラーゲン変性

紫外線、特にUVA(紫外線A波)は肌の奥深くにある真皮層だけでなく、さらにその奥にある皮下組織やリガメントにまで到達し、深刻なダメージを与えます。

紫外線は「光老化」の主原因とされ、組織内で活性酸素を発生させます。この活性酸素はリガメントの主成分であるコラーゲンやエラスチンといった弾性繊維を切断したり、変質させたりする作用を持っています。

長年紫外線を浴び続けると、リガメントの繊維は弾力を失い、硬く脆い状態になります。これを「ソーラーエラストーシス(光弾性線維症)」と呼びます。

健康なリガメントがしなやかなゴムバンドだとすれば、紫外線ダメージを受けたリガメントは古くなってひび割れた輪ゴムのようなものです。伸びる力も縮む力も弱くなり、脂肪の重さを支えきれなくなります。

日焼け止めを塗る際、表面のシミ予防だけでなく、深部のリガメントを守るという意識を持つことが大切です。

表情筋の硬直とリガメントへの負担

リガメントは筋肉の間を縫うように走行しているため、表情筋の状態に大きく影響を受けます。特に問題となるのが、筋肉のコリや硬直です。

ストレスや食いしばり癖、あるいは長時間の無表情(パソコン作業やスマートフォンの使用など)によって表情筋が硬くなると、その間を通るリガメントの血流が阻害されます。

血流が悪くなれば組織の修復に必要な酸素や栄養素が届かなくなり、老廃物が蓄積します。

また、筋肉が不自然に収縮した状態が続くと、リガメントに対して常に引っ張る力がかかり続けることになります。この持続的な牽引力は、リガメントを徐々に伸ばしてしまう原因となります。

逆に、表情筋を使わなすぎることも問題です。筋肉が痩せてしまうと組織全体のボリュームが減り、リガメントが余ってたるみの原因となります。

適度に動かし、しなやかさを保つことがリガメント保護につながります。

急激な体重変動が及ぼす組織への影響

短期間での大幅なダイエットや、頻繁な体重の増減(ヨーヨー現象)は、リガメントに対して過酷な試練を与えます。

太った状態では皮下脂肪の量が増え、リガメントには通常以上の重みがかかります。この重みに耐えるためにリガメントは常に引っ張られた状態になります。

その状態で急激に痩せると中身の脂肪だけが減少し、伸びきったリガメントと皮膚だけが取り残されます。風船を一度大きく膨らませてから空気を抜くと、ゴムがしわしわに伸びてしまうのと同じ現象が顔の中で起こります。

一度伸びてしまったリガメントは、脂肪が減ったからといってすぐには縮みません。その結果、支えを失った皮膚が余り、深刻なブルドッグ顔を引き起こすことになります。

体重管理を行う際はリガメントの適応能力を超えないよう、時間をかけて緩やかに行うことが組織を守るために必要です。

リガメントにダメージを与える要因と具体的な影響

要因カテゴリー具体的な要因リガメントへの悪影響
環境的要因紫外線(UVA)の蓄積真皮深層まで到達し、コラーゲン繊維を切断・変性させ弾力を奪う。
物理的要因長時間のスマホ操作・下向き姿勢重力が顔の前面にかかり続け、物理的にリガメントを引き伸ばす。
生理的要因急激な体重の増減脂肪重量の負荷とその後のボリュームロスにより、組織が伸びて余る。
生活習慣要因喫煙・過度な糖質摂取血行不良や糖化反応を招き、リガメントの構成成分を脆く劣化させる。

ブルドッグ顔と他のたるみ症状との決定的な違い

一口に「顔のたるみ」と言っても、その原因や現れ方は千差万別です。

皮膚の表面的な伸びによるもの、むくみによる一時的なもの、そしてリガメントの衰えによる構造的なものなど、それぞれの特徴を正しく見極めることが、適切な対策を講じる第一歩となります。

ブルドッグ顔は、これらの中でも特にリガメントと深部脂肪層(deep fat)の下垂が顕著に関与しており、他の軽微なたるみとは深刻度やアプローチの方法が異なります。

多くの人が化粧品で肌にハリを出せばブルドッグ顔が治ると誤解していますが、これは皮膚表面の問題ではないため、表面的なケアだけでは改善が難しいのが現実です。

ここでは、類似する症状とブルドッグ顔の決定的な違いを明確にし、なぜリガメントへのアプローチが必要なのかを浮き彫りにします。

皮膚の伸びとリガメントの緩みの区別

「皮膚のたるみ」と「リガメント由来のたるみ」は、似て非なるものです。

皮膚のたるみは真皮層のコラーゲンやエラスチンが減少し、肌の表面が弾力を失って緩んでいる状態を指します。指で肌をつまんだときに戻りが遅かったり、細かいうねりが見られたりするのが特徴です。

これらは主に乾燥や紫外線が原因であり、保湿やピーリングなどのスキンケアである程度の改善が見込めます。

一方、リガメントの緩みによるたるみは皮膚そのものではなく、顔の輪郭自体が変形している状態です。指で頬の肉を持ち上げると数センチ単位で移動する場合や、仰向けになると顔の形が劇的に変わる場合は、皮膚だけでなく内部の固定力が失われている証拠です。

リガメントの衰えは「形状の崩れ」として現れ、皮膚のたるみは「質感の劣化」として現れると考えれば、その違いが明確になります。

ブルドッグ顔は明らかに前者の「形状の崩れ」に分類されます。

むくみによる一時的な顔貌変化との比較

朝起きたときに顔がパンパンに腫れていたり、夕方にフェイスラインがぼやけたりするのは「むくみ」によるものです。

これは組織間に余分な水分や老廃物が滞留している状態であり、マッサージや入浴で血行を良くすれば、数時間から半日程度で解消されます。むくみは可逆的(元に戻る)な変化であり、構造自体が壊れているわけではありません。

対してリガメントの衰えによるブルドッグ顔は、組織の配置そのものが変わってしまっているため、マッサージをしたからといって即座にリフトアップすることはありません。

むしろ、むくみを放置することで組織の重量が増し、それがリガメントへの負担となって将来的なブルドッグ顔のリスクを高めるという関係性にあります。

日々の変動があるなら「むくみ」、常に下がっているなら「リガメントの衰え」と判断できます。

骨粗鬆症による骨萎縮の影響度合い

高齢になるにつれて顔の骨も体の骨と同様に骨密度が低下し、体積が減少します。特に下顎骨(あごの骨)や頬骨の萎縮は顕著で、これはテントのポールが細く短くなるようなものです。

ポールが小さくなれば、当然それを覆っているテント生地(皮膚や筋肉)は余ってたるみます。この骨萎縮はリガメントの付着部を後退させるため、リガメントの緩みをさらに助長します。

ブルドッグ顔においてはリガメントの伸びに加え、この骨の萎縮が複合的に関与しているケースが多く見られます。

単なる皮膚の老化であれば骨の影響は少ないですが、顔の下半分が重たくなる現象には土台である骨の後退が深く関わっています。

骨のケア、つまりカルシウムやビタミンDの摂取なども遠回りのようでいて、実はブルドッグ顔対策の一環として重要です。

たるみの種類と特徴・原因の比較

たるみの種類主な原因特徴的な症状
皮膚たるみ型真皮層のコラーゲン減少・乾燥細かいシワや毛穴の開きを伴い、肌表面にハリがない。
むくみ型水分代謝の低下・塩分過多日内変動があり、朝や夕方など時間帯によって顔の大きさが変わる。
脂肪下垂型(ブルドッグ顔)リガメントの劣化・深部脂肪の移動顔の重心が下がり、フェイスラインが崩れ、口元に肉が溜まる。
筋肉老化型表情筋の衰え・硬化無表情のっぺりとした顔つきになり、全体的に下へ流れる印象。

頬骨リガメントを強化し保護するためのケア方法

一度伸び切ってしまったリガメントを完全に元の状態に戻すことは、外科的な処置なしには困難ですが、これ以上の進行を食い止めること、そしてリガメント周辺の組織環境を整えて機能を最大限に引き出すことは可能です。

日々のケアにおいて重要なのは、リガメントに「これ以上負担をかけないこと」と「修復材料を届けること」の2点に集約されます。

誤ったケアは逆効果になることもあるため、リガメントの性質を理解した上での慎重なアプローチが求められます。

美容業界には様々なメソッドが存在しますが、科学的な根拠に基づき、組織を物理的に傷つけない方法を選択することが大切です。

ここでは、自宅で実践できる安全かつ有効なリガメントケアの指針を示します。

靱帯組織にアプローチするマッサージの是非

「リガメントほぐし」などのマッサージ法が紹介されることがありますが、これには細心の注意が必要です。リガメントは強い力で引っ張ったり、擦ったりすることに非常に弱い組織です。

自己流の強いマッサージで皮膚をグリグリと押し込んだり、引き上げようとして強く擦ったりすることは、逆にリガメントを傷つけ、余計に伸ばしてしまうリスクがあります。

リガメントに対する正しいアプローチは、「ほぐす」のではなく「圧をかけて位置を確認し、垂直に押す」程度に留めることです。

リガメントの付着部(頬骨の下あたり)を指の腹で垂直にゆっくりと押し、骨を感じる程度の刺激を与えることで、周辺の血流を改善し、組織の活性化を促すことは有効と考えられます。

しかし、皮膚を横方向に引っ張る動きは厳禁です。組織を愛護的に扱い、決して引き伸ばさないことが鉄則です。

栄養摂取による内部からの組織修復

リガメントはコラーゲンを主成分とする結合組織であるため、その維持と修復には材料となる栄養素が必須です。外からのスキンケアが届かない深部組織だからこそ、内側からの栄養補給が鍵を握ります。

体内でコラーゲンを合成するために必要な栄養素をバランスよく、継続的に摂取することで、リガメントの強度を維持しやすくなります。

特に意識すべきはタンパク質、鉄分、ビタミンCの「コラーゲン生成トリオ」です。タンパク質がアミノ酸に分解され、鉄とビタミンCの助けを借りてコラーゲンとして再合成されます。

どれか一つでも欠けると、良質なコラーゲンは作られません。

また、エラスチンの生成に関わる成分や、抗酸化作用のある成分も積極的に摂ることで、酸化ストレスによるリガメントの劣化を防ぐことができます。

食事だけで補いきれない場合は、サプリメントを賢く利用するのも一つの手段です。

紫外線対策の徹底と真皮層の保護

前述の通り、紫外線はリガメントを破壊する最大の外的要因です。ブルドッグ顔を予防するためには、年間を通じて徹底した紫外線対策を行うことが基本中の基本となります。

特に波長の長いUVAは雲や窓ガラスも透過するため、室内にいるときや曇りの日でも油断はできません。日焼け止めは、PA値(UVAを防ぐ指標)が高いものを選び、こまめに塗り直すことが大切です。

また、飲む日焼け止め(抗酸化サプリメント)などを併用し、体の中からも活性酸素の発生を抑えることで、リガメントへのダメージを最小限に抑えることができます。

物理的な遮断(帽子や日傘)と化学的な遮断(日焼け止め)、そして生物学的な防御(抗酸化)の三段構えで、大切な支持組織を守り抜く姿勢が必要です。

リガメント強化と保護のために意識すべき要素

  • タンパク質の十分な摂取(体重1kgあたり1g~1.5gを目安に)
  • コラーゲン合成の補酵素となるビタミンCと鉄分の同時摂取
  • 活性酸素を除去する抗酸化食品(ビタミンE、ポリフェノールなど)の摂取
  • 皮膚を横に引っ張らない洗顔・スキンケア動作の徹底
  • 摩擦を避けた垂直圧による適度な指圧刺激

美容医療におけるリガメントへのアプローチ

セルフケアで限界を感じた場合や、すでに顕著なブルドッグ顔の症状が現れている場合には、美容医療の力を借りることが根本的な解決への近道となります。

現代の美容医療では、リガメントの解剖学的構造に基づいた治療法が確立されており、切らない治療から外科手術まで症状の進行度や希望に合わせた選択肢が存在します。

これらの治療はいずれも、衰えたリガメントの機能を補強するか、あるいは再構築することを目的としています。

重要なのは、自分のリガメントの状態に合った治療法を選択することです。医師はリガメントの位置や深さ、たるみの程度を診断し、最も効果的なアプローチを提案します。

ここでは、代表的な医療アプローチがどのようにリガメントに作用するのかを解説します。

注入治療による擬似的なリガメント再生

ヒアルロン酸注入は単にシワを埋めるだけでなく、リガメントの補強材として利用されます。具体的には、緩んでしまったリガメントの根元(骨との接着点)に硬めのヒアルロン酸を少量注入します。

これを「杭打ち」のようなイメージで行うことでリガメントを根元から持ち上げ、皮膚全体のリフトアップを図ります。

この手法は「リフトアップ注入」や「True Lift法」などと呼ばれ、自然な仕上がりが特徴です。皮膚をパンパンに膨らませるのではなく、要所要所の支柱を補強することで、構造的にたるみを改善します。

即効性があり、ダウンタイムも少ないため、初期から中期のブルドッグ顔対策として広く行われています。

熱エネルギーを用いた深層への引き締め

HIFU(高密度焦点式超音波)や高周波(RF)を用いた治療は、熱エネルギーをリガメントや筋膜(SMAS)層にピンポイントで届けることで組織を引き締める方法です。

熱によるダメージを与えられた組織は創傷治癒過程においてコラーゲンを大量に生成し、収縮・再構築されます。

緩んだゴムに熱を加えると縮む性質があるように、熱エネルギーによってリガメントや筋膜を引き締め、タイトニング効果を狙います。

定期的に行うことでリガメントの強度を維持し、たるみの進行を遅らせる予防的な効果も期待できます。切開を伴わないため、心理的なハードルが低いのも利点です。

外科的処置によるリガメントの再固定

進行したブルドッグ顔に対し、最も確実かつ劇的な効果をもたらすのがフェイスリフト手術です。

これは伸びてしまったリガメントを一度切離し、たるんだ皮膚や筋膜を引き上げた上で、適切な位置でリガメントを再固定(あるいは癒着させる)処置を行います。

単に皮膚を切り取るだけでなく、深部の支持組織であるリガメントを処理(Ligament Release & Fixation)することで、後戻りの少ない自然な引き上げが可能になります。

根本的な構造修復を行うため効果の持続期間も長く、重度のたるみ解消にはこの物理的な再固定が必要となるケースが多いです。

主な美容医療アプローチとリガメントへの作用

治療法リガメントへの作用機序期待できる効果
ヒアルロン酸注入リガメントの基部に注入剤を置き、支柱として補強・持ち上げを行う。自然なリフトアップと立体感の回復、構造的な支えの強化。
HIFU(ハイフ)超音波の熱エネルギーでリガメント層を収縮させ、コラーゲン増生を促す。組織全体の引き締め、フェイスラインのもたつき解消、たるみ予防。
フェイスリフト外科的にリガメントを剥離・移動させ、引き上げた位置で再固定する。余剰皮膚の切除と深部組織の再配置による根本的なたるみ解消。
糸リフトトゲのある糸を皮下に挿入し、物理的に組織を引っ掛けて引き上げる。リガメントの代替としての支持力提供と糸周囲のコラーゲン生成。

頬のたるみを進行させないための生活習慣の改善

どれほど高価なクリームを使っても、どれほど優れた美容医療を受けても、日々の生活習慣がリガメントにダメージを与え続けるものであれば、その効果は半減してしまいます。

ブルドッグ顔の予防と改善には、24時間365日の「顔への姿勢」を見直すことが不可欠です。

顔にかかる重力のかかり方、筋肉の使い方、そして体の修復機能を正常に働かせること。これらを意識的にコントロールすることで、リガメントの寿命を延ばすことができます。

生活習慣の改善は地味で即効性を感じにくいかもしれませんが、数年後の顔つきに確実な差を生みます。

ここでは、今日からすぐに実践できるリガメントを守るための具体的な行動変容について提案します。

姿勢の矯正と顔面への重力負荷の分散

スマートフォンの長時間使用による「スマホ首」や猫背は、顔のたるみを加速させる最大の悪習慣です。頭が前に傾くと、顔の皮膚は下方向へ垂れ下がる力が強く働きます。また、首の筋肉が縮こまることで広頚筋(首の筋肉)が顔の皮膚を下に引っ張り、フェイスラインを崩壊させます。

スマートフォンを見る際は目の高さまで持ち上げる、デスクワーク中はモニターの高さを調整するなどして頭を脊椎の真上に保つ姿勢を維持することが大切です。

正しい姿勢は、重力の影響を最小限にし、リガメントへの無駄な負荷を減らします。また、天井を見上げて舌を出すなどのエクササイズで、下向きの重力に対抗する時間を設けることも有効です。

質の高い睡眠と成長ホルモンの活用

睡眠は日中にダメージを受けたリガメントや皮膚組織を修復する唯一の時間です。特に睡眠直後の深い眠りの間に分泌される成長ホルモンは、細胞の修復やコラーゲンの生成を強力に促します。

睡眠不足や質の悪い睡眠は、この修復プロセスを阻害し、組織の老化を早めます。

また、寝る姿勢にも注意が必要です。横向きやうつ伏せ寝は顔の片側に長時間体重がかかり、物理的にリガメントや皮膚を歪める原因となります。

毎晩6時間以上、顔を圧迫し続けることは、たるみやシワの形成に直結します。可能な限り仰向けで寝る習慣をつけ、リガメントへの物理的圧迫を回避することが推奨されます。

咀嚼回数の見直しと表情筋のバランス

現代人は柔らかい食事を好む傾向にあり、咀嚼回数が激減しています。よく噛むことは口周りの筋肉や頬の筋肉を活性化させ、リガメント周辺の血流を良くするために重要です。

また、左右均等に噛むことも大切です。片側だけで噛む癖があると片方の筋肉だけが発達し、もう片方は衰えるため、顔の歪みや左右差のあるたるみを生じさせます。

食事の際は一口30回を目指してよく噛み、左右の奥歯をバランスよく使う意識を持ちましょう。

ただし、噛み締めすぎ(TCH)は咬筋を肥大させ、エラ張りの原因となるため、「食事中はしっかり噛み、普段は歯を離す」というメリハリが重要です。適切な筋肉活動は、リガメントを内側から支える良きパートナーとなります。

リガメントを守るための生活習慣チェックリスト

生活習慣カテゴリー改善アクション期待できるメリット
デジタル機器利用スマホを目線の高さで操作する・猫背を正す顔への下向き重力負荷を軽減し、首の筋肉による下方牽引を防ぐ。
睡眠環境仰向け寝を心がける・7時間程度の睡眠確保顔面への物理的圧迫の回避と、成長ホルモンによる組織修復の促進。
食事・口腔習慣左右均等によく噛む・食いしばりを意識的に解く表情筋のバランス維持と血流改善、過度な筋緊張による負荷の軽減。
表情癖口角を上げる意識を持つ・眉間にシワを寄せないリフトアップ筋(大頬骨筋など)の強化と、下制筋の抑制。

よくある質問

リガメントは一度伸びてしまったら自力で元に戻せますか?

残念ながら、一度完全に伸び切ったり断裂してしまったリガメントを、自力(マッサージや表情筋トレーニングのみ)で元の長さに戻すことは生理学的に非常に困難です。

リガメントは筋肉とは異なり、鍛えて太くすることができない結合組織だからです。

しかし、これ以上の進行を食い止めることや、周囲の筋肉を鍛えてサポート力を補うこと、または美容医療の手を借りて補強することは十分に可能です。

「戻す」のではなく「維持する」「補う」という考え方でケアに取り組むことが大切です。

美顔器は頬骨リガメントの強化に効果がありますか?

家庭用の美顔器、特にRF(ラジオ波)やEMS(筋肉刺激)を搭載したものは、リガメントそのものを強化するというよりは、その周辺組織環境を整えるのに役立ちます。

RFの熱作用により真皮層のコラーゲン生成が促されれば、皮膚全体のハリが出てリガメントへの負担が減ります。また、EMSで表情筋を適度に刺激することは、リガメント周囲の血流改善につながります。

ただし、医療機器ほどの出力はないため、劇的な構造変化を期待するものではなく、あくまで日々のメンテナンスツールとして活用するのが賢明です。

若いうちからリガメントケアをするとブルドッグ顔は防げますか?

はい、非常に有効です。リガメントの劣化は長年のダメージの蓄積によるものが大きいため、20代や30代のうちから紫外線対策を徹底し、急激な体重変動を避け、正しい姿勢を保つことは、将来のブルドッグ顔予防に直結します。

特に、まだリガメントに弾力があるうちにコラーゲン生成を助ける栄養を摂り、組織を大切に扱うことで、40代以降の顔の崩れ方に大きな差が出ます。予防に早すぎるということはありません。

頬骨が高い人はブルドッグ顔になりにくいというのは本当ですか?

一概には言えませんが、骨格的な傾向はあります。頬骨が高く前に出ている骨格は、テントの支柱が高い状態と同じで皮膚や脂肪を引っ掛けておく力が物理的に強いため、比較的たるみにくいと言われることがあります。

しかし、頬骨が高い人でもリガメントが劣化すれば脂肪は下垂しますし、逆に頬骨の下が窪んでコケて見えるという別の悩みが生じることもあります。

骨格に関わらず、リガメントの質を維持するケアは誰にとっても必要です。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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