上顎骨(中顔面)の萎縮とほうれい線|梨状口の拡大が招く顔の凹みと老け見え

上顎骨(中顔面)の萎縮とほうれい線|梨状口の拡大が招く顔の凹みと老け見え

鏡を見たときに感じる「以前とは違う顔の印象」の正体は、単なる皮膚のたるみだけではありません。

実は、皮膚の土台となる「上顎骨(中顔面)」そのものが加齢とともに小さく萎縮し、特に鼻の穴の骨の縁である「梨状口」が広がることで、顔の凹みや深いほうれい線を作り出しています。

この記事では、骨格レベルで進行するエイジングの正体を解き明かし、なぜ顔が平坦になり老けて見えるのか、その理由を深く掘り下げて解説します。

根本的な原因を知ることは、ご自身の変化を正しく理解し、これから選択すべき適切なケアを見つけるための第一歩となります。

目次

骨吸収による上顎骨の変化と顔面構造への影響

加齢に伴い顔の印象が変化する最大の要因は皮膚や脂肪の衰え以前に、顔の土台である頭蓋骨、特に上顎骨において「骨吸収」が進み、骨のボリュームが減少することにあります。

骨吸収とは、破骨細胞が古くなった骨を分解・吸収する働きが骨芽細胞による新しい骨の形成を上回ることで発生し、このバランスの崩れが顔面の立体感を失わせる直接的な原因となります。

加齢に伴う骨代謝バランスの変化と骨量の減少

人間の骨は、一度作られたらそのまま形を維持するわけではありません。常に破壊と再生を繰り返しています。若い頃はこの代謝のバランスが保たれていますが、年齢を重ねると骨を作る力よりも骨を壊す力の方が強くなります。

特に顔面の骨は、腰椎や大腿骨といった体の他の部位よりも早い段階から骨密度の低下や体積の減少を示す傾向があります。

顔の骨が小さくなるということは、その上を覆っている筋肉や脂肪、皮膚といった軟部組織を支える力が弱まることを意味します。

テントの支柱が短くなれば、テントの布地が余ってたわんでしまうのと同様に、骨が縮むことで皮膚が余り、たるみやシワとして表面化します。

この現象は誰にでも起こりますが、その進行度合いには個人差があります。

骨吸収の進行度合いを示す指標

年代骨代謝の特徴顔面骨への影響
30代後半〜骨吸収の速度が徐々に骨形成を上回る眼窩(目のくぼみ)周辺の変化がわずかに始まる
40代〜50代ホルモンバランスの変化により骨量減少が加速上顎骨の萎縮が顕著になり、中顔面の高さが減る
60代以降全体的な骨格の萎縮が進行下顎骨も含めた全体的な変化により輪郭が変わる

ホルモンバランスの変化が骨密度に与える影響

骨の健康維持には性ホルモンが深く関わっています。特に女性の場合、閉経に伴うエストロゲンの急激な減少が骨密度の低下に直結します。

エストロゲンには骨を壊す破骨細胞の働きを抑制する作用があるため、このホルモンが減少すると骨吸収が抑制できなくなり、骨が急速にもろく、小さくなっていきます。

上顎骨も例外ではなく、この時期に顔の雰囲気が急激に変わったと感じる方が多いのは、ホルモンの変化による骨の萎縮が背景にあるからです。

男性においても、加齢によるテストステロンの減少が骨密度に影響を与えますが、女性ほど急激な変化ではないものの、徐々に顔面の骨格は小さくなっていきます。

中顔面(ミッドフェイス)が平坦化する理由

上顎骨、いわゆる中顔面エリアは顔の立体感を決定づける重要なパーツです。若々しい顔立ちは頬の前方への適度な突出によって作られますが、上顎骨が萎縮すると、この前方への張り出しが失われます。

骨が後退することで頬は平坦になり、のっぺりとした印象を与えます。さらに、骨が縮むことで眼球が入っている穴(眼窩)も広がり、目の下のクマや凹みも目立つようになります。

中顔面のボリュームロスは単に頬がこけるだけでなく、顔全体の重心を下げ、疲れた印象や実年齢以上の老け感を相手に与えてしまう大きな要因となります。

梨状口(りじょうこう)の拡大が引き起こす鼻周りの陥没

鼻の穴の骨の開口部である「梨状口」が加齢による骨吸収で外側および下方へと拡大することが、小鼻の横の深い凹みを作り出し、ほうれい線の始まりを深く刻み込む主要因です。

梨状口の縁が後退することで鼻の基部を支える力が失われ、鼻全体が低く埋もれたような形状へと変化していきます。

梨状口の解剖学的変化とエイジング

梨状口とは、頭蓋骨の正面にある鼻腔へと続く洋梨のような形をした開口部のことです。若い頃の梨状口は比較的狭く、縁がしっかりとしており、鼻翼(小鼻)や鼻柱をしっかりと下から支えています。

しかし、骨吸収が進むと、この梨状口の縁、特に外側と下側の骨が溶けるように吸収されていきます。その結果、梨状口の穴自体が大きく広がってしまいます。

穴が広がるということは、本来そこにあったはずの「支え」がなくなることを意味します。この解剖学的な変化は表面上の皮膚の変化としてダイレクトに現れ、鼻の付け根付近が陥没したような影を作ることになります。

鼻翼基部の後退とほうれい線の深化

梨状口が拡大すると、鼻翼基部(小鼻の付け根)の骨が後ろに下がります。これを専門的には「骨の後退」と呼びますが、イメージとしては土台が沈下するような状態です。

小鼻の付け根が骨ごと奥に沈み込むため、そのすぐ隣にある頬の肉との高低差が大きくなります。この高低差こそが、深いほうれい線の正体の一つです。

皮膚の表面だけを引っ張り上げてもほうれい線が完全に消えないのは、この「骨の段差」が存在するからです。

梨状口の拡大による鼻翼基部の陥没は、ほうれい線の「深さ」と「影」を強調し、メイクでは隠しきれない溝を形成します。

梨状口拡大による視覚的な変化

  • 小鼻の横が深く窪み、影ができる
  • 鼻の下(人中)が長く間延びして見える
  • 鼻先が下を向き、鷲鼻のような形状に近づく
  • 横顔を見たときに口元が相対的に突出して見える

鼻柱の支持組織の喪失と鼻の形状変化

梨状口の下縁にある骨は、鼻柱(左右の鼻の穴の間にある柱)を支える棘(きょく)のような突起、前鼻棘(ぜんびきょく)とつながっています。骨吸収によってこの部分も後退・縮小すると、鼻柱を支える力が弱まります。

その結果、鼻先が下がり気味になったり、鼻全体が顔の中に埋もれて低くなったように見えたりします。

若い頃はツンとしていた鼻先が年齢とともに丸く下がったように感じるのは皮膚のたるみだけでなく、この骨格的な支持組織の喪失が大きく関係しています。

鼻の形状変化は顔の中心で起こるため、顔全体の印象を大きく左右し、老け見えを加速させる要因となります。

上顎骨の萎縮がもたらす軟部組織の移動とたるみ

上顎骨の容積が減少することで、それまで骨に張り付くように位置していた脂肪や皮膚などの軟部組織が重力に抗えずに下方へと滑り落ち、これが「たるみ」として顔の下半分に集積します。

骨というアンカー(留め具)を失った軟部組織の雪崩現象が、フェイスラインの崩れや口元の重たさを引き起こしています。

テントポール効果の喪失と皮膚の余剰

顔の構造をキャンプのテントに例えると、骨格はポールであり、皮膚や軟部組織はテントの布地です。ポール(骨)がしっかりとしていれば、布地(皮膚)はピンと張った状態を保てます。これを「テントポール効果」と呼びます。

しかし、上顎骨が萎縮して小さくなるということは、このポールが短くなったり細くなったりすることと同じです。中のポールが小さくなれば、表面の布地は当然余ってしまい、シワが寄ったり垂れ下がったりします。

美容医療の分野では、この余った皮膚をどうするかという議論になりますが、根本的な原因は皮膚が伸びたこと以上に、中身の骨が減ってしまったことにあるのです。

靭帯(リガメント)の緩みと脂肪の下垂

顔には、骨と皮膚をつなぎ止める「靭帯(リガメント)」という強固な組織が存在します。これらは顔の要所要所にあり、脂肪や皮膚がずり落ちないように支える杭のような役割を果たしています。

しかし、土台となる骨が吸収されて後退してしまうと、骨に付着している靭帯の根元も一緒に後ろに下がったり、緩んだりしてしまいます。

ピンと張っていたはずの杭が緩めば、支えられていた脂肪(メーラーファットなど)は重力に従って下へと移動します。

本来、頬の高い位置にあるべき脂肪が下がり、ほうれい線の上に乗っかることで、シワをより深く見せてしまうのです。

骨萎縮と軟部組織の移動の関係性

骨の変化軟部組織(脂肪・皮膚)の反応表面に現れる老化現象
上顎骨前面の後退前方への張り出しを失い、下方へ移動ゴルゴラインの出現、頬の平坦化
梨状口の拡大小鼻横の支持を失い、溝へ落ち込む深いほうれい線の形成
下顎骨の萎縮フェイスラインの皮膚が余るマリオネットライン、ブルドッグ顔

顔面の下半分への組織の集積

上顎骨の萎縮によって支えを失った組織は最終的にどこへ行くかというと、顔の下半分、特に口周りや顎周りに集まってきます。

上から落ちてきた脂肪と皮膚が口元で滞留することで、口角が下がったような印象や、フェイスラインのもたつきが生じます。

若い頃は逆三角形や卵型だった顔の輪郭が、加齢とともに四角くベース型に近づいていくのは、骨の萎縮による組織の下垂が原因です。

顔の下半分にボリュームが出ることで視覚的にも重心が下がり、重たく老けた印象が強調されてしまいます。この変化は単に皮膚を引き上げるだけでは解決しづらく、ボリュームの再配置が必要であることを示唆しています。

顔の凹みと影が作り出す「老け見え」の視覚的メカニズム

上顎骨の萎縮は物理的な形状変化だけでなく、顔に落ちる「光と影」のコントラストを変化させ、特に目の下や頬の凹みによる暗い影が、疲労感や老齢な印象を周囲に強く認識させます。

人間の脳は顔の凹凸が生む影のパターンによって年齢を判断する傾向があり、骨格変化による影の増大は実年齢以上に見られる要因となります。

オージーカーブの消失と平坦な横顔

若々しく美しいとされる顔には、「オージーカーブ(S字カーブ)」と呼ばれる特徴的なラインが存在します。

これは、斜め横から顔を見たときに、頬骨の高い位置から頬の中央にかけて描かれる、ふっくらとした滑らかな曲線のことです。

しかし、中顔面の骨が萎縮すると、この曲線を支える土台がなくなり、カーブが平坦化、あるいは凹んでしまいます。S字の立体感が失われると顔全体がのっぺりとし、メリハリのない印象になります。

横顔や斜め顔において、頬の丸みは若さの象徴でもありますが、骨吸収はこの丸みを奪い、直線的で骨ばった、あるいはやつれた印象を作り出してしまいます。

目の下のクマ(ティアトラフ)の正体

「最近、目の下のクマが消えない」と悩む方の多くは、色素沈着や血行不良だけが原因ではありません。

眼窩(目の穴)の下縁の骨が吸収されて広がることにより、目の下の皮膚が落ち込み、深い溝ができることが大きな原因です。この溝を「ティアトラフ」と呼びます。

ティアトラフは、上顎骨の前方への突出が減ることでより顕著になります。ここに照明などの光が当たると深い影が落ち、それが黒っぽいクマとして認識されます。

コンシーラーで色を隠してもクマが消えないように見えるのは色が原因ではなく、骨格の後退による「形状的な凹みと影」が原因だからです。

影の形成場所と与える印象

影ができる部位原因となる骨格変化相手に与える印象
目の下(目頭側)眼窩下縁の骨吸収疲労感、寝不足、やつれ
小鼻の横梨状口の拡大不機嫌、老い、厳しい表情
頬の中央(斜め)上顎骨前面の平坦化不健康、生気のなさ

ハイライトが入らない顔面の陥没

メイクアップにおいて、ハイライトは高く見せたい部分に入れますが、骨が萎縮して凹んでしまった部分には、自然な光(ハイライト)が当たりにくくなります。

特に小鼻の横(梨状口付近)や目の下が窪むと、どんなに明るいファンデーションを塗っても、骨格的な奥行きによって光が届かず、暗いまま沈んで見えます。

若々しい肌はパンと張った内側からの圧力によって光を反射し、レフ板効果のような輝きを放ちますが、骨の萎縮による凹みは光を吸収して影に変えてしまいます。

この「輝きの喪失」と「影の増大」こそが、老け見えの視覚的な正体であり、骨格へのアプローチなしには改善が難しい理由でもあります。

骨吸収を加速させる生活習慣と注意点

加齢による骨吸収は避けられない生理現象ですが、日々の生活習慣や栄養状態によってはその進行速度を早めてしまう恐れがあり、特に喫煙や過度なダイエット、歯の健康状態の悪化は顔面の骨密度低下に強く関与します。

遺伝的な要素も存在しますが、後天的な環境要因をコントロールすることで、上顎骨の萎縮スピードを緩やかにすることは可能です。

栄養不足と極端なダイエットの影響

美しいスタイルを維持したいという願いから行われる無理な食事制限は、顔の骨にとっては大きなダメージとなります。

骨の代謝にはカルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質など、多岐にわたる栄養素が必要です。

カロリーを制限しすぎてこれらの栄養素が慢性的に不足すると、体は生命維持に必要な血中のカルシウム濃度を保つために、自らの骨を溶かしてカルシウムを取り出そうとします。このとき、顔の骨も例外なく吸収の対象となります。

若い頃からの繰り返すダイエットや栄養バランスを無視した食生活は、将来的な顔のたるみやシワのリスクを高める行為と言えます。

喫煙と酸化ストレスによる骨へのダメージ

喫煙は、百害あって一利なしと言われますが、骨の健康にとっても非常に有害です。タバコに含まれるニコチンやその他の有害物質は血管を収縮させ、血流を悪化させます。

骨の代謝も血液によって運ばれる栄養素や酸素に依存しているため、血流が悪くなれば骨を作る細胞の働きが低下します。

さらに、喫煙は体内で活性酸素を大量に発生させ、この酸化ストレスが骨を壊す破骨細胞を活性化させることが分かっています。

また、女性の場合、喫煙はエストロゲンの分解を早め、閉経を早める傾向があるため、ホルモン減少による骨粗鬆症のリスクをさらに高め、顔面の骨萎縮を加速させます。

骨の健康を損なう生活習慣リスト

  • カルシウムやビタミンDが不足した偏った食生活
  • 日常的な喫煙習慣および受動喫煙
  • 過度なアルコール摂取
  • 運動不足による骨への刺激不足
  • 慢性的な睡眠不足とストレス

歯の喪失と噛む刺激の減少

「歯」と「顎の骨」は密接に関係しています。歯は上顎骨や下顎骨にある「歯槽骨」という部分に埋まっており、噛むという行為による物理的な刺激が骨に伝わることで、骨の代謝が維持されています。

しかし、歯周病などで歯を失ったり、合わない入れ歯を使い続けたりして噛む力が弱まると、骨への刺激が激減します。刺激のなくなった骨は「不要である」と体が判断し、急速に吸収されて痩せていきます。

特に上顎の奥歯や前歯を失うことは、中顔面の骨の萎縮に直結し、口元のシワや頬のコケを進行させる大きな要因となります。

定期的な歯科検診を受け、口腔内環境を整えることは、顔の若さを保つためにも非常に重要です。

自分自身の骨格変化を知るためのセルフチェック

自分の顔の骨が萎縮しているかどうかを正確に知るには医療機関での画像診断が必要ですが、日々の観察や触診によってある程度の変化や兆候を捉えることは可能であり、早期に気づくことが対策への第一歩となります。

鏡や写真を用いた客観的な比較や指先の感覚を通じて、骨格レベルでのエイジングサインを見逃さないようにしましょう。

過去の写真との比較ポイント

現在の鏡の中の自分だけを見ていても、毎日のわずかな変化には気づきにくいものです。5年前、10年前の自分の写真を用意し、現在の顔と見比べてみてください。

注目すべきは「影」の入り方です。以前はなかった場所に影ができていないか、特に小鼻の横や目の下に深い影が刻まれていないかを確認します。

また、顔の輪郭にも注目してください。以前はシャープだった顎のラインが四角くなっていないか、頬のトップの位置が下がっていないかを確認します。

皮膚のたるみとして認識していた変化が、実は骨の形が変わったことによるものだと気づくヒントが、過去の写真には隠されています。

指で触れて確認する梨状口の広がり

梨状口の拡大は、指で触れることで実感できる場合があります。小鼻のすぐ横、ほうれい線の始点となる部分を指の腹で優しく押さえてみてください。骨の縁を感じることができるでしょうか。

加齢とともに梨状口が拡大している場合、この骨の縁が以前よりも外側に移動していたり、段差が鋭く深く感じられたりすることがあります。

また、小鼻の付け根が深く沈み込んでいる感覚があれば、それは骨の後退を示唆しています。ただし、強く押しすぎると組織を傷めるため、あくまで優しく触れる程度にとどめ、骨の形状をイメージしながら確認することが大切です。

骨萎縮のセルフチェック項目

チェック部位確認すべき変化のサイン骨格変化の可能性
小鼻の横指が深く沈み込む、骨の縁が遠く感じる梨状口の拡大
目の下クマのような黒い影が消えない、窪んでいる眼窩の拡大・骨吸収
口元梅干しジワができる、上唇が薄くなった歯槽骨・上顎骨の萎縮

メイクのノリと崩れ方で見る変化

メイクの変化も骨萎縮のサインとなります。例えば、ファンデーションがほうれい線に溜まりやすくなった、チークを入れる位置に迷うようになった、といった経験はないでしょうか。

骨が萎縮して顔が平坦になると、チークをのせるべき頬骨の頂点が曖昧になり、以前と同じメイクをしても違和感が出るようになります。

また、目元においてアイラインが引きにくくなったり、アイシャドウがくすんで見えたりするのも、眼窩の拡大による目元の被さりや窪みが影響している可能性があります。

メイクが「映えない」と感じるようになったら、それは肌質の変化だけでなく、キャンバスである骨格の形状変化を疑うタイミングかもしれません。

美容医療による構造的アプローチとボリューム回復

失われた骨のボリュームを化粧品やマッサージで元に戻すことは不可能ですが、美容医療の分野ではフィラー(注入剤)を用いて骨の代わりとなる支柱を作り、構造的に顔の凹みを修復するアプローチが確立されています。

萎縮した骨膜の上に適切な製剤を配置することで、土台からのリフトアップを図り、自然な若返りを目指すことが現代のエイジングケアの主流となりつつあります。

ヒアルロン酸注入による土台形成

現在、最も一般的かつ安全性が確立されているのが、ヒアルロン酸製剤を用いた治療です。

ここで重要なのは、シワの溝を埋めるように浅く注入するのではなく、「骨膜上」と呼ばれる深い層に、硬めのヒアルロン酸を注入することです。

骨が萎縮して減ってしまった部分に骨の代わりとしてヒアルロン酸を置くことで、失われた高さを取り戻し、靭帯を元の位置に引き上げます。

これにより、梨状口の凹みが持ち上がり、ほうれい線が浅くなるだけでなく、顔全体のリフトアップ効果が期待できます。骨格を補正するように注入するため、不自然に膨らむことなく、自然な立体感を復元できるのが特徴です。

ハイドロキシアパタイトや新しい製剤の選択肢

ヒアルロン酸以外にも、骨の成分であるカルシウムを主成分とした「ハイドロキシアパタイト(レディエッセなど)」という製剤も存在します。

これはヒアルロン酸よりも硬さがあり、形成力が高いため、顎や鼻、頬の骨格形成により適している場合があります。

また、近年では体内でのコラーゲン生成を促すタイプの注入剤(ポリカプロラクトンなど)も登場しており、自身の組織を増やすことでボリュームを補う治療も選択肢として広がっています。

どの製剤を使用するかは骨の萎縮具合や皮膚の厚み、目指す仕上がりによって異なり、医師の診断と技術が結果を大きく左右します。

主な注入治療の比較

製剤の種類特徴とメリット適している部位
高分子ヒアルロン酸リフト力が強く、修正が可能(溶解できる)梨状口、頬、顎、こめかみ
ハイドロキシアパタイト硬さがあり骨のような形成力を持つ顎のライン、鼻筋、深い土台作り
コラーゲンブースター自己組織の再生を促し、効果が長持ちする頬のコケ、顔全体のボリュームロス

再生医療と根本的な若返りへの期待

さらに進んだアプローチとして、再生医療の分野も注目を集めています。自身の血液から抽出したPRP(多血小板血漿)や、脂肪幹細胞を用いた治療などは、萎縮した組織の再生能力を高めることを目的としています。

即効性という点ではフィラー注入には及びませんが、肌質の改善や、時間をかけて自然にボリュームが回復していく点において、異物を入れることに抵抗がある方にとって魅力的な選択肢となります。

骨そのものを増やすことは現時点では難しいものの、骨を取り巻く環境を活性化し、老化の進行を緩やかにする包括的なケアとして、こうした先進的な医療を取り入れる方も増えています。

よくある質問

顔のマッサージをすれば骨の萎縮は防げますか?

残念ながら、顔のマッサージで骨の萎縮を防ぐことはできません。

むしろ、強い力でマッサージを行うことは、皮膚と骨をつなぐ靭帯(リガメント)を伸ばしてしまったり、皮膚への摩擦で肝斑や色素沈着を引き起こしたりするリスクがあります。

骨へのアプローチはマッサージのような外的刺激ではなく、栄養摂取やホルモンバランスの管理、適切な歯科治療といった内的要因、あるいは美容医療による物理的な補填が必要です。

カルシウムのサプリメントを飲めば顔の骨は元に戻りますか?

一度萎縮して小さくなってしまった骨をサプリメントだけで元の大きさに戻すことは極めて困難です。

しかし、カルシウムやビタミンD、マグネシウムなどを積極的に摂取することは、これ以上の骨吸収の進行を遅らせ、今ある骨を守るためには非常に大切です。

予防という意味ではサプリメントや食事療法は有効ですが、形状を回復させる手段としては期待できません。

骨の萎縮は何歳くらいから始まりますか?

個人差はありますが、一般的には30代後半から40代にかけて骨量の減少が始まり、徐々に加速していきます。特に女性は閉経を迎える50歳前後にエストロゲンの減少により急激に骨密度が低下する傾向があります。

しかし、目に見える変化として「顔が凹んできた」「ほうれい線が深くなった」と感じるのは、骨の変化がある程度進行してからであるため、40代半ば以降に自覚される方が多いです。

60代ですが今から治療しても手遅れでしょうか?

決して手遅れではありません。60代、70代であっても、ヒアルロン酸注入などで失われた骨のボリュームを補うことは十分に可能です。

むしろ、骨の萎縮が進行している年代の方ほど、適切な位置にボリュームを足すことで、劇的な若返り効果や、疲れた印象の改善を実感しやすい傾向にあります。

年齢に応じた適切なアプローチを行うことで、いつからでも顔の印象を明るく前向きに変えることができます。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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