更年期と顔の骨萎縮|エストロゲン減少が加速させる「顔の骨痩せ」リスク

更年期と顔の骨萎縮|エストロゲン減少が加速させる「顔の骨痩せ」リスク

鏡を見るたびに感じる肌のたるみやシワの変化に対し、多くの女性がスキンケアの見直しを考えます。しかし、肌の表面的なケアだけでは解決しない深い悩みには、土台となる「骨」の変化が大きく関係しています。

特に更年期を迎えると、女性ホルモンの減少が全身の骨密度だけでなく、顔の骨格そのものを縮小させる要因となります。顔の骨が痩せることで皮膚が余り、結果として大きなたるみや深いシワを引き起こします。

本記事では、骨と美容の密接な関係を紐解き、今すぐ始めるべき対策について詳しく解説します。

目次

エストロゲンの減少が骨密度に与える影響と顔貌変化の仕組み

女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少は骨を壊す細胞の働きを活発化させ、骨を作る細胞の働きを上回ることで骨密度を低下させ、顔の土台を崩す主要な原因となります。

更年期を迎えた女性の体内で起こる最も大きな変化の一つは、卵巣機能の低下に伴うエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量減少です。

エストロゲンは単に生殖機能を司るだけでなく、骨の代謝バランスを保つ司令塔のような役割を果たしています。

通常、私たちの骨は「破骨細胞」が古い骨を壊し、「骨芽細胞」が新しい骨を作るというサイクルを繰り返して強度を保っています。

エストロゲンはこの破骨細胞の暴走を抑えるブレーキ役を担っていますが、分泌が減るとブレーキが効かなくなり、骨の破壊が進んでしまいます。

骨代謝のバランスが崩れる原因

骨はコンクリートの建物のように一度作られたらそのまま存在するものではありません。毎日少しずつ作り替えられる動的な組織です。

更年期に入ると、この作り替えのサイクルにおいて「壊すスピード」が「作るスピード」を追い越してしまいます。特に閉経後の最初の数年間は、骨量が急激に減少することが知られています。

顔の骨も例外ではなく、腰や大腿骨と同様に、あるいはそれ以上に繊細なバランスの上で成り立っており、ホルモンバランスの影響をダイレクトに受けます。

顔の骨が痩せることによる皮膚への影響

顔の骨が小さくなると、その上を覆っている筋肉や脂肪、そして皮膚の行き場がなくなります。これをイメージしやすい例えで言うと、テントの支柱(ポール)が短くなったり細くなったりした状態です。

支柱が小さくなれば、ピンと張っていたテントの布(皮膚)は必然的に余り、重力に従って垂れ下がります。これが「たるみ」の正体です。

多くの人が皮膚のハリ不足を疑いますが、実は皮膚を支える土台のボリュームダウンこそが、大きな変化の引き金となっています。

骨粗鬆症と顔の老化の相関関係

全身の骨密度が低下している人は、顔のシワやたるみが目立ちやすいという研究データも存在します。

腰椎や大腿骨の骨密度が低い女性ほど、顔の老化サインが顕著に現れる傾向があります。つまり、顔の老け見えは単なる美容の問題にとどまらず、全身の骨の健康状態を映し出す鏡とも言えます。

顔の骨萎縮を食い止める努力をすることは、結果として将来の寝たきりリスクや骨折リスクを減らす健康維持活動にもつながります。

ホルモンバランスと骨への影響

ホルモンの状態骨代謝への作用顔への具体的な影響
エストロゲン充実期
(20代~30代)
破骨細胞の働きを抑制し、骨形成を促進する。骨密度が高く維持される。頬骨や顎の骨がしっかりしており、皮膚を高い位置で支えるため、ハリがある。
更年期前期
(40代後半)
エストロゲンがゆらぎながら減少を開始。骨吸収(破壊)が少しずつ優位になる。目元のくぼみが気になり始めたり、フェイスラインが少しぼやけ始める。
閉経後
(50代以降)
ブレーキ役の不在により骨吸収が加速。骨量が年間数パーセント単位で減少する。眼窩が広がり目が垂れる、顎が小さくなり二重顎やマリオネットラインが定着する。

顔面骨格の部位別萎縮とエイジングサインの現れ方

顔の骨は均一に縮むのではなく、目元、鼻の横、顎周りなど特定の部位が集中的に萎縮することで、老け顔特有の凹凸や影を作り出します。顔の骨格は一つの塊ではなく、複数の骨が組み合わさって構成されています。

加齢による骨吸収(骨が溶ける現象)は、すべての場所で同じように起こるわけではありません。特に影響を受けやすい「骨吸収の好発部位」が存在し、その部分が凹むことで、独特の老け顔が形成されます。

鏡を見た時に「昔と顔立ちが変わった」と感じるのは、皮膚の垂れ下がりだけでなく、骨格の形状変化が影を落としているからです。

眼窩(がんか)の拡大と目元の変化

眼球が収まっている頭蓋骨の穴を「眼窩(がんか)」と呼びます。加齢とともに、この眼窩の縁、特に外側と下側の骨が吸収されて穴が広がっていきます。

土台となる骨が後退することで目元の皮膚や脂肪を支えきれなくなり、目の下がたるんだり、クマができやすくなったりします。

また、まぶたが被さりやすくなり、目が小さくなったように感じるのも、この眼窩の拡大が関係しています。

アイクリームを塗っても改善しない目元の悩みは、骨格の後退が主因である場合が少なくありません。

梨状口(りじょうこう)の拡大とほうれい線

鼻の穴の部分にある骨の開口部を「梨状口(りじょうこう)」と言います。この部分の骨も加齢とともに縁が削げるように後退し、穴が大きくなります。

鼻の横の土台が低くなることで小鼻の横から唇にかけての皮膚が支えを失い、深く折れ曲がるようになります。これがほうれい線の深刻化を招きます。

ヒアルロン酸注入などでこの部分のボリュームを補う治療が行われるのは、失われた骨の高さを擬似的に復元するためです。

下顎骨(かがくこつ)の縮小とフェイスラインの崩れ

下顎の骨(下顎骨)は、顔の骨の中でも特に骨密度の低下や体積の減少が顕著に現れやすい部位です。

顎の骨が小さくなると顎先が後退したり、エラの部分の角度が変わったりします。これにより、首と顔の境目が曖昧になり、余った皮膚が顎下に溜まって二重顎になります。

また、口角から下に伸びるマリオネットラインも、下顎の骨が痩せて口周りの肉を支えきれなくなることで発生します。

部位ごとの骨萎縮による見た目の変化

骨の部位骨の変化の特徴発生するエイジングサイン
眼窩(目の周りの骨)穴が外側・下側へ広がる目尻のシワ、目の下のクマ・たるみ、目が窪む、眉毛の位置が下がる
上顎骨(鼻の横・頬)全体的に後退し、平坦になる深いほうれい線、ゴルゴライン、頬の頂点が下がり顔全体が平面的になる
下顎骨(あごの骨)高さと厚みが減少し、小さくなるマリオネットライン、フェイスラインの乱れ、梅干しジワ、二重顎

日常生活に潜む「骨痩せ」を加速させる危険因子

紫外線対策不足や過度なダイエット、喫煙習慣といった日常の行動が、ホルモン減少による骨へのダメージをさらに増幅させ、顔の老化スピードを早めます。

更年期によるホルモンバランスの変化は避けられない自然現象ですが、その影響を最小限に留めるか、あるいは加速させてしまうかは、日々の生活習慣に大きく左右されます。

骨は「カルシウムの貯蔵庫」であり、生命維持に必要なカルシウムが血液中で不足すると、体は骨を溶かして補おうとします。

この反応を過剰に引き起こすような生活を送っていると、顔の骨はどんどん痩せていきます。

過度な紫外線対策とビタミンD不足

美容意識の高い人ほど陥りやすいのが、徹底的な紫外線カットによるビタミンD不足です。ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を助ける重要な栄養素ですが、その多くは紫外線を浴びることで皮膚上で合成されます。

日焼け止めを塗り、日傘をさし、常に日光を遮断している生活は肌のシミを防ぐ一方で、骨の材料不足を招いている可能性があります。

骨の健康維持には、手のひら日光浴など、顔以外の部分で適度な日光を浴びる工夫が必要です。

極端なダイエットと栄養失調

中年期以降の体型維持において、食事量を極端に減らすダイエットは非常に危険です。エネルギー不足はもちろんのこと、タンパク質やミネラルが不足すると、骨の質が悪化します。

また、急激に体重を落とすと、脂肪細胞から分泌されるわずかなエストロゲンの恩恵も受けられなくなり、骨密度低下に拍車をかけます。

「痩せていること」が必ずしも美しさにつながらないのがこの年代です。適度な体重と栄養状態を保つことが、ふっくらとした若々しい顔立ちを維持する鍵となります。

喫煙と過度なアルコール摂取

喫煙は血管を収縮させ、骨に栄養や酸素が行き渡るのを阻害します。さらに、エストロゲンの分解を早める作用もあり、更年期の骨量減少を著しく加速させます。

スモーカーズフェイスと呼ばれる独特のシワの多い顔つきは、肌のダメージだけでなく骨の萎縮も関係しています。

また、過度なアルコール摂取もカルシウムの尿中排出を増やし、腸管からの吸収を妨げるため、骨にとってはマイナスの要因となります。

生活習慣と骨へのリスク比較

生活習慣骨への悪影響改善のポイント
完全遮光の徹底ビタミンD合成が阻害され、カルシウム吸収率が低下するサプリメントで補うか、夏なら木陰で数分、冬なら数十分の手のひら日光浴を行う
糖質制限・少食骨の基質となるタンパク質(コラーゲン)不足や低体重による骨負荷減少肉・魚・大豆製品を毎食摂取し、BMIが低くなりすぎないよう管理する
運動不足骨への物理的な刺激がなくなり、骨を作る指令が出にくくなるウォーキングや踵落とし運動など、骨に縦方向の重力がかかる運動を取り入れる

骨密度を維持するための栄養戦略と食事のポイント

カルシウム単体ではなく、吸収を助けるビタミンDや骨への定着を促すビタミンKなどをチームとして摂取することが、顔の骨を守るための食事の基本です。

「骨のために牛乳を飲む」というのは間違いではありませんが、それだけでは十分な対策とは言えません。摂取したカルシウムが効率よく吸収され、最終的に骨として定着するためには、複数の栄養素が連携して働く必要があります。

毎日の食事構成を少し見直すだけで、骨の老化スピードを緩やかにすることは十分に可能です。サプリメントに頼る前に、まずは食卓の彩りを意識し、骨が喜ぶ栄養素を積極的に取り入れましょう。

カルシウムの吸収率を意識する

日本人は慢性的にカルシウムが不足しがちと言われています。その理由の一つは、食品によって吸収率が大きく異なる点にあります。

乳製品のカルシウム吸収率は約50%と高いですが、小魚は約30%、野菜類は約19%程度にとどまります。

野菜からカルシウムを摂る場合は量を多く食べるか、吸収を阻害するシュウ酸の少ない野菜を選ぶなどの工夫が必要です。また、酢やレモンなどのクエン酸と一緒に摂ることで、吸収率を高めることができます。

骨の質を高めるタンパク質(コラーゲン)

骨の体積の半分はカルシウムなどのミネラルですが、残りの半分はコラーゲンなどのタンパク質でできています。

鉄筋コンクリートに例えると、カルシウムがコンクリートで、コラーゲンは鉄筋の役割を果たします。鉄筋が脆ければ、いくらコンクリートを固めても建物は崩れやすくなります。

骨にしなやかさと強度を持たせるためには、肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質を毎食片手一杯分程度摂取することが大切です。

腸内環境と栄養吸収の関係

どれほど優れた栄養素を摂取しても、それを取り込む腸の状態が悪ければ効果は半減します。加齢とともに腸の働きも衰えるため、発酵食品や食物繊維を意識して摂り、腸内環境を整えることも骨ケアの一環です。

便秘がちな人は栄養吸収が悪くなっている可能性があるため、根本的な食生活の改善が必要です。

積極的に摂りたい栄養素リスト

  • カルシウム:骨の主要成分。乳製品、小魚、大豆製品、小松菜など。
  • ビタミンD:腸管でのカルシウム吸収を促進。鮭、サンマ、干し椎茸、きくらげなど。
  • ビタミンK:カルシウムの骨への沈着を助け、流出を防ぐ。納豆、ブロッコリー、ほうれん草などの緑黄色野菜。
  • マグネシウム:骨の形成を助け、柔軟性を保つ。海藻類、アーモンド、玄米など。
  • イソフラボン:エストロゲンに似た働きをし、骨吸収を抑制する助けとなる。納豆、豆腐、豆乳など。

「噛む力」が顔の骨格を守る物理的刺激の重要性

しっかりと噛んで食べる行為そのものが顎の骨に直接的な刺激を与え、骨代謝を活性化させるため、咀嚼機能の維持は顔の造形を保つ上で重要な役割を果たします。

骨には「負荷がかかると強くなり、使われないと弱くなる」という性質があります。これをウォルフの法則と呼びます。宇宙飛行士が短期間で骨密度を失うのは重力がかからないためです。

顔の骨、特に上顎や下顎においては、「噛む」という行為が最大の物理的刺激となります。

現代の柔らかい食事中心の生活や、歯のトラブルによる「噛めない状態」は、顎の骨への刺激を激減させ、骨萎縮を早める大きな要因となります。

歯の喪失と骨吸収の連鎖

歯を失ったまま放置すると、その部分の骨(歯槽骨)は役割を終えたと判断され、急速に吸収されて痩せていきます。歯槽骨が痩せると、その上の歯茎も下がり、口周りの皮膚が余ってシワが深くなります。

入れ歯やインプラントなどで噛み合わせを回復させることは、単に食べる機能を戻すだけでなく、噛む刺激を骨に伝え続け、骨の形を維持するために非常に重要です。

定期的な歯科検診は、美容面でも大きな意義を持っています。

よく噛むことの美容効果

一口30回噛むことを目標にすると咀嚼筋(咬筋など)が適度に使われ、その刺激が骨に伝わります。また、よく噛むことで唾液の分泌が促されます。

唾液にはパロチンなどの成長ホルモンの一種が含まれており、骨や歯の再石灰化を助けたり、老化防止に役立つと言われています。

食事の時間を大切にし、食材を大きめにカットするなどして、自然と噛む回数が増える工夫をしましょう。

食いしばりと骨への過剰負荷

適度な刺激は骨を強くしますが、寝ている間の歯ぎしりや日中の無意識の食いしばりなどの過剰な負荷は逆効果になることがあります。過度な力は歯や歯槽骨にダメージを与え、炎症を引き起こして骨吸収を促進する場合もあります。

エラが張り出しているのに頬がこけているような場合は、食いしばりが原因で筋肉と骨のバランスが崩れている可能性があります。

リラックスを心がけ、必要であればマウスピースなどで歯と骨を守る対策も検討しましょう。

咀嚼習慣と顔貌への影響

咀嚼の状態骨への刺激顔立ちへの影響
左右均等によく噛む骨全体に適度な圧力がかかり、代謝が活性化されるフェイスラインが整い、口周りの筋肉も維持され、歪みのない顔立ちになる
片側だけで噛む癖片側の骨や筋肉だけが発達し、反対側は衰える顔の左右差が大きくなり、使わない側のほうれい線が深くなる
あまり噛まない骨への刺激が不足し、廃用性の萎縮を招く顎が小さく弱々しくなり、二重顎やたるみが進行しやすくなる

日々のケアに取り入れたい具体的なセルフメンテナンス

表情筋トレーニングや正しい姿勢の維持、ストレス管理など、薬や手術に頼らない日々の積み重ねが骨の健康を支え、若々しい印象を長く保つことにつながります。

骨の萎縮を完全に止めることは難しいですが、その速度を緩め、見た目への影響を最小限にすることは日々の努力で可能です。

特別な器具や高価な化粧品を使わなくても、自分の体一つでできるメンテナンスはたくさんあります。大切なのは「骨」を意識した生活を送ることです。

ここでは、今日からすぐに始められる具体的なアクションプランを紹介します。

重力を味方につける運動習慣

顔の骨だけでなく全身の骨密度を維持するために、重力のかかる運動を行いましょう。ウォーキングやジョギング、縄跳びなどは、着地の衝撃が骨への良い刺激となります。

特に「かかと落とし運動」は、背筋を伸ばしてつま先立ちになり、ストンとかかとを落とすだけの簡単な運動ですが、骨ホルモン(オステオカルシン)の分泌を促すと注目されています。

全身の骨代謝が良くなれば、顔の骨にも良い影響が波及します。

表情筋トレーニングの正しい活用

顔の筋肉(表情筋)は骨に付着しています。筋肉を動かして血流を良くすることは、骨膜への栄養供給を助けることにつながります。

ただし、強すぎるマッサージは骨を覆う靭帯を伸ばしてしまうリスクがあるため注意が必要です。皮膚を擦るのではなく、筋肉を内側から動かすイメージでトレーニングを行いましょう。

大きく口を開けて「あ・い・う・え・お」と発音するだけでも、顔全体の筋肉と骨への適度な刺激になります。

良質な睡眠とストレスコントロール

骨の修復や形成は、主に寝ている間に行われます。睡眠不足は骨のメンテナンス時間を奪うことになります。

また、ストレスを感じると分泌されるコルチゾールというホルモンはカルシウムの吸収を妨げ、骨形成を阻害する作用があります。

リラックスして深く眠ることは、最高の美容液であると同時に、骨を守るための重要な時間です。入浴などで体を温め、副交感神経を優位にしてからベッドに入る習慣をつけましょう。

今日から始める骨ケアリスト

  • 1日30分程度、屋外を散歩して日光を浴びながら骨に刺激を与える
  • 仕事や家事の合間に「かかと落とし運動」を30回程度行う
  • 食事中はスマホを見ず、左右の奥歯を使ってしっかり噛むことに集中する
  • 寝る前のスマホ断ちをして、7時間程度の質の高い睡眠時間を確保する
  • 猫背を正し、頭を背骨の上にしっかり乗せる姿勢を保つ(首や顎の骨への負担軽減)

美容医療や専門家によるアプローチの選択肢

セルフケアで限界を感じる場合は、失われたボリュームを補う注入治療や、骨密度そのものにアプローチするホルモン補充療法など、医療の力を借りることも有効な選択肢の一つです。

どれほど生活習慣を整えても、遺伝的要因や加齢による変化をゼロにすることはできません。鏡を見るのが辛いほど悩みが深い場合は、美容医療や婦人科での治療を検討するのも前向きな選択です。

現代の医療では、減ってしまった骨そのものを元の大きさに戻すことは困難ですが、見た目を補正したり、減少のスピードを抑えたりする手段は確立されています。正しい知識を持って、自分に合った方法を選びましょう。

ヒアルロン酸注入による構造的補強

美容皮膚科で行われるヒアルロン酸注入は単にシワを埋めるだけでなく、減ってしまった骨の代わりとなる「土台」を作る使い方が主流になりつつあります。

硬めのヒアルロン酸を骨膜の上に注入し、テントの支柱を立て直すように皮膚を持ち上げます。これにより、自然なリフトアップ効果が得られ、骨萎縮による凹みやたるみを改善します。

外科手術をせずに、骨格の変化による老け見えをカバーできる即効性のある方法です。

ホルモン補充療法(HRT)の検討

婦人科で行われるホルモン補充療法(HRT)は、減少したエストロゲンを薬で補う治療法です。

更年期障害の辛い症状(ホットフラッシュなど)を緩和するのが主な目的ですが、副次的な効果として骨密度の低下を食い止める作用があります。

肌のコラーゲン量を増やす効果も期待できるため、全身のアンチエイジングとして取り入れる人もいます。ただし、リスクや副作用もあるため、医師とよく相談して決定する必要があります。

歯科矯正やインプラントによる骨格維持

歯科領域からのアプローチも顔貌維持には重要です。歯列矯正で噛み合わせを整えたり、失った歯をインプラントで再建したりすることは顎の骨への刺激を正常化し、口周りの骨格維持に貢献します。

美容整形とは異なりますが、口元の骨格を美しく保つという意味では非常に効果的な抗老化手段と言えます。

医療的アプローチの種類と目的

治療法アプローチの目的期待できる効果
ヒアルロン酸注入(硬い製剤)減った骨のボリュームを物理的に補うリフトアップ、ほうれい線の改善、輪郭の形成
ホルモン補充療法(HRT)エストロゲンを補い、骨吸収の暴走を抑える骨密度低下の抑制、肌の弾力維持、更年期症状の緩和
高周波・超音波治療(HIFUなど)骨ではなく、緩んだ筋膜や皮膚を引き締める骨が縮んで余った皮膚や脂肪を熱で引き締め、たるみを目立たなくする

よくある質問

顔の骨痩せは一度始まったら元に戻りませんか?

残念ながら、一度吸収されて小さくなってしまった骨を自然治癒力やセルフケアだけで元の大きさに戻すことはできません。骨は成長期を過ぎると基本的には減っていく一方です。

しかし、適切な食事や運動、生活習慣の改善によって、減少のスピードを緩やかにすることは十分に可能です。また、美容医療の力でボリュームを補い、見た目を若々しい状態に戻すことはできます。

諦めずに「これ以上減らさない」ケアを続けることが大切です。

カルシウムのサプリメントを飲めば顔の骨は守れますか?

サプリメントはあくまで補助的なものであり、それだけで完全に骨を守れるわけではありません。前述の通り、カルシウムはビタミンDやK、マグネシウムなどの協力がないと骨になりません。

また、ホルモンバランスの影響も大きいため、サプリメントを飲むだけでなく、運動などの物理的刺激や、タンパク質の摂取も並行して行う必要があります。

特定の成分だけを大量に摂ることは健康被害のリスクもあるため、基本は食事からの摂取を心がけてください。

顔のマッサージは骨痩せに効果がありますか?

マッサージ自体に骨を増やす効果はありません。むしろ、強い力でグリグリと押すようなマッサージは骨と皮膚をつなぐ靭帯を緩めたり、肝斑を悪化させたりする原因になりかねません。

骨への良い刺激を目的とするなら、マッサージよりも「噛むこと」や「表情筋を動かすトレーニング」の方が安全で効果的です。

血行促進程度の優しいタッチであれば問題ありませんが、骨格矯正を謳うような強引な施術には注意が必要です。

遺伝的に骨が細い人は、更年期の影響を受けやすいですか?

もともとの骨密度が低い人や骨格が華奢な人は、更年期による骨量減少の影響が見た目に現れやすい傾向があります。骨の「貯金」が少ないため、少し減っただけでも変化が大きくなるからです。

母や祖母の顔の老け方が参考になる場合が多いです。遺伝的な要素は変えられませんが、だからこそ、人一倍早くから対策を始め、生活習慣を整えることで、未来の顔立ちを守る努力が大切になります。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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