更年期と皮膚の菲薄化|エストロゲン減少が招くコラーゲン密度低下と肌痩せ

更年期と皮膚の菲薄化|エストロゲン減少が招くコラーゲン密度低下と肌痩せ

更年期に差し掛かると多くの女性が直面する「肌が薄くなる」「ハリが失われる」という感覚は、単なる乾燥や老化ではなく、エストロゲンの急激な減少に起因する皮膚の構造的な変化、すなわち「菲薄化(ひはくか)」が深く関わっています。

本記事では、ホルモンバランスの変化が真皮層のコラーゲン密度に与える影響や、肌痩せが進行する理由を科学的見地から紐解きます。

その上で、薄くなった皮膚を守り、健やかな密度を取り戻すための具体的なケア方法や生活習慣について、体系的かつ実践的な情報を提供します。

目次

皮膚の菲薄化とは何か その構造的変化と加齢による影響

皮膚の菲薄化とは、表皮と真皮の両方が物理的に薄くなり、皮膚全体の厚みが減少する現象であり、特に更年期以降の女性においては肌の密度そのものがスカスカになる「肌痩せ」として認識されます。

若い頃の肌は、厚みのある真皮層がクッションの役割を果たし、表皮を内側から力強く支えていますが、菲薄化が進行した肌はこの支えを失い、外部からの刺激に対して極めて脆弱な状態に陥ります。

単に水分が足りない状態とは異なり、皮膚を構成する細胞や繊維の絶対量が減ってしまうことが本質的な問題です。

表皮のターンオーバー遅延と厚みの減少

肌の最も外側にある表皮は通常約28日の周期で生まれ変わりますが、加齢とともにこの周期は40日、60日と長期化していきます。

新しい細胞が作られるスピードが低下することで、表皮全体の厚みが維持できなくなり、徐々に薄くなっていきます。

表皮が薄くなると、水分を保持する機能が低下するだけでなく、外部の刺激が神経に届きやすくなるため、些細な刺激で痒みや痛みを感じる敏感肌の状態を招きます。

真皮層における弾力繊維の変性と消失

肌のハリや弾力の源である真皮層の変化は、見た目の印象に決定的な影響を与えます。真皮の約70パーセントを占めるコラーゲン繊維や、それを束ねるエラスチン繊維が加齢とともに変性し、その数自体も減少します。

これにより真皮層自体がペラペラの状態になり、表面の皮膚を支えきれなくなります。指で肌をつまんだ時に以前よりも薄く感じたり、戻りが遅くなったりするのは、この真皮層のボリュームダウンが主な原因です。

皮下脂肪の減少と位置の移動

皮膚のさらに奥にある皮下脂肪も加齢とともに減少したり、重力によって下垂したりします。顔のふっくらとした丸みを形成していた皮下脂肪が減ると皮膚が余ってしまい、それがたるみや深いシワとして現れます。

土台である骨の萎縮も同時に進行するため、皮膚、皮下脂肪、骨格のすべてが縮小傾向となり、顔全体が小さく萎んだような印象を与える「肌痩せ」が加速します。

皮膚構造の変化と見た目への影響

部位健康な状態の特徴菲薄化による変化
表皮十分な厚みがあり、キメが整っている。水分を逃さない薄くなり、キメが平坦化する。バリア機能が低下し乾燥しやすい。
真皮コラーゲンが密に詰まり、弾力と厚みがある繊維が寸断されスカスカになる。弾力を失い、深く折れ曲がりやすくなる。
皮下組織適度な脂肪が肌を持ち上げ、滑らかな曲線を保つ脂肪が減少し、皮膚が余る。骨格が浮き出てゴツゴツした印象になる。

エストロゲン減少が引き起こすコラーゲン密度の低下

更年期における肌質の劇的な変化の主犯は卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」の急激な枯渇であり、これが真皮の工場である線維芽細胞の活動を停止させ、コラーゲン産生能力を著しく低下させます。

エストロゲンは肌の水分保持やコラーゲン生成を促す指令を出す重要な役割を担っています。閉経前後でエストロゲンの分泌量がゼロに近づくと、これまで保たれていた肌の生産システムが機能不全に陥り、コラーゲン密度が急速に失われていくのです。

線維芽細胞に対するエストロゲンの受容体作用

真皮の中に存在する線維芽細胞には、エストロゲンを受け取るための受容体(レセプター)が存在します。

血流に乗って運ばれてきたエストロゲンがこの受容体に結合することで、線維芽細胞は活性化し、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を積極的に作り出します。

しかし、更年期になりエストロゲンそのものが供給されなくなると受容体への刺激がなくなり、線維芽細胞は休眠状態のような不活性な状態になります。

これにより、新しい組織が生み出されなくなり、古い組織の分解だけが進むため、肌の密度が低下します。

閉経後5年間で起こるコラーゲンの急減

研究によると、閉経後の最初の5年間で皮膚のコラーゲン量は最大で30パーセントも減少すると言われています。これは緩やかな老化現象とは異なり、崖を転がり落ちるような急激な変化です。この時期に「急に老けた」「肌質が完全に変わった」と感じる女性が多いのはこのためです。

その後も毎年約2パーセントずつコラーゲンは減少し続けるため、更年期初期の段階でいかに食い止める対策を行うかが、その後の肌人生を左右します。

ヒアルロン酸合成の低下と水分保持力の喪失

エストロゲンはコラーゲンだけでなく、水分を抱え込むゼリー状の物質であるヒアルロン酸の合成も促進しています。エストロゲンの減少は直ちに真皮内のヒアルロン酸量の減少につながり、肌のみずみずしさが失われます。

真皮の水分が減ると、コラーゲン繊維同士の間隔が狭まり、弾力が失われるだけでなく、肌全体が硬く萎縮します。これが、更年期特有の「枯れたような乾燥」の原因となります。

ホルモン変化と肌構成成分の関係

成分エストロゲンの役割減少時の肌への影響
コラーゲン合成を促進し、分解を抑制する。肌の強度を保つ肌の厚みが減り、深いシワやたるみが発生する。ハリがなくなる
エラスチン弾力を維持するバネの役割を持つ繊維の生成を助ける肌の戻る力が弱まり、重力に負けて皮膚が下垂する
ヒアルロン酸水分を保持し、真皮に潤いとボリュームを与える肌内部の水分量が低下し、肌が萎み、ちりめんジワが増える

更年期特有の肌痩せと菲薄化の視覚的特徴

更年期の肌痩せや菲薄化は単なるシワの増加とは異なり、肌全体の質感が「紙のように薄く頼りない」状態へと変化し、血管が透けて見えたり、少しの衝撃で内出血を起こしやすくなったりするという特徴的なサインとなって現れます。

健康的な肌が持つふっくらとした弾力や透明感とは対照的に菲薄化した肌は平坦で影ができやすく、顔色全体がくすんで見える傾向があります。これらの変化は顔だけでなく、首や手の甲などにも顕著に現れます。

紙のような質感と細かいちりめんジワ

肌の厚みが失われると、表面には細かく浅いシワが無数に現れます。これを「ちりめんジワ」と呼びますが、これは表情によってできるシワとは異なり、肌自体の萎縮によって生じるものです。

指で肌を寄せると、薄い和紙をくしゃっとさせたような細かい線が入り、なかなか元に戻りません。

メイクアップ料がこの細かい溝に入り込みやすく、ファンデーションを塗ることでかえってシワが目立ってしまうことも、菲薄化した肌の大きな悩みです。

血管の透見と赤ら顔

表皮と真皮が薄くなることで、その下を流れる毛細血管の色が透けて見えやすくなります。特に頬や小鼻の周りなどは血管が拡張していることも多く、肌が赤黒く見えたり、紫色の細い血管が浮き出て見えたりします。

また、肌のバリア機能が弱まっているため、温度変化や些細な刺激で顔がカッと熱くなり赤くなる「ホットフラッシュ」のような症状とも重なり、肌の色ムラが目立つようになります。

衝撃への脆弱性と紫斑(内出血)

真皮のクッション性が失われると、外部からの物理的な衝撃を吸収できなくなります。そのため、少しぶつけただけでも血管が破れ、広範囲に内出血(紫斑)ができやすくなります。

特に手の甲や腕などに多く見られ、これを「老人性紫斑」と呼びますが、更年期以降の皮膚の菲薄化が進行しているサインの一つです。

肌を守る機能が物理的に弱まっていることの現れであり、日常生活での摩擦や衝撃に注意が必要です。

菲薄化が進行した肌に見られる主な兆候

  • 洗顔後や入浴後に肌が突っ張る感覚が強く、すぐに保湿しないと痛みを感じる
  • 以前と同じファンデーションを使っているのに、仕上がりが粉っぽく、毛穴やシワが目立つ
  • 頬骨の高い位置や口元の皮膚をつまむと、以前のような厚みがなく、皮一枚のような感触がある
  • 枕の跡やマスクの跡が長時間消えず、肌の弾力不足を感じる
  • 首の皮膚がたるみ、縦方向のスジや横方向の深いシワが目立つようになる
  • 手の甲の血管が浮き出て見え、皮膚が透明になったかのように感じる

バリア機能の低下と菲薄化の悪循環

皮膚が菲薄化すると肌表面の角質層も薄く不安定になり、外部刺激から肌を守り水分蒸発を防ぐ「バリア機能」が著しく低下するため、乾燥がさらなる菲薄化を招くという負のスパイラルに陥ります。

健康な角質層は角質細胞と細胞間脂質(セラミドなど)がレンガとモルタルのように隙間なく積み重なっていますが、菲薄化した肌ではこの配列が乱れています。

その結果、どれだけ保湿しても水分が逃げてしまい、乾燥による炎症が真皮のコラーゲン分解をさらに加速させることになります。

セラミド産生能の低下による乾燥

更年期には表皮細胞でのセラミド合成能力も低下します。セラミドは水分を抱え込む強力な保湿成分であり、バリア機能の主役です。

セラミドが不足すると角質層はスカスカになり、外界の乾燥した空気がダイレクトに肌内部の水分を奪います。

この慢性的な乾燥状態は肌の代謝酵素の働きを鈍らせ、正常なターンオーバーを妨げるため、未熟な細胞が表面に現れ、さらにバリア機能が弱まるという悪循環を生み出します。

微弱炎症(慢性炎症)の発生

バリア機能が壊れた肌にはアレルゲンや細菌、化学物質などの異物が侵入しやすくなります。これに対して肌内部では防御反応として微弱な炎症が常に起きている状態になります。

自覚症状がないレベルの炎症であっても、炎症性サイトカインという物質が放出され、これが真皮のコラーゲンを破壊する酵素(MMP)を活性化させてしまいます。

つまり、肌荒れや乾燥を放置することは、直接的に肌痩せを進行させる原因となるのです。

摩擦刺激に対する抵抗力の低下

薄くなった肌は摩擦に対して極めて弱くなっています。洗顔時の擦りすぎ、タオルでの拭き取り、化粧用コットンの使用などが健康な肌なら問題ないレベルであっても、菲薄化した肌にとっては角質を剥ぎ取る大きなダメージとなります。

物理的な刺激によって角質が無理やり剥がされると肌は急いで修復しようとして不完全な角質を作り出し、これがキメの乱れやごわつきの原因となります。

バリア機能の状態と水分保持の仕組み

比較項目健康なバリア機能菲薄化・バリア機能低下肌
角質層の構造細胞と脂質が整然と並び、強固な壁を作っている配列が乱れ、隙間が生じている。表面が毛羽立っている。
水分保持力内部の水分を逃さず、長時間潤いをキープできる水分蒸散量が多く、保湿してもすぐに乾いてしまう
外部刺激への反応異物をブロックし、炎症が起きにくい異物が浸透しやすく、赤みや痒み、炎症が起きやすい

ホルモン以外の外的要因による肌痩せの加速

更年期の肌痩せはエストロゲンの減少が主要因ですが、紫外線による光老化や酸化ストレス、糖化ストレスといった環境要因が加わることで、その進行速度は何倍にも加速されます。

特に防御力が落ちている菲薄化した肌にとって、これらの外的要因は致命的なダメージを与えます。ホルモンケアだけを行っても、日常生活の中に潜む肌破壊の要因を取り除かなければ、肌痩せの進行を食い止めることは困難です。

紫外線(UVA)による真皮の破壊

紫外線の中でも波長の長いUVAは表皮を通り越して真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを直接破壊します。さらに、線維芽細胞のDNAにも損傷を与え、コラーゲンを作る能力そのものを奪います。

薄くなった肌は紫外線をブロックする角質層やメラニンの防御壁も弱くなっているため、通常よりも紫外線が奥深くまで透過しやすい状態にあります。わずかな時間の外出や窓から入る日差しであっても、累積的に真皮をスカスカにしていきます。

糖化によるコラーゲンの硬化と脆化

食事から摂りすぎた余分な糖質が体内のタンパク質と結びつく「糖化」現象も深刻な問題です。コラーゲンはタンパク質の一種ですが、糖化するとAGEs(終末糖化産物)という悪玉物質に変質します。

糖化したコラーゲンは褐色になり、弾力を失って硬く脆くなります。これは肌の黄ぐすみ(カルボニル化)の原因となるだけでなく、代謝されにくいため真皮内に蓄積し、新しいコラーゲンの生成を阻害するゴミとなって残ります。

活性酸素による酸化ストレス

ストレス、喫煙、大気汚染、激しい運動などは体内で活性酸素を発生させます。活性酸素は細胞を錆びつかせる強力な酸化力を持ち、真皮の繊維組織を切断したり、炎症を引き起こしたりします。

更年期は自律神経の乱れからストレスを感じやすく、睡眠の質も低下しがちなため、体内での酸化ストレスレベルが高まりやすい時期でもあります。酸化は肌細胞の老化を早め、再生能力を奪う大きな要因です。

日常生活に潜む肌痩せリスクのチェック

  • 日焼け止めを塗るのは夏場や晴れた日だけで、冬や曇りの日は対策をしていない
  • 甘いお菓子や炭水化物を好んで食べ、野菜やタンパク質の摂取が不足している
  • 睡眠時間が不規則で、夜中に何度も目が覚めるなど質の良い睡眠がとれていない
  • ストレス解消のために喫煙習慣がある、または受動喫煙の環境にいる
  • 熱いお湯で顔を洗ったり、シャワーを直接顔に当てて洗顔したりしている
  • スマートフォンやパソコンを長時間使用し、姿勢が悪く顔が下を向いていることが多い

菲薄化した肌を立て直すスキンケア戦略

薄くなった肌をケアするためには単に油分で蓋をするだけでなく、真皮層に働きかけてコラーゲン産生を促す攻めの成分と、脆弱な角質層を徹底的に保護する守りのケアを同時に行う必要があります。

化粧品だけで失われた厚みを完全に戻すことは容易ではありませんが、有効成分を適切に届けることで、線維芽細胞を刺激し、密度を高めることは可能です。

肌への摩擦を極限まで減らしつつ、高機能な成分を取り入れることが重要です。

レチノールとナイアシンアミドの活用

ビタミンAの一種であるレチノールは、表皮のヒアルロン酸産生を促して厚みを増すと同時に、真皮のコラーゲン生成を促進する効果が認められている数少ない成分です。

菲薄化した肌には刺激が強すぎる場合があるため、濃度の低いものやパルミチン酸レチノールなどの穏やかな種類から始めることが大切です。

また、ナイアシンアミドは真皮のコラーゲン生成を助けるとともに、美白効果やセラミド合成促進効果も併せ持つため、更年期の複合的な悩みに適しています。

ペプチドと成長因子による細胞賦活

アミノ酸が結合したペプチド類や、EGF(上皮成長因子)、FGF(線維芽細胞成長因子)などの成長因子を含むスキンケア製品は、細胞に対して「働け」というシグナルを送る役割を果たします。老化した線維芽細胞に直接働きかけ、組織の修復と再生を促します。

これらの成分は肌本来が持っている再生能力をサポートするため、長期間使用することで肌の密度やハリ感の向上が期待できます。

摩擦レスな洗顔と重層的な保湿

どんなに良い成分を与えても、洗顔で肌を傷つけていては意味がありません。クレンジングや洗顔は、たっぷりの泡や厚みのあるジェルを使い、手が直接肌に触れないように行う「摩擦レス」を徹底します。

保湿に関しては、水分を与える化粧水、水分を抱え込むセラミド配合の美容液、そして水分の蒸発を防ぐクリームやバームを重ねる「重層保湿」が必要です。

特に薄い肌は水分保持力が弱いため、油分を含んだクリームでしっかり保護膜を作ることが重要です。

コラーゲン密度向上と保護に役立つ成分

成分名主な作用機序期待される効果
レチノール(ビタミンA)ターンオーバー促進、コラーゲン産生促進表皮の厚み回復、シワ改善、ハリ向上
ナイアシンアミドコラーゲン合成促進、メラニン抑制シワ改善、美白、バリア機能強化
ビタミンC誘導体コラーゲン合成の補酵素、抗酸化作用たるみ予防、毛穴引き締め、くすみ改善
ヒト型セラミド細胞間脂質の補充、ラメラ構造の修復バリア機能の正常化、保水力向上、敏感肌改善

内側から密度を高める栄養と生活習慣

肌は食べたものから作られるため、外からのケア以上に、食事や睡眠といったインナーケアが菲薄化対策には重要です。特に更年期は代謝が落ち、栄養の吸収率も変化するため、意識的に皮膚の材料となる栄養素を摂取する必要があります。

ホルモンバランスを整える食材や、コラーゲンの材料となるタンパク質を十分に摂り、質の高い睡眠によって成長ホルモンの分泌を促すことで、全身からの肌再生をバックアップします。

タンパク質と鉄分の積極的な摂取

コラーゲンの原料はタンパク質(アミノ酸)と鉄分、ビタミンCです。更年期の女性は、あっさりした食事を好む傾向があり、肉や魚などのタンパク質が不足しがちです。

体重1キログラムあたり1グラム以上のタンパク質を毎日摂取することが推奨されます。

また、鉄分はコラーゲン合成の酵素を働かせるために必要ですが、閉経前までの月経による欠乏が続いている場合も多いため、赤身の肉やレバー、小松菜などで意識的に補う必要があります。

大豆イソフラボンとエクオールの活用

エストロゲンに似た働きをする成分として有名なのが、大豆に含まれるイソフラボンです。イソフラボンは体内で「エクオール」という成分に変換されることで、より強いエストロゲン様作用を発揮します。

しかし、日本人女性の約半数は体内でエクオールを作れない体質だと言われています。大豆製品を積極的に食べるとともに、サプリメントなどでエクオールを直接摂取することも、更年期の肌痩せ対策として有効な選択肢の一つです。

成長ホルモンを味方につける睡眠の質

肌の修復と再生は、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって行われます。成長ホルモンは入眠直後の深い眠りの時に最も多く分泌されます。

更年期は不眠に悩まされやすい時期ですが、寝室の環境を整える、寝る前のスマホをやめる、入浴で体を温めるなどの工夫をして、最初の3時間を深く眠れるようにすることが大切です。

質の良い睡眠はストレスホルモンのコルチゾールを減らし、コラーゲンの分解を防ぐことにもつながります。

肌密度再生のために意識したい栄養素

栄養素働き多く含む食品
タンパク質皮膚、筋肉、内臓を作る主原料。コラーゲンの元肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
ビタミンCコラーゲン繊維を束ねて安定させる。抗酸化作用パプリカ、ブロッコリー、キウイ、柑橘類
ビタミンE血行促進、細胞膜の酸化を防ぐ。若返りのビタミンアーモンド、アボカド、カボチャ、うなぎ
オメガ3脂肪酸細胞膜を柔らかくし、炎症を抑える青魚(サバ、イワシ)、アマニ油、えごま油

よくある質問

薄くなった皮膚は元の厚さに戻るのでしょうか?

完全に若い頃と同じ厚みに戻すことは生理学的に難しい側面がありますが、適切なケアによって改善することは十分に可能です。表皮の厚みはターンオーバーの正常化やレチノール等の使用によって回復が見込めます。

真皮層に関しても、線維芽細胞を刺激しコラーゲン産生を促すことで密度の低下を食い止め、ある程度のハリを取り戻すことはできます。

諦めずに継続的なケアを行うことが大切です。

更年期が終われば肌の状態は安定しますか?

閉経後の数年間で急激な変化が起きますが、その後、肌の老化スピードはある程度緩やかになります。しかし、エストロゲンが低い状態は続くため、何もしなければ乾燥や菲薄化は進行します。

更年期を過ぎた後も減少したホルモン環境に合わせた保湿重視のケアと、紫外線対策を継続することが、70代、80代になっても健やかな肌を保つために必要です。

美容医療を受けるべきタイミングはありますか?

セルフケアでは限界を感じたり、たるみやシワが精神的なストレスになっている場合は、専門家の力を借りるのも良い選択です。

近年では熱エネルギーを使って真皮層のコラーゲン生成を強力に促す治療や、直接成分を注入する治療など、菲薄化に特化したアプローチも存在します。

皮膚科医に相談し、ご自身の肌状態とライフスタイルに合った方法を検討することをお勧めします。

ホルモン補充療法(HRT)は肌にも効果がありますか?

ホルモン補充療法は更年期障害の治療として行われますが、副次的な効果として皮膚のコラーゲン量を増やし、厚みや水分量を改善するという報告が多くあります。

ただし、HRTはあくまで全身の更年期症状に対する治療であり、美容目的のみで行われるものではありません。

また、体質によっては適用できない場合もあるため、婦人科の医師とよく相談し、メリットとリスクを理解した上で検討してください。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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