ヒアルロン酸の種類と選び方|目の下に適した製剤(ジュビダーム等)
目の下のクマの多くは、眼窩下縁に沿った凹みが影を作ることで生じます。ヒアルロン酸注入はその凹みを直接補填できるため、クマ治療の選択肢として注目を集めています。
市場にはジュビダームボルベラXC、レスチレンアイライト、テオシアルリデンシティ2など複数の製剤があります。それぞれ架橋技術・粘弾性・持続期間が異なり、適切な選択が仕上がりを左右します。
目の下は皮膚が薄く繊細な部位です。柔らかく組織になじむ製剤の選択と、解剖学的知識を持つ医師の技術が、自然な仕上がりと安全性を大きく左右します。
目の下のクマにヒアルロン酸注入が向く理由
目の下のクマの主な原因は「凹み」です。ヒアルロン酸注入はその凹みを直接補填できるため、多くのケースで有効な選択肢となります。
目の下の凹み(ティアトラフ)がクマを作る
眼窩(目の玉が収まる骨のくぼみ)の下縁から頬にかけてできる影溝を「ティアトラフ」または「涙溝」と呼びます。加齢とともに眼窩隔膜が弛緩し、眼窩下脂肪が前方に押し出されます。その結果、ティアトラフ部分が相対的に凹んで見え、影が生じます。
この凹みを「クマ」と感じる方が多いですが、実態は色素沈着ではなく「立体的な段差」による陰影です。外用クリームが効きにくい理由もここにあります。
ヒアルロン酸が凹みを補う仕組み
ヒアルロン酸は体内の結合組織に存在する水分保持成分です。架橋処理でゲル化したものを注入すると、凹み部分の組織ボリュームを物理的に補い、段差をなだらかにします。
注入は細い針またはカニューラを使い、目的の層に少量ずつ丁寧に行います。外科的に皮膚を切開する必要がないため、手術への抵抗感がある方でも取り組みやすい治療です。
ダウンタイムが短い注入治療が選ばれる背景
目の下の治療には眼瞼形成術などの外科的アプローチもありますが、回復期間の長さを敬遠する方もいます。注入治療のダウンタイムはおおむね1〜2週間(腫れや青あざが落ち着くまで)と比較的短く、多忙な方にも選びやすい選択肢です。
ヒアルロン酸は可逆性のある成分です。分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を注射することで溶解できるため、効果に満足できない場合や副作用が生じた場合でも修正対応できます。この点が注入治療への信頼感につながっています。
ヒアルロン酸の種類を左右する2つの製剤特性
架橋度とG’値(粘弾性)の2つが、ヒアルロン酸製剤の種類と性質を決める核心です。この2点を理解すると、なぜ製剤によって目の下への向き不向きがあるのかが分かります。
架橋度(クロスリンク)が硬さと持続性を決める
天然のヒアルロン酸は体内で数日以内に分解されます。そこでBDDE(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)などの架橋剤を使って分子間に橋を架け、安定したゲルを製造します。架橋度が高いほど製剤は硬くなり、持続期間も長くなる傾向があります。
目の下は眼輪筋の動きが活発で皮膚も薄い部位です。硬すぎる製剤を使うと自然な動きに追従できず、不自然な感触として現れることがあります。架橋度が適切に設計された製剤を選ぶことが、自然な仕上がりに直結します。
粘弾性(G’値)と注入部位の深さの関係
G’(弾性率)は製剤が変形後に元の形に戻ろうとする力の強さを表します。G’が高い製剤はリフトアップ力があり持続性も高い反面、組織への馴染みが悪くなりやすい傾向があります。G’が低い製剤は柔らかく広がりやすいですが、ボリューム維持力はやや低めです。
目の下の骨膜上への注入では、G’値が低めの製剤が組織内に均一に広がり、表面から凹凸が見えにくくなります。注入層とG’値の組み合わせが、目の下での仕上がりを左右します。
目の下に適した製剤が備える3つの条件
目の下への製剤選びには3つの条件が求められます。第一に柔らかく組織に馴染む(低〜中程度のG’値)こと、第二に光散乱が起きにくい(チンダル現象回避)こと、第三に適切な持続期間(6〜12ヶ月程度)を持つことです。各メーカーはこれらの条件を満たすために架橋技術と濃度を工夫しています。
目の下向け主要HA製剤の特性比較
| 製剤名 | 架橋技術 | 目の下への持続期間の目安 |
|---|---|---|
| ジュビダームボルベラXC | VYCROSS(低G’) | 6〜12ヶ月 |
| レスチレンアイライト | NASHA / OBT | 6〜12ヶ月 |
| テオシアルリデンシティ2 | セミ架橋BDDE | 6〜9ヶ月 |
| ベロテロバランス(+) | CPM | 6〜9ヶ月 |
ジュビダームボルベラXCが目の下のクマ取りに選ばれる理由
FDAが目の下の凹み(インフラオービタルホロウ)への使用を承認した製剤がジュビダームボルベラXCです。VYCROSS技術による均一なゲルが繊細な部位での扱いやすさを生み出しています。
VYCROSSテクノロジーが生み出す均一ゲルの特性
VYCROSSとは、低分子量と高分子量のヒアルロン酸を一定比率で組み合わせて架橋する独自技術です。この製法によりゲルが均質かつ均一に製造され、注入後も組織内で均等に分散する特性が生まれます。
弾性率(G’)が約160Pa前後という低めの設定が、柔らかいゲルとして目の下の動きに追従しながら形状を維持する性質をもたらします。水分の過剰な取り込みを抑える設計が、注入後の腫れをおさまりやすくするとされています。
ボルベラXCの製品特性と目の下への適合
ジュビダームボルベラXCのヒアルロン酸濃度は15mg/mLです。VYCROSSにより緊密に架橋された均一なゲルが、注入後に組織内で偏ることなく広がり、なめらかなボリューム補填を実現します。
2021年の多施設ランダム化比較試験では、目の下の凹みに対する3ヶ月後の評価者判定改善率が施術群で有意に高く、12ヶ月時点でもボリューム維持が確認されました。この臨床データがFDA承認の根拠のひとつとなっています。
ジュビダームシリーズの主な製品ライン比較
| 製品名 | HA濃度 | 主な特性と適応部位 |
|---|---|---|
| ボルベラXC | 15mg/mL | 低G’・均質ゲル・目の下の凹み・口唇・口周り |
| ボルマXC | 20mg/mL | 高G’・リフト力・頬のボリューム補填 |
| 中濃度製剤タイプ | 17〜18mg/mL | 中G’・ほうれい線・中程度のシワへの対応 |
リドカイン配合が痛みを抑える
「XC」はリドカイン(0.3w/w%)が配合されていることを示します。注入と同時に麻酔成分が広がるため、製剤単体の場合と比べて施術中の不快感が和らぎます。
目の下は刺激に対して敏感な部位です。リドカイン配合は施術中の緊張感を下げ、医師が丁寧に注入するための環境を整えるうえでも役立ちます。
FDAおよび日本での承認状況と安全性データ
ジュビダームボルベラXCは2016年にFDAが口唇・口周りの治療について承認し、その後目の下の凹みへの適応が追加されました。日本でも薬事規制に沿った使用のもと、審美医療クリニックで広く提供されています。
複数の多施設試験で安全性データが蓄積されており、主な有害事象は注射部位の一時的な腫れ・あざ・発赤などです。重篤な有害事象の発生率は非常に低く、適切な技術と環境のもとでの施術が安全性を高めます。
レスチレン・テオシアル・ベロテロ、目の下のクマ取りに使われる主要HA製剤の特性
目の下のクマ取りに使われるヒアルロン酸製剤は、ジュビダームだけではありません。レスチレン、テオシアル、ベロテロも代表的な製剤として広く使われており、それぞれに特性と強みがあります。
| 製剤名 | 製造技術 | 目の下での主な特徴 |
|---|---|---|
| レスチレンアイライト | NASHA / OBT(ガルデルマ) | 安定した粒子・FDA承認・持続性 |
| テオシアルリデンシティ2 | セミ架橋BDDE(テオサン) | 低粘度・チンダル低リスク・10年超実績 |
| ベロテロバランス(+) | CPM(メルツ) | 均質拡散・薄い皮膚に馴染む |
レスチレンアイライトとOBT技術の特性
レスチレン(ガルデルマ社)はNASHA(非動物由来HA安定化技術)で製造された長年の使用実績を持つ製品群です。目の下向けに開発されたレスチレンアイライトは独自のOBT架橋技術を採用し、凹みを補填しながら自然な見た目を目指した設計です。
2024年の多施設ランダム化比較試験では、目の下の中等度〜重度の凹みに対して有意な改善が示されました。主な副作用は注射部位反応にとどまり、チンダル現象の発生率も低いことが報告されています。
テオシアルリデンシティ2の設計と実績
テオシアルピュアセンス・リデンシティ2(テオサン社)は目の下の治療のために設計されたセミ架橋型HA製剤です。粘度が低く組織への拡散性に優れており、薄い皮膚の下でもチンダル現象が出にくいとされています。
10年超の使用実績があり、実臨床データが豊富な製剤のひとつです。実臨床研究によると施術3ヶ月後の改善達成率は70%を超え、改善効果は12ヶ月後まで観察されています。
ベロテロバランスの特性と薄い皮膚への馴染み
ベロテロバランス(+)はCPM(凝集多密度マトリックス)技術で製造される均質なゲルです。ゲルが組織内で薄く均一に広がる性質があり、薄い皮膚への注入で変色が出にくい点が高く評価されています。
2024年のランダム化対照試験では目の下への使用で有効性と安全性が示されました。リドカイン配合タイプも存在し、注入時の痛みを和らげる工夫がされています。
目の下のヒアルロン酸注入で起きうるリスクと失敗を防ぐポイント
製剤と技術を適切に選ぶことで、目の下注入の主なリスクは大幅に軽減できます。それでも施術前に主なリスクを理解しておくことは、クリニック選びと施術後の対応に役立ちます。
チンダル現象が起きる仕組みと防ぎ方
チンダル現象とは、皮膚の浅い層に置かれたヒアルロン酸ゲルが光を散乱させ、皮膚の表面から青みがかった変色として見える現象です。ゲルが太陽光や室内光の短波長成分を散乱させることで、透明なゲルが青みを帯びて見えます。
目の下は皮膚が薄いため、浅い層に製剤が置かれると変色が視認されやすい部位です。予防には製剤を深い層(骨膜上)に注入し、G’値が低く光散乱の少ない製剤を選ぶことが大切です。
目の下周辺の血管塞栓リスクと予防
目の下・涙溝周辺には眼窩下動脈・角動脈・上滑車動脈などが走行しています。注入時に製剤が誤って血管内に入ると血管塞栓を引き起こし、皮膚壊死や、まれに視力障害につながる可能性があります。
血管塞栓は非常にまれな合併症ですが、起きた場合の影響は深刻です。高い解剖学的知識を持つ医師が、逆流確認・少量ずつの注入・カニューラの活用などの安全対策を徹底することが重要です。
血管塞栓リスクを下げるための注意点
- 十分な解剖学的知識を持つ医師が施術する
- 眼窩下動脈・角動脈などの危険ゾーンを把握・回避する
- 注射前に逆引き(アスピレーション)を行う
- 少量・低速・小容量シリンジで注入する
- 細径カニューラを状況に応じて活用する
- 施設内にヒアルロニダーゼを常備する
ヒアルロニダーゼ(分解酵素)で修正できる
ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を注射することで、注入したゲルを数日以内に溶解し、注入前の状態に近づけることができます。チンダル現象や形状の歪みが生じた場合、あるいは注入量の調整が必要な場合に有効な手段です。
「溶かすことができる」という可逆性は、ヒアルロン酸注入がほかのフィラーと比べて安全性の面で評価される大きな理由のひとつです。施術後に何か気になることがあれば、早めに担当医師に相談することをおすすめします。
目の下のヒアルロン酸注入の効果と持続期間
効果の持続期間は製剤の種類と個人の代謝によって変わります。目の下への注入ではおおむね6〜12ヶ月が目安とされており、定期的なメンテナンスで自然な状態を長期的にキープできます。
製剤別にみる持続期間の目安
架橋度が高い製剤ほど持続期間は長くなる傾向がありますが、目の下のような可動部では組織の動きで分解が早まることもあります。注入量・注入層の深さによっても変わるため、施術後の経過を担当医師と定期的に確認することが大切です。
製剤別の目の下への持続期間の目安
| 製剤名 | 持続期間の目安 | 特記事項 |
|---|---|---|
| ジュビダームボルベラXC | 6〜12ヶ月 | 複数のRCTで12ヶ月の効果維持を確認 |
| レスチレンアイライト | 6〜12ヶ月 | RCTで12ヶ月追跡データあり |
| テオシアルリデンシティ2 | 6〜9ヶ月 | 10年超の実臨床データが豊富 |
| ベロテロバランス(+) | 6〜9ヶ月 | 比較的柔らかく代謝が早まりやすい |
ジュビダームボルベラXCを使った複数の臨床試験では、12ヶ月後の追跡調査でも効果が維持されている割合が高いことが報告されています。ただしこれはあくまで試験集団の傾向であり、個人差が大きいことをご理解ください。
持続に影響する個人差の要因
同じ製剤を使っても、個人の代謝速度によって持続期間に差が出ます。代謝が活発な若い方や運動量の多い方は分解が早い傾向があります。紫外線を多く浴びる生活や喫煙習慣も、ヒアルロン酸の分解を促進させる可能性があります。
皮膚の厚さや過去の注入歴、免疫系の状態も影響するとされています。初めて注入する方は少量から様子を見ながら調整することが、長期的な満足度を高めるコツです。
持続期間に影響する主な個人差要因
- 年齢と基礎代謝速度(若い方は代謝が速い傾向)
- 運動量・日常的な身体活動レベルの高さ
- 日常的な紫外線暴露の多さ
- 喫煙習慣の有無
- 皮膚の厚さと過去の注入歴
追加注入のタイミングとメンテナンスのすすめ
追加注入のタイミングは、個々人の代謝速度や生活スタイルによって変わります。施術後6〜9ヶ月を目安に医師に状態を確認してもらうことが、効果を自然に維持するうえで合理的です。再注入は初回より少ない量で済むことも多いです。
「完全に消えてから補う」よりも「少し薄れてきたタイミングで少量追加する」ほうが、仕上がりが自然なまま長期的に維持しやすいとされています。定期的なメンテナンスを続けることで、総注入量を抑えながら安定した状態を保てる場合もあります。
よくある質問
- 目の下のクマにヒアルロン酸注入が効果的なのはどのような状態ですか?
-
主に「影グマ(黒クマ)」と呼ばれる、目の下の凹みが影を作ることで生じるタイプのクマに有効です。眼窩下脂肪の前方突出や、ティアトラフ靭帯の弛緩によって凹みが深くなっているケースに特に適しています。
一方、茶グマ(メラニン色素の沈着によるもの)や青グマ(透けて見える眼輪筋・血管によるもの)にはヒアルロン酸注入の効果が限定的なことも多く、レーザー治療や外科的なアプローチとの組み合わせが検討されます。カウンセリングで自分のクマの種類を確認してから治療法を選ぶことが大切です。
- ジュビダームボルベラXCの持続期間はどのくらいですか?
-
個人差はありますが、目の下の凹みへの注入では概ね6〜12ヶ月程度の効果持続が期待されます。複数の臨床試験で1年後の追跡調査においても改善の維持が報告されています。
代謝が活発な方や紫外線を多く浴びる環境にいる方は分解が早まることがあります。施術後6〜9ヶ月を目安に担当医師に状態を確認してもらい、追加注入のタイミングを相談するとよいでしょう。
- ヒアルロン酸注入後にチンダル現象が起きた場合はどうすればよいですか?
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チンダル現象とは、皮膚の浅い層に注入されたヒアルロン酸ゲルが光を散乱させ、皮膚表面から青みがかった変色として見える現象です。目の下の皮膚は特に薄いため、浅い注入で起きやすい部位のひとつです。
最も有効な対処法は、ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)の局所注射です。ゲルを溶かすことで変色が数日以内に改善することが多く、不安があればすぐに施術を受けたクリニックに相談することをおすすめします。
- レスチレンとジュビダームでは、目の下にはどちらが向いていますか?
-
どちらも目の下への注入に用いられる代表的な製剤であり、一方が圧倒的に優れているとは言えません。レスチレンアイライトはNASHA・OBT技術による安定したゲルが特徴で、均一な粒子サイズによる自然な仕上がりが評価されています。
ジュビダームボルベラXCはVYCROSS技術による均質でなめらかなゲルが特徴です。最終的には架橋技術の違いによる特性、医師の経験と技術、そして治療を受ける方の凹みの深さ・皮膚の厚さによって適切な製剤が決まります。担当医師が状態を確認したうえで最も向いた製剤を選択します。
- ヒアルロン酸製剤の種類は、患者が選ぶことができますか?
-
製剤の種類は最終的には医師が判断しますが、「どの製剤を使うのか」「その理由は何か」を医師に確認することは大切です。「他の選択肢は何か」「それぞれの費用や特性の違いは何か」を事前に把握すると、治療への理解と納得感が高まります。
クリニックによっては複数の製剤を在庫しており、相談のなかで候補を絞ることもあります。製剤ごとの特性・リスク・費用を比較検討したうえで医師と話し合うと、より満足のいく選択につながります。
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