支持靭帯がゆるむ原因と顔のたるみに及ぼす深刻な影響を知る

鏡を見たときに以前とは異なる顔の印象に戸惑い、高価なスキンケアやマッサージを試しても思うような変化が得られずに悩んでいませんか。
顔のたるみは単なる皮膚の老化ではなく、骨と皮膚をつなぎ止める「支持靭帯(リテイニングリガメント)」のゆるみが根本的な原因として大きく関与しています。
この支持靭帯がゆるむと、皮膚や脂肪を支える力が失われ、雪崩のように顔全体が下垂するという深刻な事態を招きます。
本記事では、支持靭帯がゆるむ具体的な原因から、それが引き起こす顔貌への影響、そして日常生活で見直すべきポイントまでを網羅的に解説します。
構造的な変化を正しく理解し、適切な対策を行うことが、あなたの未来の美しさを守るために重要です。
支持靭帯の役割と顔の構造における重要性
支持靭帯とは、顔の皮膚や脂肪組織を骨格にしっかりと固定し、重力による下垂を防ぐアンカー(錨)のような役割を果たす強靭な繊維組織であり、この組織が健在であってこそ若々しい顔の形状を維持できます。
私たちの顔は表面から順に表皮、真皮、皮下脂肪、筋肉(筋膜)、そして骨という層構造で成り立っています。これら複数の層がバラバラに動いてしまわないように、串刺しにするような形で骨から皮膚へと貫き、しっかりとつなぎ止めているのが支持靭帯です。
家の構造に例えるならば、皮膚が外壁や屋根だとすると、支持靭帯はそれらを柱や土台である骨組みに固定するボルトや金具に相当します。
この結合組織がピンと張っている状態であれば、脂肪や皮膚は本来あるべき高い位置に留まることができますが、逆にこの組織がゆるんでしまうと、支えを失った表面の組織は重力に抗えず、下へと滑り落ちていきます。
特に顔の美しさを決定づける要素として、皮膚のハリ以上に、この内部の固定力が重要視する専門家が増えています。
支持靭帯は顔全体に均一に存在するのではなく、特定のポイントに存在し、その場所で皮膚をハンモックのように吊り上げています。
顔の主要な支持靭帯とその配置
顔には「キーリガメント」と呼ばれる、たるみ予防において特に重要な役割を果たす靭帯がいくつか存在し、それぞれの配置場所によって支えている顔のパーツが異なります。
これらの靭帯は貝柱のように骨と組織を強固に結びつけていますが、加齢とともにその結束力は弱まっていきます。 主要な靭帯は目の周り、頬、口周り、フェイスラインといった、私たちが「老けた」と感じやすい部位に集中しています。
例えば目の周りの靭帯がゆるめば目袋ができやすくなり、頬の靭帯がゆるめばほうれい線が深くなるといった具合に、各靭帯の状態は顔の特定の悩みに直結します。
解剖学的な位置関係を把握することは、自分の顔のどこで支えが失われているのかを知る手がかりとなります。
主要な支持靭帯の機能と位置
| 支持靭帯の名称 | 主な位置 | 支えている役割と特徴 |
|---|---|---|
| 眼窩(がんか)靭帯 | 目の周りを囲む骨の縁 | 眼球を保護する脂肪や目の周りの皮膚が垂れ下がらないように固定します。ここが弱まると目袋やゴルゴラインの原因となります。 |
| 頬骨(きょうこつ)靭帯 | 頬骨の下あたり | 頬の脂肪(メーラーファット)を高い位置に維持します。顔の立体感を保つために極めて重要な靭帯です。 |
| 咬筋(こうきん)靭帯 | 頬の側面、咬筋の前縁 | フェイスラインや口元の皮膚を外側から支えます。ゆるむとマリオネットラインやフェイスラインの崩れにつながります。 |
| 下顎(かがく)靭帯 | あごの骨の付近 | 口角からあごにかけての皮膚を固定します。この部分のゆるみは、いわゆるブルドッグ顔を形成する大きな要因です。 |
支持靭帯の性質と老化の関係
支持靭帯はコラーゲンを主成分とする繊維組織ですが、ゴムのように伸縮自在なわけではなく、一度伸びてしまうと自然には元の長さに戻らないという性質を持っています。
若い頃の支持靭帯は太く、弾力に富み、骨にしっかりと根ざしていますが、年齢を重ねるにつれて繊維自体が細くなり、硬く変化していきます。
さらに、長年にわたって重力の負荷がかかり続けることで徐々に引き伸ばされていきます。洋服のゴムが長年使い続けると伸びきって戻らなくなるのと同様の現象が、顔の内部で進行します。
この不可逆的な変化こそが、加齢によるたるみがスキンケアだけでは解決しにくい大きな理由です。表面の皮膚を引き締めることと、内部の靭帯を強化・維持することは全く別のケアが必要となります。
支持靭帯の状態を良好に保つことは、アンチエイジングにおいて土台工事を行うようなものであり、見た目の若さを左右する決定的な差となります。
骨と靭帯の接点における変化
支持靭帯の問題を考える上で見落としてはいけないのが、靭帯が付着している「骨」の状態です。支持靭帯は骨膜に根を下ろしていますが、土台となる顔の骨自体も加齢によって萎縮し、体積が減少します。
骨が痩せて小さくなると、その表面積も減少するため、付着していた支持靭帯の位置がずれ込み、結果として余剰が生まれてゆるみが発生します。
テントのポール(骨)が細くなれば、張っていたロープ(靭帯)がたるみ、テントの布(皮膚)がしわくちゃになる現象と同じです。
つまり、支持靭帯が単独で伸びるだけでなく、土台の縮小というダブルパンチを受けることで、顔の構造的な崩壊が加速するのです。
加齢に伴う骨の萎縮と靭帯への影響
顔の骨密度低下による骨の萎縮は支持靭帯の付着部を後退させ、物理的な「余り」を生じさせることでたるみを劇的に進行させる主要因です。
一般的に骨粗鬆症というと体の骨の話だと思われがちですが、実は顔の骨も年齢とともに確実に痩せていきます。特に眼窩(目の穴)、上顎、下顎の骨は吸収されやすく、形が変化しやすい部位です。
骨が小さくなると、それまでピンと張っていた支持靭帯は固定点を失い、内側へと落ち込みます。これにより、靭帯によって支えられていた脂肪や皮膚も雪崩を打つように下方向、そして内方向へと移動を開始します。
この骨の萎縮は、40代以降に顕著になり、女性ホルモンの減少とも密接に関係しています。
頭蓋骨の形状変化とたるみの相関
加齢によって頭蓋骨は全体的に縮小し、特に眼窩(目のくぼみ)は広がり、顎の骨は小さく後退するという特徴的な変化を起こします。
眼窩が広がると目の周りの靭帯の付着位置が下がり、目元のたるみやクマが目立つようになります。上顎骨が痩せると、小鼻の横の凹みが深くなり、ほうれい線の溝を作り出します。
また、下顎骨が吸収されて小さくなると、あご先のシャープさが失われるだけでなく、余った皮膚が首との境界線を曖昧にし、二重あごのような状態を作り出します。
このように、骨の形状変化は支持靭帯のテンション(張力)を直接的に低下させ、顔の表面に老いのサインとして現れます。
骨のボリュームロスを補うようなヒアルロン酸注入などが美容医療で行われるのは、この失われた土台を復元し、靭帯を再び張り直すことを目的としているからです。
年齢層別の骨と靭帯の変化傾向
| 年代 | 骨の状態と変化 | 支持靭帯への影響 |
|---|---|---|
| 30代 | 骨吸収の兆候はまだ軽微ですが、眼窩の下縁など一部で骨密度の低下が始まります。 | 目元の靭帯にわずかなゆるみが生じ、夕方になると疲れ顔が見え隠れするようになります。 |
| 40代 | 上顎骨や下顎骨の萎縮が進行し始めます。骨のボリューム減少が明確になり始めます。 | 頬や口元の靭帯が支えを失い始め、ほうれい線やマリオネットラインの初期症状が現れます。 |
| 50代以降 | 顔全体の骨が縮小し、土台としての面積が大幅に減少します。特に閉経後の女性に顕著です。 | 多くの支持靭帯が著しくゆるみ、顔全体の輪郭が崩れ、深いシワや顕著なたるみが固定化します。 |
骨質低下を防ぐための栄養学的視点
顔の骨の萎縮を食い止めることは、支持靭帯のゆるみを予防する上で非常に大切です。
骨の健康を維持するためにはカルシウムだけでなく、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや、骨の梁(はり)を作るビタミンK、そして骨の主成分であるコラーゲンの生成に必要なタンパク質やビタミンCを十分に摂取する必要があります。
無理なダイエットによる栄養不足は顔の骨を急速に老化させ、結果として支持靭帯のゆるみを早める原因となります。
バランスの取れた食事は肌表面だけでなく、その深部にある骨と靭帯を守るためにも重要です。日々の食事内容を見直すことが、数年後の顔のたるみ具合を左右すると言っても過言ではありません。
ホルモンバランスと骨吸収の関係
女性ホルモンであるエストロゲンには骨を壊す破骨細胞の働きを抑制し、骨を守る作用があります。
更年期を迎えてエストロゲンの分泌が急激に減少すると骨の分解スピードが形成スピードを上回り、顔の骨も急速に痩せていきます。これが、閉経後に急に顔が老け込んだように感じる大きな理由の一つです。
支持靭帯そのものの老化に加え、土台となる骨の消失が同時に進行するため、この時期のケアは特に重要です。
婦人科での相談やエクオールなどのサプリメント活用も含め、ホルモンバランスへの配慮は間接的ですが強力なたるみ予防策となります。
生活習慣に潜む支持靭帯へのダメージ要因
日常の何気ない癖や環境要因が酸化ストレスや糖化ストレスを通じて支持靭帯の変性を招き、物理的な伸展を加速させています。
遺伝や加齢は避けられない要素ですが、生活習慣によるダメージは自らの意志でコントロールし、最小限に抑えることが可能です。
支持靭帯を傷つける要因は特別なことではなく、毎日の生活の中に無数に潜んでいます。紫外線、食事、姿勢、睡眠など、日々の積み重ねが靭帯の強度を奪い、老化の時計を早めてしまいます。
ここでは、特に注意が必要な生活習慣上のリスク要因について詳しく解説します。
紫外線による光老化と深部ダメージ
紫外線、特に波長の長いUVAは皮膚の奥深くまで到達し、真皮層だけでなく皮下組織や支持靭帯にまで悪影響を及ぼします。これを「光老化」と呼びます。
紫外線によって発生した活性酸素は支持靭帯を構成するコラーゲン繊維やエラスチン繊維を切断・変性させ、その弾力を奪います。
長年日光を浴び続けてきた人の肌が深く刻まれたシワや強いたるみを示すのは、表面だけでなく内部の支持構造までもが破壊されているためです。
日焼け止めを塗ることは単にシミを防ぐだけでなく、顔の形を保つ支持靭帯を守るためにも重要です。室内であっても窓ガラスを通過するUVAへの対策を行うことが必要です。
靭帯を劣化させる主な生活習慣リスト
- 糖質の過剰摂取による糖化
余分な糖分が体内のタンパク質と結びつき、AGEs(終末糖化産物)を生成。これが支持靭帯のコラーゲンを硬く脆くし、弾力性を失わせる。 - 長時間のスマートフォンの使用
下を向く姿勢が長時間続くと重力が顔の前面に強くかかり続け、支持靭帯を物理的に引き伸ばす負荷となる。 - 喫煙習慣
タバコは毛細血管を収縮させ、支持靭帯への栄養供給を阻害する。また、ビタミンCを大量に消費するため、コラーゲンの修復能力を低下させます。 - 睡眠不足と質の低下
成長ホルモンは睡眠中に分泌され、組織の修復を行う。睡眠不足は支持靭帯の微細な損傷を回復させる機会を奪う。
酸化ストレスと抗酸化ケア
呼吸をして生きている以上、体内では常に活性酸素が発生しており、これが細胞や組織を錆びつかせる「酸化」を引き起こします。激しい運動、過度なストレス、大気汚染なども活性酸素を増やす要因です。
酸化した支持靭帯はしなやかさを失い、硬化していきます。硬くなったゴムが切れやすくなるのと同様に、酸化した靭帯は負荷に耐えられなくなります。
ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質を積極的に摂取し、体内から錆びつきを防ぐことが、靭帯の若さを保つ鍵となります。
また、ストレスを溜め込まないライフスタイルを心がけることも、美容面において大きな意味を持ちます。
顔の脂肪移動と支持靭帯の相互作用
支持靭帯がゆるむと、それまで定位置に留め置かれていた皮下脂肪(ファットパッド)が重力に従って下移動し、顔の凹凸バランスを崩壊させます。
顔の脂肪は一続きの膜ではなく、「コンパートメント」と呼ばれるいくつかの区画に分かれて存在しています。健康な支持靭帯は、これらの脂肪の区画を壁のように仕切り、適切な位置に保持しています。しかし、靭帯の拘束力が弱まると、脂肪の塊はズルズルと下へ移動を始めます。
さらに悪いことに加齢によって脂肪自体が増減し、こめかみや頬の上部は痩せてこけ、逆にあご周りや口元には落ちてきた脂肪が溜まるという現象が起きます。これにより、顔の重心が下がり、老けた印象が決定的になります。
メーラーファットの下垂と法令線
頬骨の上にある脂肪「メーラーファット」は、若々しい笑顔を作る重要な要素です。しかし、頬骨靭帯がゆるむと、このメーラーファットの重量を支えきれなくなり、脂肪全体が斜め下方向へ滑り落ちます。
落ちてきた脂肪は口元の筋肉との境界線でせき止められ、その段差が深い溝となります。これがほうれい線の正体の一つです。
単に皮膚が折り畳まれているのではなく、上から落ちてきた脂肪の塊が覆いかぶさっている状態であるため、表面的な保湿だけでは改善が難しいのです。このメカニズムを理解すると、なぜリフトアップが必要なのかが見えてきます。
組織の崩れが引き起こす連鎖反応
| 段階 | 現象の詳細 | 見た目の変化 |
|---|---|---|
| 初期段階 | 支持靭帯の張力が低下し、脂肪組織がわずかに本来の位置からズレ始めます。 | 頬のトップ位置が下がり、顔が以前より平坦になったように感じます。毛穴が涙型に開き始めます。 |
| 進行段階 | 移動した脂肪が下方の組織を圧迫し、皮膚を引き伸ばしながらさらに下垂します。 | ほうれい線が明確になり、口角が下がって不機嫌そうな表情に見えるようになります。 |
| 深刻化段階 | 複数の脂肪区画が合流するように下顎付近に集積し、フェイスラインを完全に覆い隠します。 | あごと首の境界が不明瞭になり、顔が四角く大きくなった印象を与えます。二重あごが定着します。 |
バッカルファットとジョールファットの影響
頬の深部にある脂肪「バッカルファット」や、口元の横に位置する「ジョールファット」も、支持靭帯のゆるみと深く関係しています。
これらが本来の位置から逸脱して垂れ下がると、口の両脇にマリオネットラインと呼ばれる腹話術の人形のような線を作り出します。
さらに、フェイスラインの骨の縁を乗り越えて脂肪が垂れ下がることで、いわゆるブルドッグ顔が形成されます。
これらの脂肪の下垂は、一度起こると自然に戻ることは難しく、支持靭帯の強化や外科的なアプローチが必要になるケースも少なくありません。
脂肪の重み自体がさらに靭帯を引き伸ばすという悪循環に陥るため、体重管理も含めた早期の対策が大切です。
深刻な顔のたるみが及ぼす具体的な症状
支持靭帯の機能不全は顔の特定部位に深い溝や影、そして輪郭の変形をもたらし、実年齢以上の老いを感じさせる主原因となります。
たるみは、「なんとなく顔が疲れている」という印象から始まり、やがてはっきりとした形状の変化として定着します。それぞれの症状は、どの靭帯がダメージを受けているかによって現れる場所が異なります。
ここでは、多くの人が悩みとして抱える具体的な症状と、その背後にある靭帯のゆるみの関係を紐解きます。自分の顔に現れているサインが、どの靭帯からのSOSなのかを知ることで的確なケアへの第一歩を踏み出すことができます。
ゴルゴライン(ミッドチークライン)の形成
目頭から頬の中央にかけて斜めに走る線を漫画のキャラクターにちなんで「ゴルゴライン」と呼びます。これは皮膚のシワではなく、内部構造のくぼみによって生じる影です。
眼窩の下縁から頬にかけての支持靭帯がゆるみ、筋肉や脂肪が下がる一方で、靭帯が付着している部分だけが皮膚を骨側に引き込み続けることで、その高低差がラインとなって現れます。
この線が出現すると顔全体がやつれた印象や、厳格で近寄りがたい印象を与えてしまうことがあります。疲れが溜まった時に目立ちやすくなるのも特徴の一つです。
部位別に見るたるみ症状と原因靭帯
| 症状の名称 | 現れる部位 | 主な原因となる支持靭帯 |
|---|---|---|
| 目袋(黒クマ) | 目の下の膨らみ | 眼窩靭帯のゆるみにより、眼窩脂肪が前方に突出して生じます。 |
| ほうれい線 | 小鼻から口角への溝 | 頬骨靭帯のゆるみによるメーラーファットの下垂が主な原因です。 |
| マリオネットライン | 口角からあごへの線 | 下顎靭帯のゆるみと、口周りの脂肪の堆積によって形成されます。 |
| フェイスラインの崩れ | あごの輪郭線 | 咬筋靭帯や耳下腺付近の靭帯のゆるみにより、皮膚全体が首へと流れ込みます。 |
瞼(まぶた)の被さりと視界への影響
おでこや眉周りの支持靭帯がゆるむと、額の皮膚や眉毛の位置が下がります。これが上まぶたに覆いかぶさると、目が小さく見えたり、二重の幅が狭くなったりします。
見た目の問題だけでなく、まぶたが重くなることで無意識に眉を持ち上げようとし、額に深い横ジワを刻む原因にもなります。
さらに重度になると視界が遮られる眼瞼下垂のような症状を引き起こし、頭痛や肩こりといった身体的な不調につながることもあります。顔のたるみは美容面だけでなく、機能面においてもQOL(生活の質)を下げる要因となり得るのです。
自己流ケアが招く支持靭帯への逆効果
良かれと思って行っている過度なマッサージや誤った顔の筋力トレーニングは繊細な支持靭帯を傷つけ、かえってたるみを悪化させる危険な行為です。
「たるみを引き上げたい」という一心で、肌を強くこすったり、ぐいぐいと押し上げたりする人がいますが、これは支持靭帯にとっては拷問に近い行為です。
先述の通り、支持靭帯は一度伸びると戻らない性質を持っています。外部から強い力で引っ張ることは、自ら靭帯を引き伸ばし、老化を加速させていることに他なりません。
ここでは、陥りやすい誤ったケアとそのリスクについて警鐘を鳴らします。
摩擦と牽引による物理的ダメージ
かっさプレートや美顔ローラーなどで顔の肉を強く挟んだり、下から上へと無理やり押し上げたりする行為は要注意です。皮膚の表面だけでなく、内部の繊維組織に微細な断裂を生じさせる可能性があります。
特に皮膚が薄い目元や口元のケアには細心の注意が必要です。 マッサージを行う際は、摩擦を避けるために十分なクリームやオイルを使用し、組織を動かすのではなく、リンパの流れを優しく促す程度の圧に留めることが大切です。
「痛いほうが効く」というのは大きな誤解であり、組織にとってはダメージでしかありません。
避けるべきNG習慣リスト
- 自己流の強力な造顔マッサージ
骨格を矯正しようとして強い圧力をかけることは支持靭帯を圧迫し、結合を緩める原因 - 急激な体重変動(ダイエットとリバウンド)
短期間で太ったり痩せたりを繰り返すと皮膚と靭帯が伸縮に追いつけず、ゴムが伸びきったような状態になる - 過剰な表情筋トレーニング
適切な指導なしに顔を極端に歪めるような体操を行うと必要な脂肪を移動させたり、シワを定着させたりするリスクがある
洗顔やスキンケア時の手つき
毎日の洗顔や化粧水を塗る際の手の動きも、積み重なれば大きな影響を持ちます。洗顔時に顔をゴシゴシと上下にこすったり、タオルで拭く際に乱暴に扱ったりすることは厳禁です。
皮膚は常に重力によって下方向への力を受けています。ケアの際は皮膚を動かさないように優しく触れるか、あるいは軽く肌を持ち上げるように触れるのが正解です。
日々の小さな物理的ストレスを減らすことが支持靭帯を長持ちさせるための基本中の基本です。赤ちゃんの肌に触れるような優しさで、自分の肌を扱う意識を持ちましょう。
科学的根拠に基づいた有効な対策とアプローチ
支持靭帯のゆるみに対抗するためには表面的な保湿だけでなく、深部組織への熱刺激による引き締めや、筋肉によるサポート強化など多角的なアプローチが必要です。
伸びてしまった靭帯を完全に元通りにすることは現代の医学でも困難ですが、引き締め直したり、周囲の組織を強化して補ったりすることは可能です。
近年では美容医療の進化により、メスを使わずに支持靭帯へアプローチする技術も確立されてきました。また、セルフケアにおいても、正しい知識を持って行えば、進行を遅らせることは十分に可能です。
ここでは、現在有効とされている対策の方向性を整理します。
熱エネルギーによるタイトニング
現在、支持靭帯への直接的なアプローチとして主流なのが、HIFU(高密度焦点式超音波)や高周波(RF)を用いた治療です。これらは皮膚の表面を傷つけずに、深層にあるSMAS筋膜や支持靭帯に熱エネルギーを届けます。
タンパク質は熱を加えると縮む性質(熱変性)があります。これを利用して、ゆるんだ組織をギュッと引き締めます。
さらに、熱によるダメージを修復しようとする過程で新しいコラーゲンが大量に生成され、組織が再構築されます。これにより、内側からの強力なリフトアップ効果が期待できます。
医療機関での施術となりますが、構造的なたるみに対する最も理にかなった選択肢の一つです。
ケアのアプローチ別比較
| アプローチ | 期待できる効果 | 支持靭帯への作用 |
|---|---|---|
| 基礎化粧品(外用) | 表皮の乾燥防止、小ジワの改善、肌の質感向上。 | 直接的な効果はありません。真皮層の環境を整え、間接的に保護する役割です。 |
| 表情筋トレーニング | 筋肉のボリュームアップによる皮膚の持ち上げ。 | 靭帯そのものは鍛えられませんが、筋肉が肥大することで内側から張り出し、ゆるみをカバーします。 |
| 美容医療(機器) | 深部組織の熱収縮による引き締めとリフトアップ。 | 支持靭帯や筋膜に熱を加え、物理的に収縮・強化させます。最も直接的なアプローチです。 |
| ヒアルロン酸注入 | 失われた骨や脂肪のボリューム補充。 | 靭帯の根元(基部)を持ち上げ、本来のテンションを取り戻す「杭打ち」のような効果を発揮します。 |
頭皮からのリフトアップ意識
顔の皮膚は頭皮と一枚皮でつながっています。顔の支持靭帯だけに注目するのではなく、頭皮のケアを行うことも有効です。頭皮が凝り固まって血行が悪くなると顔の皮膚を引き上げる力が弱まり、全体的な下垂を助長します。
側頭部(耳の上あたり)の筋肉をほぐすことは頬のたるみ予防につながり、後頭部をほぐすことは額や目元のリフトアップにつながります。
シャンプーの際に指の腹を使って優しく頭皮をマッサージするなど、頭皮環境を柔軟に保つことは間接的に顔の靭帯にかかる負担を軽減するサポートになります。顔と頭はセットであると考え、広範囲でのケアを心がけましょう。
よくある質問
- 一度伸びた支持靭帯は自力で元に戻せますか?
-
残念ながら、一度伸びてしまった支持靭帯をセルフケアや自然治癒力だけで元の長さに戻すことは極めて困難です。靭帯は筋肉とは異なり、鍛えて太くすることができない組織だからです。
しかし、諦める必要はありません。美容医療による熱凝固での引き締めや、ヒアルロン酸注入による構造的補強によって、機能的な改善を図ることは十分に可能です。
また、これ以上伸ばさないための予防ケアを徹底することで、現状を維持することはできます。
- 支持靭帯のゆるみ対策は何歳から始めるべきですか?
-
骨の吸収やコラーゲンの減少が始まる30代前半から意識することをお勧めします。もちろん、20代であっても紫外線対策や過度な摩擦を避けることは将来への投資となります。
たるみが目に見えて気になり始めるのは40代以降が多いですが、水面下での組織の変化はその10年以上前から始まっています。
「気になり始めた時」が対策の始め時ですが、早ければ早いほどその後の維持が楽になることは間違いありません。
- コラーゲンのサプリメントは支持靭帯に効果がありますか?
-
摂取したコラーゲンがそのまま支持靭帯になるとは限りませんが、無意味ではありません。
摂取したタンパク質やコラーゲンペプチドは体内でアミノ酸等に分解された後、必要に応じて組織の修復に使われます。
支持靭帯の主成分はコラーゲンであるため、その材料を体内に十分に満たしておくことは、組織の代謝や修復をスムーズにするために大切です。
ビタミンCや鉄分と一緒に摂取することで、コラーゲン生成の効率を高めることができます。
- EMS美顔器は支持靭帯に効きますか?
-
EMS(電気刺激)は、主に「筋肉」に作用するものであり、支持靭帯そのものを強化するものではありません。
しかし、顔の筋肉(表情筋)を刺激して適度な緊張を与えることは、支持靭帯の負担を減らすことにつながります。筋肉が引き締まることでその上にある脂肪や皮膚が支えられ、結果としてたるみの改善に見える効果は期待できます。
ただし、強すぎる出力や長時間の使用は筋肉疲労や組織への負担になるため、使用頻度と強度を守ることが大切です。
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