口角ボトックスでたるむ?口元のボトックスリスクと対処法

口角ボトックスでたるむ?口元のボトックスリスクと対処法

口角ボトックスは、口角を引き下げる筋肉「口角下制筋(DAO)」を弛緩させ、たれた口角を自然に引き上げる施術です。ただし注射部位や量を誤ると、たるみや笑顔の左右差という副作用が生じることがあります。

隣接する筋肉への意図しない影響や、過剰な注射量が主な原因となります。ほとんどの副作用は一時的で、ボトックスの効果が消えれば自然に回復しますが、施術前に十分な知識を持っておくことが安心です。

リスクを最小化するには、解剖学的知識のある医師のもとで施術を受け、術後に変化を感じたら早めに担当クリニックへ相談することが大切です。口角ボトックスへの正しい理解が、安全で満足のいく結果への第一歩となるでしょう。

目次

口角が下がってくるのはDAO筋の過緊張が原因です

加齢にともない口角が下がり、不機嫌そうな表情になってしまうのは、口角下制筋(DAO)の過緊張が大きく関係しています。DAOボトックスはこの筋肉に直接アプローチし、口角の位置を自然に引き上げます。

加齢で口角が下がる解剖学的なしくみ

口元の形は、複数の筋肉が引き合うバランスで保たれています。口角を上へ引き上げる大頬骨筋などに対し、口角下制筋(DAO)は口角を下方へ引き下げる役割を担っています。

東アジア人の場合、口角を構成する筋肉群の集合点「モディオラス」の位置が欧米人よりも外側・下方に位置することが多く、口角の下垂が目立ちやすい特徴があります。そのため、東アジア系の女性は中高年になるにつれて口元が老けて見える悩みを抱えやすい傾向があります。

加齢とともにDAOの活動が亢進(過度に活発化)すると、口角が常に下がった状態となり、マリオネットライン(口角から顎にかけて伸びるたるみ溝)の深化にもつながります。重力・脂肪コンパートメントの変化・骨の吸収といった因子も重なり、口元のたるみは年齢とともに進行します。

DAO筋にボトックスを打つと口角が上がる理由

ボトックス(ボツリヌス毒素A型)は、神経と筋肉をつなぐ伝達物質「アセチルコリン」の放出を一時的に遮断することで、筋肉の動きを抑えます。DAOに注入することで、口角を引き下げる力が弱まります。

その結果、口角を引き上げる大頬骨筋などが相対的に優位に働けるようになり、ボリュームの追加なしに口角が自然に上向きへ変化します。効果の発現には通常3〜7日程度かかります。

DAOはその内側の境界が口唇下制筋(DLI)と重なり、外側は笑筋・大頬骨筋・広頸筋などと隣接しています。この複雑な解剖学的構造が、注射の精度をいっそう重要にしています。

効果はどれくらい続くか?個人差を左右する要因

一般的な効果の持続期間は3〜6か月程度ですが、個人によって大きな差があります。筋肉の緊張度・代謝の速さ・注射量・使用製剤の種類などが持続期間に影響します。

効果が薄れるにつれて筋肉の活動は段階的に回復するため、維持したい場合は3〜4か月ごとのメンテナンス施術が一般的です。繰り返し施術することで筋肉が徐々に萎縮し、持続期間が延びるケースもあります。

口角ボトックスの効果の目安

項目目安
効果発現注射後3〜7日
最大効果注射後2週間前後
持続期間3〜6か月(個人差あり)
メンテナンス間隔3〜4か月ごと

口角ボトックスでたるみが生じる本当の原因

「施術を受けたら口元が下がってしまった」という経験を持つ方は少なくありません。その多くは、注射が目標の口角下制筋(DAO)以外に影響してしまったことが原因です。

隣接する口唇下制筋に毒素が広がると何が起きるか

DAOの内側の境界は口唇下制筋(DLI)と重なり合っており、注射位置がわずかでも内側へずれると、DLIに毒素が波及することがあります。DLIは下唇を動かす重要な筋肉で、影響を受けると下唇の動きが制限されます。

具体的には、笑ったときの左右非対称や下唇を動かしにくい感覚などが生じます。施術後数日で気づくことが多く、特に発声・演奏・俳優業など、細かい唇の動きが求められる職業の方には大きな影響を与えることがあります。

これらの症状はほとんどの場合、ボトックスの効果が消えれば自然に回復します。ただし回復までの期間(通常1〜3か月)は不便を強いられることもあるため、事前の把握が重要です。

注射量・部位のわずかなずれが副作用を生む

ボトックスは注射後、周囲の組織へ拡散する性質があります。注射部位から1〜2mm外れるだけでも、意図しない筋肉に影響する可能性があります。過剰な注射量も拡散範囲を広げ、副作用リスクを高めます。

安全な投与量の目安は片側あたり2〜4単位で、DAOの上半分を狙って注射することが合併症予防の観点から重要とされています。注射の深さにも注意が必要で、浅すぎても深すぎても効果や副作用に影響します。

口角ボトックスの主な副作用と原因

副作用主な原因
たるみ・口元の垂れ下がり口唇下制筋への毒素拡散
笑顔の左右非対称注射量・位置の左右差
下唇の動きの制限口輪筋・DLIへの影響
内出血・腫れ注射針による組織損傷
表情の硬さ過剰な量・広範囲への拡散

皮膚のたるみが進んでいる人が注意すべきリスク

皮膚のたるみや組織の下垂がすでに進んでいる場合、DAOへのボトックス注射だけでは口元の印象が十分には改善されないことがあります。場合によっては、口元の支えが弱まったように感じることもあります。

こうした場合、たるみの原因が「筋肉の緊張」ではなく「組織の脱落」や「骨格の変化」にある可能性が高く、ヒアルロン酸フィラーとの組み合わせや他の施術を検討するほうが適切です。カウンセリングで担当医師に詳しく評価してもらいましょう。

DAOボトックス後に起こりやすい3つの副作用

DAOボトックス後の副作用は、「表情への影響」「機能的な問題」「局所反応」の3つに大きく分けられます。いずれもほとんどは一時的ですが、施術前に把握しておくことが安心につながります。

笑顔の左右非対称とスマイルの崩れ

ボトックスが左右で均等に効かなかった場合、または筋肉の発達に左右差がある場合、片側の口角だけが下がって見えたり、笑ったときに口の動きに差が出たりします。

左右非対称はまれではあるものの、解剖学的ランドマークの十分な理解と注射部位の慎重な設定によって回避できます。多くの場合、効果が消えれば自然に元の状態へ戻ります。

唇・発音・嚥下への影響

注射が意図せずDLIや口輪筋に及ぶと、唇を動かす力が弱まり、特定の音の発音がしにくくなったり、ストローを使う・笛を吹くなど唇に力を入れる動作が難しくなることがあります。日常会話への支障は少ないですが、職業上の影響が懸念される方は施術前の十分な検討が必要です。

飲み込みに関わる筋肉に影響が及ぶケースは非常にまれですが、むせやすさを感じることがあります。俳優・声楽家・アナウンサーなど発音や表情に精度を求める職業の方は、担当医師と詳しく話し合ってから施術を決断してください。

内出血・腫れ・口元のこわばり

注射施術に共通して起こりうる局所反応として、内出血・腫れ・一時的なこわばりがあります。口元は血管が豊富なため、他の部位より内出血が生じやすい傾向があります。

いずれも通常、数日から1週間程度で自然に治まります。施術直後は飲酒・激しい運動・熱い入浴を避けることで、腫れや内出血を軽減できます。

副作用が出たときの確認事項

  • 内出血:施術直後はコールドパックで冷却。数日で自然に改善します
  • 腫れ:施術後24時間は飲酒・激しい運動・入浴を控える
  • 笑顔の非対称・たるみ:自己判断せず、施術を受けたクリニックに連絡する
  • 唇の動きの違和感:効果が消えるまで経過観察が基本です

口角ボトックスでリスクを最小にするクリニックの選び方

クリニック選びを「どこでも同じ」と考えるのは危険です。口元への注射は技術と解剖学的知識が直接リスクを左右するため、施術者の選定が結果を大きく変えます。

解剖学的知識のある医師を選ぶポイント

DAOボトックスは一見シンプルに見えますが、口元の解剖学は複数の筋肉が重層的に存在する複雑な構造で、注射の深さ・量・位置がわずかに違うだけで結果が変わります。下顔面への施術経験が豊富であることが、信頼できる医師の基準の一つです。

クリニックのウェブサイトに「解剖学的根拠に基づく施術」「個人差に応じた用量設定」「施術後フォローアップ体制」などの記載があるかを確認しましょう。施術前の詳細な説明や写真撮影の実施も、丁寧なカウンセリングを示す重要な指標です。

カウンセリングで確認しておきたいこと

初回のカウンセリングでは、使用する製剤・注射量・注射箇所について具体的な説明を受けましょう。副作用が起きた場合の連絡先や対応フロー、再診体制についても確認しておくと安心です。

「たるみや非対称が出たらどのように対処するか」という質問への医師の反応は、技術と誠実さを測る手がかりになります。疑問点は遠慮なく尋ね、納得のいく説明を受けてから施術の判断をしましょう。

施術を受けるべきではないケースと事前チェック

口角ボトックスの適応外となるケースとして、妊娠中・授乳中の方、筋無力症などの神経筋疾患がある方、ボツリヌス毒素成分へのアレルギーがある方が挙げられます。注射部位に感染・炎症がある場合も施術を受けられません。

抗凝固薬や血液をさらさらにする薬を服用中の方は、内出血のリスクが高まるため医師への申告が必要です。口元に強いたるみや組織の下垂がある場合は、ボトックス単独よりフィラーとの組み合わせが適切なこともあります。

施術前の確認リスト

  • 過去のボトックスや美容施術の経験と結果
  • 服用中の薬(特に血液凝固に影響する薬)とサプリメント
  • アレルギー(食物・薬剤)の有無
  • 妊娠・授乳中かどうか
  • 期待する効果と、現実的に達成できる範囲の認識

口角ボトックスでたるんでしまったときの対処法

副作用によるたるみのほとんどは、施術後3〜6か月で自然に回復します。対処法はたるみの程度によって異なるため、状況に応じた判断が求められます。

たるみ・変化の程度対処法の目安
軽度(なんとなく気になる程度)経過観察(2〜4週間)
中等度(日常生活で違和感あり)クリニックへ相談・フォローアップ
重度(発音・食事・笑顔に支障)早急にクリニックへ連絡

自然回復を待つ間の経過と目安の期間

ボトックスの効果は時間の経過とともに自然に薄れ、筋肉の活動が回復するにつれてたるみや非対称も改善されていきます。通常、施術後3〜4か月ほどで大きく回復する方が多いですが、6か月以上かかるケースもあります。

経過観察中は、毎日同じ表情・同じ角度で写真を撮って変化を記録しておくことをお勧めします。改善が見られない場合や急速に悪化する場合は、早めにクリニックへ連絡してください。

ヒアルロン酸フィラーと組み合わせて輪郭を補正する方法

たるみの程度が強く、経過観察だけでは不十分と判断される場合、ヒアルロン酸フィラーによる輪郭補正が選択肢の一つになります。フィラーはマリオネットラインや口元の陥凹を体積で補い、下がった口角の印象を改善する効果があります。

ボトックスとヒアルロン酸フィラーを組み合わせることで、いずれか単独よりも優れた仕上がりが得られるとされています。ただし、フィラーの追加注射は施術の難易度が上がるため、専門医による慎重な評価が前提となります。

施術後に気になる変化を感じたら早めにクリニックへ

施術後に「口元が思ったより下がった」「笑いにくくなった」「片側だけ動きがおかしい」などの変化を感じたら、自己判断で放置せず、施術を受けたクリニックへ連絡することが大切です。

早期に相談するほど対処の選択肢が広がります。インターネットの情報だけを頼りに自分で処置しようとするのは避け、医師との連携を最優先にしてください。症状が重い場合は、別のクリニックへのセカンドオピニオンも有効な選択肢です。

マリオネットライン対策に有効な口角ボトックスとフィラーの組み合わせ治療

口元のたるみやマリオネットラインの悩みがある場合、DAOボトックス単独よりもヒアルロン酸フィラーとの組み合わせ治療のほうが、より包括的な改善効果を得られます。

組み合わせ治療がマリオネットラインに効果的な理由

マリオネットラインは、筋肉の緊張・脂肪の下垂・骨の吸収・皮膚の弾力低下など複合的な要因で深くなる多因性のたるみです。ボトックスだけでは口角を引き下げる筋肉の力を弱めるにとどまり、組織の下垂やボリューム不足への対応は難しいといえます。

フィラーとボトックスを組み合わせると、「筋肉の緊張を緩和(ボトックス)」と「失われた体積の補填(フィラー)」を同時に達成でき、単独治療よりも自然で長続きする仕上がりが期待できます。

ボトックス単独 vs 組み合わせ治療の比較

比較項目ボトックス単独ボトックス+フィラー
対応できる悩み筋肉の緊張のみ筋肉緩和+ボリューム補填
マリオネットラインへの効果限定的より包括的
効果の持続目安3〜6か月フィラーで12〜18か月
副作用リスク比較的低い両施術のリスクが重なる

ボトックスとフィラーを使う順序とタイミング

一般的な順序として、まずボトックスを注射し、筋肉の緊張が緩んだ2〜4週間後にフィラーを追加する方法があります。筋肉が弛緩した状態でフィラーを注入すると、均一に定着しやすくなります。

同日に両方の施術を行うケースもありますが、副作用の把握や対応が複雑になります。施術経験の豊富な医師のもとで慎重に判断し、施術の設計は個人の顔の特徴に合わせてカスタマイズすることが大切です。

組み合わせ治療を選ぶ際の注意点

組み合わせ治療はより高い技術と知識が求められるため、単独施術以上に施術者の選定が重要です。下顔面はフェイスライン・あご・唇に影響するため、一つのアプローチが他の部位に変化をもたらすこともあります。

施術前に全顔のバランスを評価し、目指す仕上がりについて具体的に医師と話し合うことが、後悔のない結果につながります。フィラーとボトックスそれぞれのリスクを事前に把握し、施術後の対応フローも確認しておきましょう。

よくある質問

口角ボトックスを受けるとたるみが必ず出るのですか?

口角ボトックスを受けても、必ずたるみが生じるわけではありません。たるみが起こる主な原因は、注射が標的の口角下制筋(DAO)以外に拡散した場合です。適切な部位と量での施術であれば、口角が自然に引き上がり、たるみが目立ちにくくなる方も多くいます。

施術前からたるみが強い方は、ボトックス単独ではなくフィラーとの組み合わせを検討するケースもあるため、カウンセリングで担当医師に詳しく確認してください。

DAOボトックスを受けると笑顔がおかしくなりますか?

注射が隣接する筋肉に及んだ場合、笑顔の左右差や口の動きに一時的な変化が生じることがあります。正確な部位への注射と適切な用量管理によって、このリスクは大幅に低減できます。

万が一変化が生じても、ボトックスの効果は一時的であり、3〜6か月で自然に回復するケースがほとんどです。変化を感じたら、施術を受けたクリニックへ早めにご相談ください。

口角ボトックスの効果が切れたらたるみはもとに戻りますか?

副作用としてたるみが生じた場合、その多くはボトックスの効果が切れる3〜6か月で自然に回復します。ボトックスは筋肉を永続的に変化させるものではないため、効果消退とともに筋肉の動きは元に戻ります。

ただし、施術前から皮膚のたるみや組織の下垂が進んでいた場合は、そのたるみが消えるわけではありません。施術前後の比較がしやすいよう、施術前に写真を残しておくとよいでしょう。

口元のボトックスとヒアルロン酸フィラー、どちらが向いていますか?

口角ボトックスは、口角下制筋(DAO)の過緊張による口角下垂に最も効果的です。一方、マリオネットラインや皮膚のたるみ・ボリューム不足が主な悩みであれば、ヒアルロン酸フィラーのほうが向いていることがあります。

多くのケースでは両方を組み合わせることで、より包括的な改善が期待できます。どちらが向いているかはたるみの原因・程度・顔の特徴によって異なるため、専門医によるカウンセリングでの評価が大切です。

口角ボトックスを受けてはいけない人はいますか?

口角ボトックスの適応外となるケースがあります。妊娠中・授乳中の方、筋無力症などの神経筋疾患のある方、ボツリヌス毒素成分へのアレルギーがある方は施術を受けられません。注射部位に感染や炎症がある場合も対象外です。

抗凝固薬など血液をさらさらにする薬を服用中の方は、内出血のリスクが高まるため医師への申告が必要です。口元に強いたるみや組織の下垂がある場合は、ボトックス単独より他の治療との組み合わせが適切なこともあります。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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