エラスチンの変性と肌の弾力低下|コラーゲンを支える「弾性線維」の重要性

エラスチンの変性と肌の弾力低下|コラーゲンを支える「弾性線維」の重要性

鏡を見たときにふと感じるフェイスラインのもたつきや、かつてのような押し返すハリの減少。これらは単なる乾燥や疲れではなく、肌の奥深くにある「弾力」の要が変化しているサインかもしれません。

私たちの肌にはベッドのスプリングのようにハリを支える機能が備わっていますが、その中心的な役割を果たすのが「エラスチン」という弾性線維です。

コラーゲンが肌の強度を保つ柱であるならば、エラスチンはその柱を繋ぎ止めるしなやかなゴムバンドのような存在といえます。

しかし、このエラスチンは加齢や紫外線などの影響を受けやすく、一度変性すると元に戻すことが非常に難しいという性質を持っています。

本記事では、エラスチンがなぜ変性してしまうのか、そしてその変性が肌の弾力低下にどのように直結するのかを専門的な視点を交えつつ分かりやすく解説します。正しい知識を持つことが、未来の肌を守る第一歩となります。

目次

真皮層におけるエラスチンの役割とコラーゲンとの関係性

肌のハリと弾力を維持するためには真皮層の構造的強度とその柔軟性が決定的に重要であり、エラスチンはコラーゲン同士を結びつけることで、肌にしなやかさと形状記憶能力を与えています。

真皮層は肌の土台とも言える部分であり、ここが崩れると表面的なスキンケアだけでは解決できない深い悩みへとつながります。

ここでは、エラスチンの基本的な機能と、相棒であるコラーゲンとの密接な協力関係について紐解きます。

肌の強度を作るコラーゲンと弾力を生むエラスチンの違い

肌の真皮層の構成要素としてよく耳にするコラーゲンとエラスチンですが、この二つは役割が明確に異なります。コラーゲンは真皮の約70パーセントを占める主要なタンパク質で、非常に強靭な繊維状の構造をしています。

これは建物の「鉄筋」や「柱」に相当し、肌が簡単に破れたり崩れたりしないよう、物理的な強度を提供します。肌を指で押したときに感じる硬さや厚みは、主にこのコラーゲンが担っています。

一方でエラスチンは真皮のわずか2パーセントから4パーセント程度しか存在しませんが、その働きは極めて重要です。エラスチンは「弾性線維」という名前の通り、ゴムのように伸び縮みする性質を持っています。

コラーゲンの柱同士をしっかりと結束し、肌が引っ張られたり表情によって歪んだりした後に、元の形に瞬時に戻る力を生み出します。笑ったあとに目尻のシワがすぐに戻るのは、このエラスチンが正常に機能している証拠です。

量が少ないにもかかわらず、肌の見た目年齢や質感に大きな影響を与えるのがエラスチンの特徴です。

真皮内の主要成分比較

成分名主な役割と機能構造の特徴
コラーゲン肌の強度と骨組みの維持太く強靭な三重らせん構造
エラスチン柔軟性と伸縮性の付与網目状に広がる伸縮構造
ヒアルロン酸隙間を埋める水分保持ゼリー状の基質

線維芽細胞が生み出す真皮のネットワーク構造

これらの重要なタンパク質であるコラーゲンやエラスチンを作り出しているのが、真皮に存在する「線維芽細胞」という細胞です。

線維芽細胞はいわば肌の製造工場であり、ここが活発に働くことで新鮮な線維が生み出され、古くなった線維は分解されて新陳代謝が行われます。

健康な真皮では線維芽細胞がコラーゲンとエラスチンをバランスよく生成し、それらがジャングルジムのように立体的なネットワークを形成しています。

エラスチンは、ミクロフィブリルという細かい繊維の周りにエラスチンタンパク質が沈着することで完成します。

この構造は非常に精巧で、一度壊れてしまうと線維芽細胞が再び同じように美しいネットワークを作り直すことは非常に困難です。

成人の体内ではエラスチンの新規生成能力は著しく低下すると言われており、生まれたときに持っているエラスチンをいかに守り抜くかが、エイジングケアにおいて極めて重要な鍵となります。

ゴムのような伸縮性を実現する架橋構造の秘密

エラスチンがなぜゴムのように伸び縮みできるのか、その秘密は特有のアミノ酸組成と「架橋構造」にあります。

エラスチンはデスモシンやイソデスモシンといった特殊なアミノ酸を含んでおり、これらが鎖状の分子同士をつなぎ合わせる「架橋(クロスリンク)」を形成しています。

この架橋があることで、分子は自由に動きながらも引っ張られると伸び、力が抜けるとバネのように元の位置に戻ることができます。

この伸縮性は表情を作る際の皮膚の動きに追従するために必要です。もしこの架橋構造がなければ、皮膚は一度伸びたら伸びっぱなしになり、たるんでしまいます。

しかし、この架橋構造は紫外線や酸化ストレスに対して脆弱な面も持っています。

過度な刺激を受けると異常な架橋ができたり、逆に架橋が切断されたりして、本来のしなやかな弾力が失われてしまうのです。これを「エラスチンの変性」と呼びます。

紫外線や加齢が引き起こすエラスチンの変性要因

エラスチンが本来の機能を失い、硬くなったり切れたりしてしまう背景には、紫外線による直接的なダメージと、加齢に伴う代謝の変化が大きく関わっています。

肌の弾力が失われる原因を知ることは適切な対策を講じるための基礎となります。エラスチンを変性させる主な要因について詳しく解説します。

肌の奥まで届く紫外線UVAによる光老化の脅威

肌の老化原因の約8割は紫外線による「光老化」であると言われますが、特にエラスチンにとって大敵なのが紫外線A波(UVA)です。

UVAは波長が長く、エネルギー自体はB波(UVB)より弱いものの、物質を透過する力が強いため、表皮を通り越して真皮層にまで到達します。

真皮に到達したUVAは線維芽細胞にダメージを与えるだけでなく、エラスチンやコラーゲンを直接破壊したり、変質させたりします。

長期間にわたり無防備に紫外線を浴び続けると、真皮層には異常なエラスチンが塊となって蓄積する「日光弾性線維症(ソーラーエラストーシス)」という現象が起こります。

これは、破壊されたエラスチンが不規則に凝集し、本来の弾力機能を全く果たさないゴミのようなタンパク質として溜まってしまう状態です。

こうなると、肌は深く刻まれたシワやゴワゴワとした厚みを持つようになり、自然な回復は望めなくなります。

  • 波長の長いUVAが真皮層まで侵入し構造を破壊する
  • 活性酸素が発生し弾性線維の酸化を促進する
  • 異常なエラスチンが蓄積し機能不全を起こす
  • 日焼け止めを塗らない日常の蓄積が数年後に現れる

年齢とともに低下する再生能力と質の変化

私たちの体は成長期を過ぎるとエラスチンを新しく作る能力が急激に低下します。一般的にエラスチンの生成は20代半ば頃をピークに止まるとさえ言われており、その後は今あるエラスチンを使い続けることになります。

長年使い続けたゴムバンドが硬くなり、プツプツと切れてしまうのと同じように、体内のエラスチンも経年劣化を避けることはできません。

加齢により線維芽細胞の数自体も減少し、機能も衰えます。たとえ材料となる栄養素を摂取しても、それを組み立てて綺麗な繊維にする工場の稼働率が下がっているため、修復が追いつかなくなるのです。

さらに、加齢とともにエラスチンの繊維自体が太く短くなったり、配列が乱れたりすることで、皮膚の柔軟性が損なわれます。これにより、若い頃のようなパンとした張り感は失われ、重力に抗えない状態へと変化していきます。

酸化ストレスと糖化が招く繊維の硬化

紫外線や加齢以外にも、体内で発生する化学反応がエラスチンを変性させます。その代表が「酸化」と「糖化」です。

呼吸によって取り入れた酸素の一部は活性酸素となり、体内の組織を攻撃しますが、エラスチンもこの攻撃対象となります。酸化したエラスチンは脆くなり、弾力を失います。

また、食事から摂取した余分な糖が体内のタンパク質と結びつく「糖化」も深刻です。エラスチンはタンパク質の一種であるため、糖と結合してAGEs(終末糖化産物)という悪玉物質を作り出します。

糖化したエラスチンは茶褐色に変色し、柔軟性を失って硬くなります。これを「カルボニル化」とも呼びます。硬くなったエラスチンは伸び縮みできず、表情の動きについていけなくなるため、シワが固定化されやすくなります。

甘いものの摂りすぎや血糖値の急上昇は、肌のバネを錆びつかせる大きな要因となります。

弾性線維の劣化がシワやたるみとして現れる原理

エラスチンという支えを失った皮膚は重力の影響をダイレクトに受けるようになり、フェイスラインの崩れや深いシワとして表面化します。

なぜ単なる乾燥ジワとは異なり、形状が崩れてしまうのか、その物理的なメカニズムを理解しましょう。

バネを失った皮膚が重力に負ける仕組み

健康な肌ではエラスチンが縦横無尽に張り巡らされ、皮膚を皮下組織や筋肉にしっかりと繋ぎ止めるアンカーの役割を果たしています。

重力がかかってもエラスチンのバネが皮膚を元の位置に引き上げるため、たるみは生じません。しかし、エラスチンが変性したり切断されたりすると、この引き上げる力が弱まります。

支えを失った皮膚や皮下脂肪は、重力に従って下へ下へと移動します。特に頬や顎周りなど脂肪の多い部分は重みがあるため、エラスチンの劣化による影響が顕著に現れます。

これがブルドッグラインやマリオネットラインと呼ばれる現象の正体です。皮膚の表面積に対して中身の弾力が不足するため、余った皮膚が垂れ下がるような状態になります。

一度伸びきった皮膚を元に戻すのが難しいのは、内部のバネそのものが壊れてしまっているからです。

エラスチン劣化と肌トラブルの相関

症状の種類エラスチンの状態見た目の特徴
表情ジワの定着伸縮性の低下と硬化無表情でも消えない深い線
フェイスラインの崩れ線維の切断と支持力喪失輪郭がぼやけ四角い顔になる
毛穴の開き(たるみ毛穴)毛穴周囲の弾力不足毛穴が涙型に伸びて連結する

表情の動きとエラスチン断裂による深いシワの形成

私たちは一日に何千回も瞬きをし、会話や食事で口元を動かし、感情豊かに表情を作ります。このたびに皮膚は折りたたまれたり引き伸ばされたりを繰り返しています。

エラスチンが健在であれば、折りたたまれた跡はすぐに元に戻ります。しかし、エラスチンが劣化して硬くなっていると、折り目がついたまま戻らなくなります。

これは、何度も折り曲げた厚紙に折り線がつくのと同じ原理です。特に目元や口元など、よく動かす部分のエラスチンは疲労しやすく、物理的な断裂が起きやすい場所です。

初期段階では表情を作った時だけ現れるシワも、エラスチンの復元力が失われるにつれて、真皮層に深い溝として刻まれ、消えないシワへと進行します。

この段階のシワは表皮の乾燥ケアだけでは改善せず、真皮の構造的なアプローチが必要となります。

肌の密度低下が招く顔全体の形状変化

エラスチンの変性は局所的なシワだけでなく、顔全体の印象を変える「密度低下」を引き起こします。

真皮層のネットワークがスカスカになると、肌はパンとした内側からの圧力を失います。これを「スキン・シンニング(皮膚の菲薄化)」と呼ぶこともあります。

密度が低下した肌は風船の空気が抜けたようにしぼんで見え、影ができやすくなります。目の下のクマが目立つようになったり、頬がこけて見えたりするのも、エラスチンやコラーゲンの減少による肌痩せが関係しています。

顔の重心が下がり、平坦で老けた印象を与えるのは、単に皮膚が垂れ下がっただけでなく、肌内部の充実感が失われていることが大きな要因です。

酵素エラスターゼによる分解作用とその活性化要因

私たちの体内には古くなったエラスチンを分解するための酵素が存在しますが、この酵素が過剰に働くと、必要なエラスチンまで破壊してしまうという問題が発生します。

エラスチンを守るためには、この分解酵素の暴走を食い止めることが大切です。

組織を破壊する好中球エラスターゼの働き

エラスターゼは、エラスチンを分解する能力を持つタンパク質分解酵素の一種です。

本来は新陳代謝の過程で不要になった古いエラスチンを処理したり、細菌感染などの際に防御反応として働いたりするために存在します。特に好中球エラスターゼと呼ばれるものは、炎症反応において重要な役割を果たします。

しかし、このエラスターゼが必要以上に活性化すると、正常なエラスチン線維まで無差別に切断してしまいます。

若い健康な肌では、エラスターゼの働きを抑制する因子が機能しており、分解と生成のバランスが保たれています。

しかし、加齢や外部刺激によって抑制因子の力が弱まったり、エラスターゼの量が過剰になったりすると、分解のスピードが生成のスピードを上回り、真皮の構造が急速に崩壊し始めます。

エラスターゼ活性化のトリガー

刺激要因体内での反応エラスチンへの影響
微弱炎症の慢性化免疫細胞が集まり酵素を放出正常な線維が無差別に切断される
紫外線(UVB)暴露表皮細胞が炎症シグナルを発信真皮での分解酵素の産生促進
精神的ストレスコルチゾール等のホルモン分泌皮膚のバリア機能低下と炎症惹起

炎症が引き金となる酵素の暴走

エラスターゼが暴走する最大の要因の一つが「炎症」です。強い日焼けをした後の肌が赤くなるのは急性炎症ですが、実は目に見えないレベルの「微弱炎症」が慢性的に続くことが、エラスチンにとっては致命的です。

紫外線、摩擦、乾燥、大気汚染物質などの刺激を受けると、肌内部では防御反応として微弱な炎症が起きます。

この炎症に伴い、白血球の一種である好中球が集まり、エラスターゼを放出します。つまり、肌への刺激が日常的に続くと、常にエラスチンが分解され続ける環境を作ってしまうことになります。

日々のスキンケアで肌を優しく扱うことや、摩擦を避けることは、単に肌表面を守るだけでなく、真皮のエラスチンを酵素の攻撃から守るという意味でも非常に重要です。

合成と分解のバランスを保つ恒常性の維持

美しい肌を保つためには、エラスチンの「合成」と「分解」のバランス、すなわち恒常性(ホメオスタシス)を維持することが求められます。

加齢とともに合成能力は自然と低下するため、分解をいかに最小限に抑えるかが勝負どころとなります。最近の研究では、特定の植物エキスや成分にエラスターゼの働きを阻害する作用があることが分かってきています。

スキンケアにおいて「抗炎症」や「酵素阻害」に着目することは、今あるエラスチンを温存するための賢い戦略です。攻めのケアだけでなく、守りのケアを徹底することで、弾性線維の寿命を延ばすことが可能になります。

弾力を維持するための栄養学的アプローチ

化粧品によるケアも大切ですが、エラスチンの材料となる栄養素を体の内側から届けることも同様に重要です。

特にエラスチン特有のアミノ酸や、合成をサポートするビタミン類を意識的に摂取することで、線維芽細胞の働きをバックアップしましょう。

  • 良質なタンパク質を摂取しアミノ酸プールを満たす
  • コラーゲンとエラスチンの合成を助けるビタミンCを摂る
  • エラスチン特有のデスモシン生成に関わる銅や鉄を補う
  • 抗酸化作用のある食材で線維のサビを防ぐ

エラスチン特有のアミノ酸とタンパク質の摂取

エラスチンはタンパク質ですので、その原料となるアミノ酸を食事から十分に摂ることが基本です。

肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質をバランスよく食べることが大切です。特に、牛すじや手羽先、魚の皮などの動物性食品には、コラーゲンやエラスチンが豊富に含まれています。

食べたエラスチンがそのまま肌のエラスチンになるわけではありませんが、消化酵素によってペプチドやアミノ酸に分解され、吸収されたのち、線維芽細胞が新たなタンパク質を作る際の材料として利用されます。

近年では、エラスチン由来のペプチドを経口摂取することで線維芽細胞の増殖シグナルを刺激し、全身の弾力維持に寄与する可能性を示唆する研究も見られます。

日々の食事でタンパク質不足にならないよう心がけることは、肌の基礎体力を維持するために必要です。

線維芽細胞の活動を支えるビタミンCと鉄分

線維芽細胞がアミノ酸を繋ぎ合わせてコラーゲンやエラスチンを作る工程において、補酵素として働くのがビタミンCと鉄分です。これらが不足すると、たとえ材料となるタンパク質があっても丈夫な線維を作ることができません。

特にビタミンCは体内で合成できないため、食事やサプリメントからこまめに補給する必要があります。

また、ビタミンCは強力な抗酸化作用も持っており、紫外線やストレスによって発生した活性酸素を除去し、エラスチンの酸化変性を防ぐ盾としての役割も果たします。

鉄分は女性に不足しがちなミネラルですが、コラーゲン合成の必須因子でもあるため、赤身肉やレバー、ほうれん草などを積極的に取り入れることが推奨されます。

酸化を防ぐ抗酸化成分の重要性

エラスチンの質を保つためには、変性の原因となる活性酸素を無害化することが欠かせません。

ビタミンC以外にも、ビタミンE、アスタキサンチン、リコピン、ポリフェノールなどの抗酸化成分を含む食材を意識して摂りましょう。

例えば、鮭やエビに含まれるアスタキサンチンは、その赤い色素が強力な抗酸化力を持ち、紫外線ダメージから肌を守る働きが期待されます。トマトのリコピンも同様です。

色鮮やかな野菜や魚介類を食卓に並べることは、体の中から紫外線対策を行い、エラスチンを守るための美味しい処方箋となります。

真皮層へのアプローチを意識したスキンケア戦略

化粧品成分の多くは表皮の角質層までしか届きませんが、近年の技術進化により、真皮層の環境を整えたり、線維芽細胞に働きかけたりすることが期待できる成分も登場しています。

エラスチン対策として有効な成分を選び、正しいケアを継続することが大切です。

弾力ケアに推奨される主な成分

成分名期待される作用使用時のポイント
レチノール(ビタミンA)ターンオーバー促進と線維芽細胞の活性化刺激を感じる場合があるため少量から開始する
ナイアシンアミドコラーゲン生成促進とシワ改善敏感肌でも使いやすく朝晩使用できる
ペプチド成分細胞へのシグナル伝達による再生促進複数のペプチドが配合されたものが望ましい

浸透の限界と真皮ケアの可能性

法律上、化粧品の浸透範囲は「角質層まで」とされていますが、特定の有効成分(医薬部外品のシワ改善成分など)は、真皮の線維芽細胞に作用し、コラーゲンやエラスチンの産生を促す効果が認められています。

エラスチンの変性に立ち向かうには単なる保湿だけでなく、こうした「機能性成分」を取り入れることが重要です。特に純粋レチノールやレチノール誘導体は、長年の研究により光老化への効果が実証されている成分の一つです。

肌の代謝を高めるとともに、真皮のコラーゲン密度を高めることで、エラスチンの減少によるたるみを内側から支える効果が期待できます。

ただし、即効性を求めるのではなく、数ヶ月から年単位で継続することで、徐々に肌のハリ感を取り戻していく姿勢が必要です。

線維芽細胞を活性化させる成分の選び方

スキンケア製品を選ぶ際は、パッケージのキャッチコピーだけでなく、裏面の成分表示を確認する習慣をつけると良いでしょう。

「パルミトイルトリペプチド」や「銅ペプチド」などのペプチド類は、細胞に「エラスチンをもっと作れ」という指令を出す鍵のような働きをすると言われています。

また、エラスチンそのものを配合した化粧品もありますが、エラスチンは分子量が大きいため、塗るだけでそのまま肌の弾性線維になるわけではありません。これらは主に保湿剤として働き、肌表面に膜を作ってハリ感を演出する効果があります。

根本的なケアを目指すなら、自らの細胞の力を引き出す成分(レチノール、ナイアシンアミド、ビタミンC誘導体など)と、表面を守る成分を組み合わせて使うことが大切です。

日々の紫外線防御が最大の予防策

どんなに高価な美容液を使っても、紫外線を浴びてエラスチンを破壊し続けていては意味がありません。エラスチンケアにおいて最も投資対効果が高いのは、間違いなく「日焼け止め」です。

特にUVAは窓ガラスも通過し、曇りの日でも降り注いでいます。朝のスキンケアの最後には必ず日焼け止めを塗る、またはUVカット効果のある化粧下地を使用することを習慣化しましょう。

UVAを防ぐ指標である「PA」値が高いもの(PA+++やPA++++)を選ぶことが、真皮のエラスチンを守るためには重要です。365日の防御が、5年後、10年後の肌弾力に大きな差を生みます。

変性を加速させる生活習慣と改善のポイント

エラスチンの状態はスキンケアだけでなく、日々の生活習慣の積み重ねによって決まります。何気ない習慣がエラスチンの分解を早めているかもしれません。

生活全体を見直し、肌の再生を妨げる要因を取り除くことが、たるみ予防の近道です。

エラスチンに影響を与える習慣

習慣・要因エラスチンへの悪影響改善のためのアクション
喫煙血流阻害とビタミンCの大量消費禁煙または本数を減らしビタミンを補給
睡眠不足成長ホルモン減少による修復不全就寝1時間前のスマホ断ちと質の確保
甘い物の過食糖化による線維の硬化と褐色化低GI食品を選びベジファーストを実践

喫煙による血流阻害と活性酸素の発生

タバコは「百害あって一利なし」と言われますが、肌の弾力にとっても最大の敵です。喫煙によって発生する大量の活性酸素は、体内のビタミンCを枯渇させます。

エラスチンやコラーゲンの生成に必要であることを前述したビタミンCが喫煙の害を消すために使われてしまい、肌まで回ってこなくなるのです。

さらに、ニコチンの作用で毛細血管が収縮し、肌への血流が悪くなります。栄養や酸素が真皮層に届かず、老廃物が回収されない状態が続けば、線維芽細胞は元気を失い、エラスチンの合成能力も低下します。

喫煙者の肌に深いシワが多く、くすんで見えるのは、こうした複合的なダメージの結果です。禁煙は、どんな高級クリームよりも強力なエイジングケアとなります。

睡眠の質と成長ホルモンの関係

肌の修復は寝ている間に行われます。特に入眠直後の深い眠りの間に分泌される「成長ホルモン」は、細胞の分裂や修復を促す重要な司令塔です。

日中に紫外線やストレスで傷ついたエラスチンやコラーゲンをメンテナンスする時間は、この睡眠中にしか確保できません。

睡眠時間が短かったり、質が悪かったりすると、成長ホルモンの分泌が不十分となり、ダメージが蓄積されたまま翌日を迎えることになります。

寝る前のスマートフォン操作やカフェイン摂取を控え、リラックスした状態で深い眠りにつくことが、翌朝の肌のハリを育みます。「美肌は夜作られる」というのは、科学的にも正しい事実です。

糖化を防ぐ食生活の工夫

前述の通り、糖化はエラスチンを硬く脆くします。これを防ぐためには、血糖値を急激に上げない食生活が大切です。

空腹時にいきなり甘いお菓子や炭水化物を食べるのではなく、野菜やキノコ類、海藻などの食物繊維を先に食べる「ベジファースト」を心がけましょう。

また、調理法によっても体内へのAGEs(糖化最終生成物)の蓄積量は変わります。揚げ物や焼き物のように高温で調理された食品はAGEsが多く含まれます。

蒸す、煮るといった調理法の料理を増やすことも、体内のエラスチンを焦げ付かせないための有効な手段です。毎日の小さな選択が、数年後の肌の柔らかさを守ります。

よくある質問

一度失われたエラスチンは元に戻りますか?

残念ながら、完全に元の状態に戻すことは現代の医学でも非常に困難とされています。エラスチンの生成能力は思春期をピークに激減し、成人の体内ではほとんど新しく作られません。

しかし、適切なスキンケアや生活習慣の改善によって、残っているエラスチンの質を維持したり、線維芽細胞を活性化させて減少スピードを緩やかにしたりすることは可能です。

完全に元通りにはならなくとも、ケアによって見た目のハリ感を改善することは十分に期待できます。

エラスチン配合のサプリメントは効果がありますか?

摂取したエラスチンがそのまま肌の弾性線維になるわけではありませんが、全く意味がないわけではありません。

消化吸収されたエラスチン由来のペプチドが血流に乗って皮膚に届き、線維芽細胞に対して「エラスチンを作れ」というシグナルを送る役割を果たすという研究報告があります。

コラーゲンやビタミンCと合わせて摂取することで、肌の弾力維持をサポートする補助的な効果は期待できるでしょう。

エラスチンの減少は何歳くらいから始まりますか?

エラスチンの量は20代半ば頃をピークに、その後は徐々に減少・変性していきます。特に40代以降になると、減少スピードが加速し、見た目の変化(たるみやシワ)として実感する人が増えます。

しかし、紫外線を浴びる量が多い人は、20代や30代であっても光老化による変性が進んでいる場合があります。年齢にかかわらず、早めの対策が重要です。

皮下脂肪によるたるみとエラスチン不足によるたるみの違いは?

皮下脂肪によるたるみは、脂肪の重み自体が原因で下垂するもので、急激な体重増加などで起こりやすくなります。一方、エラスチン不足によるたるみは、皮膚そのものの「戻る力」が弱まっている状態です。

皮膚をつまんで引っ張ったときにパチンと戻らずにゆっくり戻るようであれば、エラスチンの変性が関与している可能性が高いです。多くの場合、加齢によるたるみはこの両方が複合して起きています。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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