顔の脂肪吸引はたるみを悪化させる?適応を見極める「皮膚の余り」と脂肪の関係

顔の脂肪吸引を検討する際、多くの人が「小顔になりたい」と願う一方で、「脂肪を取った後に皮が余って、かえって老けて見えるのではないか」という不安を抱きます。

結論から言えば、皮膚の伸縮能力を超えて脂肪を除去した場合、たるみが生じるリスクは高まります。重要なのは、現在の皮膚の状態と皮下脂肪の量のバランスを正しく把握することです。

本記事では、後悔しないために知っておくべき「皮膚の余り」と脂肪の関係性、そしてリスクを回避するための判断基準について詳しく解説します。

目次

脂肪減少と皮膚収縮のバランスが生む結果

脂肪吸引によって物理的に脂肪細胞を除去すると、皮膚の下には空洞が生まれます。この空洞が治癒過程で適切に閉鎖し、皮膚が筋肉や筋膜にしっかりと張り付けば美しい引き締め効果が得られます。

しかし、皮膚の収縮力が追いつかない場合、風船の空気を抜いた後のように皮膚が余り、たるみとなって現れます。

ここでは、脂肪の減少量と皮膚の収縮力の関係性が、最終的な仕上がりにどのような影響を与えるのかを解説します。

ボリューム減少による皮膚の余剰現象

顔の輪郭を形成しているのは、骨格、筋肉、そしてその上にある皮下脂肪と皮膚です。脂肪吸引はこのうち「皮下脂肪」のみを減らす施術です。

内容物である脂肪が減れば、それを包んでいた皮膚の表面積は相対的に余ることになります。若い健康な皮膚であれば、ゴムのように縮む力(収縮力)が働くため、内容物が減っても皮膚は新しい輪郭に合わせてフィットします。

しかし、この収縮力には限界があります。例えば、急激なダイエットで体重を落とした際、お腹や二の腕の皮がたるむのと同様の現象が顔でも起こり得ます。

特に、一度に大量の脂肪を取りすぎると、皮膚が縮もうとするスピードや範囲を超えてしまい、余った皮膚が重力に負けて下垂します。

これが「脂肪吸引によるたるみ」の正体です。したがって脂肪をどれだけ取るかだけでなく、皮膚がどれだけ縮めるかを予測することが極めて重要です。

拘縮(こうしゅく)作用と引き締め効果

脂肪吸引後の組織は治癒する過程で「拘縮(こうしゅく)」という反応を起こします。これは、傷ついた組織が修復される際にコラーゲン線維が増生し、組織同士が硬く結びつきながら縮まる現象です。

この拘縮が適切に働けば、皮膚は以前よりもタイトに引き締まり、リフトアップ効果をもたらします。

手術後数週間から数ヶ月にかけて皮膚が硬くなるのはこのためで、この期間に皮膚が正しい位置で固定されることで、たるみのないシャープなフェイスラインが完成します。

つまり、脂肪吸引は単に「減らす」だけでなく、この拘縮を利用して「引き締める」施術という側面も持っています。

ただし、この拘縮の力も万能ではありません。皮膚自体の弾力が著しく低下している場合や、皮膚の余りがあまりに大きい場合は、拘縮による引き締め効果だけではカバーしきれないことがあります。

取り残しと取りすぎのリスク管理

たるみを恐れて脂肪を取り残せば変化が乏しくなり、逆に取りすぎれば皮膚が余ってたるむというジレンマが存在します。

理想的な仕上がりは、この二つのリスクのちょうど中間に位置します。医師は触診や超音波検査などを通じて、除去可能な脂肪の厚みと、術後の皮膚の戻り具合をシミュレーションします。

特に注意が必要なのは、皮膚が薄い人や、すでに皮膚の伸びが見られる人です。こうしたケースでは、あえて脂肪をわずかに残すことで皮膚の張りを維持したり、他の引き締め治療を併用したりする判断が必要になります。

「根こそぎ脂肪を取る」ことが必ずしも正解ではなく、個々の皮膚条件に合わせた「適量」を見極めることが、たるみを防ぐ最大の防御策となります。

脂肪減少量と皮膚反応の相関関係

脂肪の除去量皮膚の収縮力が高い場合皮膚の収縮力が低い場合
少量を除去自然な変化で引き締まる。たるみのリスクは極めて低い変化は少ないが、たるみの悪化もほとんど見られない
適量を除去高いリフトアップ効果と小顔効果が得られる。理想的な結果わずかに皮膚が緩む可能性があるが、許容範囲内に収まることが多い
大量に除去強い引き締め効果が出るが、皮膚質によっては不自然な凹凸のリスク皮膚が収縮しきれず、顕著なたるみやシワが発生するリスクが高い

適応を見極める「皮膚の余り」のセルフチェック

自分自身が脂肪吸引に向いているのか、それともたるみリスクが高いタイプなのかを知るには、現在の皮膚の状態を客観的に観察することが大切です。単に脂肪が多いからといって吸引が適しているとは限りません。

皮膚の弾力性や厚み、すでにあるシワの状態を確認することで、術後のリスクをある程度予測できます。

ここでは、専門的な器具を使わずに自宅で確認できるポイントについて解説します。

ピンチテストによる皮膚弾力の確認

指で頬や顎下の脂肪をつまむ「ピンチテスト」は、脂肪の量と皮膚の弾力を測る簡易的な方法です。

まず、気になる部分の脂肪を親指と人差し指でしっかりつまみます。このとき、つまめる厚みが1cm以上あれば、吸引できる皮下脂肪が存在する可能性があります。

しかし、重要なのはここからです。つまんだ指をパッと離したとき、皮膚が瞬時に元の形状に戻るかを確認します。

ゴムのようにすぐに戻れば弾力性は十分ですが、戻りが遅かったり、つまんだ跡がしばらく残ったりする場合は、皮膚の弾力が低下しているサインです。

このような状態で脂肪を抜くと皮膚が縮みきらずにたるむ可能性が高いため、慎重な判断が必要です。

既存のたるみとシワの深さの評価

鏡を見て、すでにほうれい線やマリオネットラインが深く刻まれている場合、それは皮膚がすでに重力に負けている証拠です。

脂肪の重みが原因で下がっている場合は脂肪を除去することで改善することもありますが、皮膚自体が伸びて余っていることが原因である場合は注意が必要です。

特に手で頬を引き上げてみて、シワが消えるかどうかを試してみてください。引き上げると同時に耳の前に余分な皮膚がたまるようであれば、「皮膚の余り」が主原因である可能性が高いと言えます。

この場合、脂肪吸引単独で行うと中身が減った分だけ余計に皮膚が余り、シワが深くなるリスクがあります。脂肪吸引はあくまで脂肪を減らすものであり、伸びた皮膚を切り取る手術ではないことを理解する必要があります。

骨格と皮膚の密着度の確認

皮膚と骨格の密着度も重要な要素です。若い頃から顔の皮膚をつまんで大きく伸びる人や、皮膚が非常に柔らかい人は、皮下組織と筋膜の結合が緩い傾向にあります。

このような「柔らかい皮膚」の持ち主は脂肪吸引後に皮膚が骨格にピタリと張り付かず、重力に従って下に移動(スライド)してしまうことがあります。

逆に、皮膚が硬く、つまもうとしてもあまり伸びない人は結合組織がしっかりしているため、脂肪吸引後の引き締め効果が出やすい傾向にあります。

ご自身の皮膚が「よく伸びる柔らかいタイプ」か「硬くて伸びにくいタイプ」かを知ることは、適応を見極める上で大きなヒントになります。

皮膚の状態別リスク判定表

チェック項目たるみリスク:低(適応あり)たるみリスク:高(要注意)
皮膚の弾力(戻り)つまんで離すと瞬時に戻る。パンとした張りがある戻りが遅く、つまんだ跡が残る。全体的に柔らかすぎる
既存のシワ無表情では目立たず、笑った時だけ出る程度無表情でもほうれい線やマリオネットラインがくっきりある
皮膚の厚み適度な厚みがあり、指でつまむと硬さを感じる非常に薄く、紙のようにペラペラしている

年齢と肌質が及ぼす術後経過への影響

加齢に伴う肌質の変化は、脂肪吸引の結果を大きく左右します。同じ量の脂肪を吸引しても、20代と40代以降では仕上がりが異なることが多いのは、皮膚の生理的な機能が変化しているためです。

コラーゲンやエラスチンの量、代謝速度の違いが術後の皮膚の戻り具合(収縮)に直結します。ここでは、年齢とともに変化する肌質のリスク要因について深掘りします。

コラーゲン・エラスチンの減少と収縮力

皮膚の真皮層にあるコラーゲンは強度を保ち、エラスチンは弾力を生み出します。これらは網目状の構造を作り、皮膚を内側から支えています。

脂肪吸引後に皮膚がきれいに縮むのは、この弾性線維が機能しているからです。しかし、これらの線維は20代後半をピークに減少の一途をたどります。

40代、50代になると、この網目構造が弱くなり、一度伸びた皮膚が元に戻る力が弱まります。この状態で脂肪という「詰め物」を抜くと、皮膚は縮むことなく垂れ下がってしまいます。

年齢を重ねている場合は、単に脂肪を取るだけでなく、いかにしてコラーゲンの生成を促し、収縮力を補うかを考える必要があります。

代謝機能とダウンタイムの関係

年齢とともに基礎代謝や細胞の再生能力も低下します。これは術後の回復スピード、いわゆるダウンタイムに影響します。

若い人は組織の修復が早いため、むくみや内出血が引くのも早く、皮膚の拘縮(引き締まり)もスムーズに進行します。

一方、年齢が高い場合は組織の修復に時間がかかり、むくみが長引く傾向があります。むくみが長く続くと、その重みで皮膚が下に引っ張られ続け、結果としてたるみにつながることもあります。

代謝機能の差を考慮し、年齢に応じた術後のケアや、回復を早めるための補助的な治療を組み合わせる視点を持つことが大切です。

光老化と皮膚の菲薄化

長年の紫外線ダメージによる「光老化」も無視できません。紫外線は真皮層の弾性線維を破壊し、皮膚を薄く(菲薄化)させます。薄くなった皮膚は弾力を失い、たるみやすくなります。

特に日光を浴びやすい頬骨周辺などの皮膚が薄くなっている場合は注意が必要です。

日頃から紫外線対策をしてこなかった場合や、屋外での活動が多かった人は、実年齢以上に皮膚の老化が進んでいる可能性があります。

脂肪吸引を受ける前には皮膚の厚みや質感を医師に見てもらい、光老化の影響がどの程度あるかを評価してもらうことを強く推奨します。

肌質によるリスクを高める要因リスト

  • 加齢による真皮層のコラーゲン・エラスチン密度の低下
  • 長期間の紫外線曝露による光老化(皮膚の菲薄化)
  • 喫煙習慣による血流低下と皮膚再生能力の減退
  • 過去の大幅な体重変動(ヨーヨーダイエット)による皮膚の伸び
  • 乾燥肌や栄養不足による肌のバリア機能・弾力の低下

部位によるたるみリスクの違いと対策

顔の脂肪吸引と一口に言っても、部位によって皮膚の厚さや下の構造、重力の影響の受けやすさは異なります。

ある場所では劇的な小顔効果が得られても、別の場所ではげっそりと老け込んで見えるリスクがあります。解剖学的な特徴を理解し、部位ごとに適切なアプローチを選択することが成功の鍵です。

ここでは、主要な吸引部位ごとのリスクと対策を詳述します。

顎下(二重あご)の特性とリスク

顎の下は比較的脂肪吸引の好適応となりやすい部位です。このエリアの皮膚は厚みがあり、筋肉(広頚筋)もしっかりしていることが多いため、脂肪を除去した後もきれいに引き締まる傾向があります。

特に横顔のラインをシャープにする効果が高く、多くの人が満足度を感じやすい場所です。

ただし、極端に皮膚が余っている場合や、「七面鳥の首」のように皮膚が垂れ下がっている場合は、脂肪を取ることで余計に皮が目立つことがあります。

また、喉仏に近い部分を取りすぎると、「癒着により表面が凸凹したり、筋張って見えたりするリスクもあります。顎下は積極的な吸引が可能ですが、首との「界線は慎重にデザインする必要があります。

頬(ジョールファット・メーラーファット)の繊細さ

頬の脂肪は顔の若々しさを保つためのボリュームとしての役割も担っています。

特に頬骨の高い位置にある「メーラーファット」を取りすぎると、顔が平面的になり、元気がなく老けた印象を与えがちです。また、ここを減らすことで支えを失った皮膚が下に落ち、ほうれい線が深くなることもあります。

口角の横にある「ジョールファット」は、マリオネットラインの原因となるため除去が推奨されることが多いですが、ここも取りすぎには注意が必要です。

取りすぎると皮膚が余って口元のシワが悪化したり、えくぼのような不自然な凹みが生じたりします。頬エリアは「取る」ことよりも「残す」バランス感覚が高度に求められる部位です。

フェイスラインの境界線と癒着

フェイスライン(下顎縁)の脂肪吸引は、輪郭をくっきりさせるために効果的です。

しかし、この部分は骨が近く、皮膚が薄い傾向にあります。無理に吸引を行うと、皮膚が骨や筋肉に不均一に癒着し、表面が波打つような凸凹が生じるリスクがあります。

また、耳の下から顎にかけてのラインは、神経が走行している危険なエリアでもあります。

たるみを防ぐためには単に脂肪を吸うだけでなく、皮膚が正しい位置で癒着するように、術後の圧迫固定を徹底することが特に重要になる部位です。

美しいフェイスラインを作るには浅い層の脂肪を均一に、かつ慎重に処理する技術が必要です。

部位別リスクと適応の目安

部位期待できる効果たるみ・失敗リスク
顎下(二重あご)横顔の改善、首との境界の明瞭化。最も効果が出やすい。皮膚の余りが強い場合は「ちりめんじわ」や皮の垂れが目立つ可能性。
ジョールファットマリオネットラインの予防、ブルドッグ顔の解消。取りすぎると口横に凹みができたり、皮膚が余ってシワが悪化したりする。
メーラーファット笑った時の頬の盛り上がり解消、ほうれい線の軽減。最もリスクが高い。取りすぎると頬がこけ、老けて見える。将来的な垂れの原因にも。

脂肪層へのアプローチと技術的な工夫

脂肪吸引は、ただ管(カニューレ)を入れて脂肪を吸い出すだけの作業ではありません。皮膚の浅い層にある脂肪を取るのか、深い層を取るのかによって、術後の皮膚の仕上がりは全く異なります。

医師の技術や採用する手法が、たるみを防ぐためにどのように作用するのかを理解しておきましょう。

ここでは、深さによるアプローチの違いと、皮膚を引き締めるための技術的な工夫について解説します。

浅層脂肪と深層脂肪の違い

顔の皮下脂肪は、大きく分けて皮膚に近い「浅層」と、筋膜に近い「深層」に存在します。

たるみを防ぎながらボリュームを減らすためには、主に「深層」の脂肪をターゲットにするのが基本です。深層脂肪を除去しても、表面の皮膚への影響は比較的少なく、自然なボリュームダウンが可能です。

一方、「浅層」の脂肪は皮膚の質感や滑らかさに直結しています。ここを不用意に吸引しすぎると皮膚と筋膜が直接癒着してしまい、表面が凸凹になったり、色素沈着を起こしたりするリスクが跳ね上がります。

しかし、皮膚の引き締め効果(タイトニング)を狙うために、熟練した医師があえて浅層にごく微細な刺激を与える手法をとることもあります。この層の操作は非常に繊細で、高度な技術が必要です。

クリスクロス法による均一な吸引

脂肪を均一に取り除き、取り残しや取りムラを防ぐために用いられるのが「クリスクロス法」などの技術です。これは、一方向からだけでなく、複数の方向からカニューレを交差(クロス)させて吸引を行う方法です。

多方向からアプローチすることで蜂の巣状に脂肪を取り除くことができ、空洞になった組織がつぶれる際にきれいに平らになりやすくなります。

一方向からの吸引では溝のような跡が残りやすいですが、網目状にトンネルを作ることで、術後の皮膚が均一に収縮し、なめらかな仕上がりを実現します。これはたるみや凹凸を防ぐための基本的な、かつ重要なテクニックです。

ベイザーやアキュスカルプなどの機器特性

近年では脂肪を吸うだけでなく、熱エネルギーを与えて皮膚を引き締める機能を備えた機器も登場しています。

例えば、超音波を用いるベイザーリポは、脂肪を溶かすと同時に熱によって皮膚の収縮を促します。また、レーザーを使用するアキュスカルプなども、タイトニング効果を期待して使用されます。

これらの機器は通常の吸引(シリンジ法やボディジェットなど)に比べて、たるみリスクを軽減する助けになります。

特に皮膚のたるみが心配な場合は単なる吸引ではなく、こうした引き締め作用のあるエネルギーデバイスを併用する手法を選択肢に入れることが有効です。

ただし、どの機器を使っても、最終的な仕上がりは操作する医師の技術力に依存することを忘れてはいけません。

たるみ回避のための技術的アプローチ要点

技術・アプローチ目的と効果注意点
深層脂肪へのアプローチボリュームを確実に減らしつつ、表面の凹凸リスクを最小限にする。変化を出しつつ神経損傷を避ける深い解剖学的知識が必要。
浅層へのアプローチ(リサーフェシング)皮膚直下の刺激による強力な引き締め効果(タイトニング)を狙う。技術が未熟だと凸凹や色素沈着、皮膚壊死の原因になる諸刃の剣。
多方向からの吸引(クリスクロス)取りムラを防ぎ、術後の皮膚を平滑に仕上げる。複数の切開口が必要になる場合がある(傷跡の管理が必要)。

術後の圧迫固定とダウンタイムの過ごし方

手術が終わればすべて完了、ではありません。実は脂肪吸引後の仕上がりの良し悪しは、術後のケアが大きなウェイトを占めます。

特に「圧迫固定」は、剥離した皮膚を正しい位置で再接着させ、たるみを防ぐために極めて重要な工程です。

ここでは、なぜ圧迫が必要なのか、そしてダウンタイム中に避けるべき行動について解説します。

フェイスバンドの役割と重要性

脂肪吸引直後、皮膚の下は脂肪がなくなり空洞になっています。この空洞を放置すると重力で皮膚が下がった状態で固まったり、空洞に血液やリンパ液(浸出液)が溜まって「拘縮」がうまく起こらなかったりします。

フェイスバンドは、外側から物理的に圧力をかけることで皮膚を筋肉や筋膜にぴったりと押し付け、癒着を助ける役割を果たします。

適切な圧迫を行うことで、むくみを最小限に抑え、皮膚が伸びるのを防ぎます。まるで接着剤が乾くまで物を固定しておくのと同様に、組織が修復される初期段階でしっかりと固定することが将来的なたるみ回避につながります。

医師の指示に従い、指定された期間(通常は数日から数週間)は真面目に装着することが強く求められます。

むくみ(浮腫)の管理と皮膚への負担

術後に発生するむくみは単なる水分の貯留ですが、これが長引くと皮膚に悪影響を与えます。

パンパンに腫れた状態が続くと皮膚が内側から引き伸ばされ続け、弾性線維に負担がかかります。むくみが引いた後に、伸びきったゴムのように皮膚がたるんでしまうリスクがあるのです。

したがって、むくみを早く引かせる努力も大切です。塩分を控えた食事、頭を高くして寝る工夫、医師の許可が出た後からのマッサージやインディバ(高周波温熱治療)などが有効です。

むくみを早期に解消することは皮膚への物理的なストレスを減らし、タイトな仕上がりを守ることと同義です。

マッサージの開始時期と方法

術後の組織が硬くなる「拘縮」の時期に入ると、皮膚が突っ張ったり凸凹したりするように感じます。この時期に適切なマッサージを行うことで硬くなった組織をほぐし、皮膚のなじみを良くすることができます。

しかし、開始時期を誤ると逆効果になります。手術直後の不安定な時期に強いマッサージをすると、癒着しようとしている組織を剥がしてしまったり、内出血を悪化させたりします。

通常は術後1ヶ月程度経過してから開始することが多いですが、必ず医師の確認をとってから行います。

リンパの流れに沿って優しく行うマッサージは最終的な皮膚の質感を整え、不自然なたるみやひきつれを防ぐ助けとなります。

術後ケアの重要ポイントリスト

  • フェイスバンドは指示通りに装着し、皮膚の「再接着」を物理的にサポートする
  • 就寝時は枕を高くし、顔への血流鬱滞を防いでむくみを軽減させる
  • 塩分の多い食事やアルコールはむくみを悪化させ、皮膚を引き伸ばす原因になるため控える
  • 術後1ヶ月以降の拘縮期には硬さをほぐすマッサージを取り入れ、滑らかな仕上がりを目指す
  • 処方された薬(抗炎症剤など)を正しく服用し、過度な炎症による組織ダメージを防ぐ

脂肪吸引単独が難しい場合の複合治療

「皮膚の余り」が多いタイプや弾力が低下しているタイプの場合、脂肪吸引単独ではたるみのリスクを完全に回避できないことがあります。

そのような場合、脂肪を減らす治療と皮膚を引き上げる治療を同時に、あるいは段階的に行うことが推奨されます。複数のアプローチを組み合わせることで欠点を補い合い、より高い完成度を目指すことができます。

ここでは、代表的な併用療法について解説します。

糸リフト(スレッドリフト)との併用

最もポピュラーな組み合わせが、脂肪吸引と糸リフトの同時施術です。脂肪吸引で中身を減らして空洞を作ると同時に、トゲのついた医療用の糸を皮下に挿入し、物理的に皮膚を引き上げます。

この方法の最大の利点は、脂肪がなくなって皮膚が移動しやすい状態の時に糸の力で皮膚を理想的な位置に固定できることです。

糸の刺激によってコラーゲン生成も促されるため、皮膚の引き締め効果も高まります。たるみリスクが高い人にとっては、脂肪吸引のデメリット(皮膚の余り)を直接的にカバーする強力な選択肢となります。

HIFU(ハイフ)や高周波によるタイトニング

手術(切開や糸の挿入)に抵抗がある場合、HIFU(高密度焦点式超音波)やRF(高周波)などの照射系治療を併用する案があります。これらは熱エネルギーを筋膜や真皮層に与え、タンパク変性を起こして組織を縮める治療です。

脂肪吸引の手術中に皮膚の裏側から照射する場合もあれば、術後のメンテナンスとして皮膚の上から照射する場合もあります。

物理的に引き上げる力は糸リフトに劣りますが、皮膚自体の密度を高め、タイトニング効果を得るには有効です。特に術後の定期的なメンテナンスとして取り入れることで、長期的なたるみ予防に役立ちます。

皮膚切除(フェイスリフト)の検討

大幅な体重減少後の方や高齢で皮膚の余りが著しい方の場合、どんなに脂肪を減らして糸で吊り上げても、余剰皮膚を処理しきれないことがあります。

このようなケースでは、余った皮膚そのものを切り取って縫い縮める「フェイスリフト」や「ミニリフト」が必要になることがあります。

耳の周りなどを切開するため傷跡は残りますが、たるみの原因である「余った皮」を物理的に除去できるため、効果は最も確実です。

脂肪吸引で皮下脂肪を適度に減らしつつ、フェイスリフトで皮膚をタイトにする組み合わせは、重度のたるみを解消する根本的な解決策と言えます。

併用治療の効果と適応表

併用治療特徴・メリット適している人
糸リフト物理的に引き上げ、癒着を正しい位置で固定する。コラーゲン増生も期待でき。中程度のたるみリスクがある人。即効性を求める人。
HIFU / RF照射熱エネルギーで皮膚を引き締める。ダウンタイムがほぼない。軽度のたるみ予防をしたい人。術後の維持・メンテナンスを重視する人。
皮膚切除余分な皮膚を切り取るため、最も確実な変化が出る。皮膚の余りが著しい人。60代以上や大幅な減量後の人。

よくある質問

脂肪吸引後にたるみが出た場合、自然に治りますか?

術後数ヶ月間は「拘縮」やむくみの影響で一時的にたるんで見えることがありますが、これは回復過程の一部であり、半年ほどかけて徐々に引き締まることが多いです。

しかし、半年以上経過しても明らかな皮膚のたるみが残っている場合、それが自然に治ることは期待できません。その場合は、糸リフトやHIFU、あるいは皮膚切除などの追加治療が必要になる可能性があります。

まずは完成形とされる半年(6ヶ月)までは経過を見守ることが大切です。

将来的に加齢で顔がたるみやすくなりますか?

適切に脂肪を除去した場合、重りとなる脂肪が減るため、長期的にはむしろ加齢によるたるみを遅らせる効果が期待できます。脂肪の重みは皮膚を引き下げる大きな要因の一つだからです。

ただし、過剰に脂肪を取りすぎて皮膚がペラペラになっていたり、癒着が不均一だったりすると、加齢による皮膚の菲薄化と相まって、シワっぽく老けた印象になりやすいリスクはあります。

適量を守ることが将来のためにも重要です。

一度吸引した箇所に再び脂肪がつくとたるみますか?

脂肪吸引は脂肪細胞の数自体を減らすため、リバウンドしにくい施術です。しかし、暴飲暴食などで体重が大幅に増加すれば、残っている脂肪細胞が肥大化し、ふっくらすることはあります。

その際、一度剥離して癒着した組織が再び引き伸ばされることになるため、体重の増減を繰り返すと皮膚の弾力が失われ、たるみやすくなる原因になります。

術後は体重をキープすることが、美しい仕上がりを維持する秘訣です。

バッカルファット除去と脂肪吸引の違いは何ですか?

皮下脂肪(顔の表面に近い脂肪)を吸い出す脂肪吸引に対し、バッカルファットは頬の深い層にある脂肪の塊を口の中から取り出す手術です。

バッカルファットは年齢とともに下がり、ブルドッグ顔の原因になりますが、取りすぎると頬がこけてやつれて見えやすく、かえってたるみが目立つこともあります。

皮下脂肪とバッカルファットのどちらがたるみの主原因か、あるいは両方かを見極める診断力が重要です。

参考文献

YANG, Zhibin, et al. Fat grafting for facial rejuvenation in Asians. Clinics in Plastic Surgery, 2020, 47.1: 43-51.

KENNY, Elizabeth M., et al. Fat grafting in radiation-induced soft-tissue injury: a narrative review of the clinical evidence and implications for future studies. Plastic and Reconstructive Surgery, 2021, 147.4: 819-838.

OBAGI, Suzan; ST. SURIN-LORD, Sharleen. Literature Reviews. The American Journal of Cosmetic Surgery, 2009, 26.2: 108-128.

RESCUE, Lower Lid Retraction; CREASE, Upper Eyelid; HARTSTEIN, Morris E. ADVANCES IN COSMETIC SURGERY. Advances in Cosmetic Surgery, 2024: Advances in Cosmetic Surgery, 2024, E-Book, 2024, 7.1: 99.

ILLOUZ, Yves Gérard. Complications of liposuction. Clinics in plastic surgery, 2006, 33.1: 129-163.

HARTMANN, Daniela; RUZICKA, Thomas; GAUGLITZ, Gerd G. Complications associated with cutaneous aesthetic procedures. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft, 2015, 13.8: 778-786.

LACK, Edward B.; HUGHES, Susan; NIAMTU III, Joseph. WAL A N D R EJ UVENATI O. 2007.

MARIWALLA, Kavita, et al. Assessing the Submental and Neck Region. Dermatologic Surgery, 2025, 51.12S: S31-S37.

HADDAD, Alessandra, et al. acid for facial rejuvenation: literature review and practical aspects. Sumário/Table of contents, 2017, 60.

ALEXANDER, Robert W. Liposculpture in the superficial plane: closed syringe system for improvements in fat removal and free fat transfer. The American Journal of Cosmetic Surgery, 1994, 11.2: 127-134.

脂肪の下垂と移動に戻る

老化メカニズムと顔のたるみ・シワTOP

この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

目次