目の下の「くぼみ」と「膨らみ」の違い|脂肪の減少と突出による黒クマのタイプ診断

目の下のクマに悩む多くの方が、自身の症状が「脂肪の膨らみ」によるものなのか、それとも「加齢によるくぼみ」によるものなのか判断できずにいます。

実は、黒クマと呼ばれる症状の正体は、この「突出」と「凹み」が複雑に絡み合ってできる「影」です。鏡を見ただけでは区別がつきにくいこの二つの要因を正しく理解することは、適切なケアを選択する上で極めて重要です。

本記事では眼窩脂肪の突出と皮膚のたるみ、そして骨格的なくぼみの違いを明確にし、あなたがどのタイプに当てはまるのかを論理的に紐解きます。

正しい自己診断が、明るい目元を取り戻すための第一歩となります。

目次

黒クマの正体は影である|色素沈着や血行不良との決定的な違い

黒クマの本質は皮膚の色そのものが変化しているのではなく、目の下の形状が生み出す「影」が原因で黒く見えているという点にあります。

青クマや茶クマとは異なり、皮膚を引っ張ったり上を向いたりすると色が薄くなるのが最大の特徴です。

物理的な凹凸が原因であるため、メイクやコンシーラーでは隠しきれないことが多く、根本的な解決には形状を平らにするアプローチが必要です。

鏡を見上げて消えるなら黒クマの可能性が高い

ご自身のクマが黒クマかどうかを判断する最も確実な方法は、光と影の関係性を利用することです。手鏡を持ち、顔を正面に向けた状態では目の下に濃い影ができているはずです。

そのまま手鏡を顔の正面より高い位置に持ち上げ、天井を見るように顔を上に向けます。この時、目の下のクマが薄くなったり消えたりする場合は、高い確率で黒クマと診断できます。

なぜこのような変化が起きるのか詳しく解説します。

顔を上に向けると、天井の照明が目の下の凹凸に対して正面から当たることになります。これにより、膨らみの下にできていた影が光で飛ばされ、目立たなくなるのです。

一方で、皮膚自体に色がついている茶クマや、血管が透けている青クマの場合、顔の角度を変えても色の濃さはほとんど変わりません。

この光による見え方の変化こそが、黒クマが「形状による影」であることの証明となります。

コンシーラーで隠せない凹凸による陰影

メイクをしているにもかかわらず、目の下の暗さが消えないと悩む方は非常に多いです。これは、化粧品が「色」を補正するものであり、「形」を変えるものではないためです。

黒クマは目の下に段差があることで生じる影ですから、いくら明るい色のコンシーラーを塗っても、横や上から光が当たれば再び影が落ちてしまいます。

むしろ、厚塗りをすることでかえって凹凸が強調され、シワに入り込んで崩れやすくなるという悪循環に陥ることもあります。

ファンデーションやコンシーラーを塗った直後は綺麗に見えても、少し顔を動かしたり、照明の暗い場所に行ったりすると急に疲れ顔に見えてしまうのは、この物理的な段差が解消されていないことが原因です。

黒クマの攻略には色味の調整ではなく、凹凸をなだらかにする視点が必要です。

目の下の構造が作り出す物理的な段差

目の下の皮膚の下には、眼球を守るための脂肪や筋肉、そして骨が存在します。これらの組織のバランスが崩れることで、表面に凹凸が現れます。

具体的には、眼球を支えるロックウッド靭帯などの支持組織が緩み、支えきれなくなった眼窩脂肪が前方に押し出されます。これが「膨らみ」となります。

一方で、その膨らみのすぐ下にある頬の皮膚や筋肉との境界線には、靭帯による食い込みが生じます。この「膨らみ」と「食い込み(くぼみ)」の境界線が段差となり、深い影を作り出します。

つまり、黒クマは単一の症状ではなく、高い部分と低い部分が隣り合わせになることでコントラストが生まれ、より強調されて見えている状態なのです。

各クマの種類の特性と見分け方

クマの種類主な原因見分け方の特徴
黒クマ(影クマ)皮膚のたるみ、脂肪の突出、くぼみ上を向くと薄くなる。メイクで隠しにくい。
青クマ血行不良、皮膚が薄い、眼精疲労皮膚を引っ張ると薄くなる。日によって変動する。
茶クマ色素沈着、摩擦、メイク残り皮膚を引っ張ると皮膚と一緒に移動する。常に同じ色。

目の下の膨らみ|眼窩脂肪の突出が引き起こす影の発生原理

目の下がぽっこりと膨らんでしまう主な原因は、眼球を包んでいる眼窩脂肪が前方に突出してくることにあります。

これは単に脂肪の量が増えたわけではなく、眼球を支える内部構造のバランスが変化し、本来あるべき位置に脂肪を留めておけなくなることで発生します。

重力の影響を受け、年齢とともに徐々に目立つようになるのが一般的です。

眼球を支えるロックウッド靭帯のゆるみ

眼球は眼窩という骨のくぼみの中に収まっていますが、宙に浮いているわけではありません。いくつかの靭帯によってハンモックのように支えられています。

その中でも特に重要な役割を果たしているのが「ロックウッド靭帯」です。この靭帯は眼球の下側でしっかりと眼球の重みを支える役割を担っています。

しかし、加齢や目を酷使する生活習慣によって、このロックウッド靭帯は徐々に緩んでいきます。ハンモックが伸びてしまうと、乗っている物体(眼球)が下がってくるのと同じように、眼球の位置もわずかに下がります。

眼球が下がると、その下にある眼窩脂肪が圧迫され、行き場を失った脂肪は圧力の逃げ場を求めて前方へと押し出されます。これが、目の下の膨らみが発生する根本的な力学的要因です。

眼輪筋の衰えによる脂肪の圧迫

眼窩脂肪の前には、まばたきをするための筋肉である「眼輪筋」が存在し、壁のような役割を果たして脂肪の突出を防いでいます。

若い頃は眼輪筋にハリがあり、しっかりと脂肪を抑え込んでいるため、目の下は平らで滑らかな状態を保てます。しかし、表情筋を使わない生活や加齢によって眼輪筋が衰えると、この壁が薄く弱くなってしまいます。

内側から押し出そうとする眼窩脂肪の圧力に対し、外側から抑え込む眼輪筋の力が負けてしまうと、脂肪は容易に前へとせり出してきます。

特に、現代人はパソコンやスマートフォンの画面を長時間見続けることが多く、まばたきの回数が減少しがちです。これが眼輪筋の運動不足を招き、若年層であっても目の下の膨らみが目立つ原因の一つとなっています。

重力に負けて前に押し出される眼窩脂肪

眼窩脂肪は、眼球を衝撃から守るクッションのような柔らかい組織です。この脂肪は一つのかたまりではなく、内側・中央・外側の3つの区画に分かれています。

重力の影響を常に受け続けているため、これら全ての脂肪が下へ、そして前へと移動しようとする力が働きます。

特に目立ちやすいのが内側と中央の脂肪です。これらの脂肪が突出することで、涙袋(眼輪筋の力こぶ)の下に新たな膨らみが形成されます。

本来チャームポイントであるはずの涙袋が、突出した眼窩脂肪と一体化してしまい、目元全体が腫れぼったく見えてしまうこともあります。

このように、重力と組織の脆弱化が重なることで、目の下の膨らみは不可逆的に進行していきます。

目の下の構造変化の比較

構造要素若い頃の状態進行した状態
眼球の位置靭帯により高い位置で保持下がり気味になり脂肪を圧迫
眼輪筋(筋肉)厚みがあり脂肪を抑えている薄く伸びて脂肪を抑えられない
眼窩脂肪眼窩内に収まっている前方へ突出し膨らみとなる

目の下のくぼみ|痩せや加齢によるボリューム減少と骨格の影響

膨らみとは対照的に、目の下が凹んで影ができる「くぼみ」タイプも存在します。これは組織が増えたり突出したりするのではなく、必要なボリュームが減少したり、骨格が変化したりすることで生じます。

くぼみによる影は、疲れた印象や実年齢以上に老けた印象を与える大きな要因となります。

頬の脂肪が下がり境界線が目立つ

顔の表面には「メーラーファット」と呼ばれる頬の脂肪体が存在します。

若い頃は、この脂肪が高い位置にあり、目の下の眼輪筋との境界をスムーズに覆い隠しています。そのため、目の下から頬にかけてのラインは滑らかな曲線をえがきます。

しかし、加齢とともにメーラーファットは重力に従って下方向へと移動(下垂)します。頬の頂点が下がると、それまで隠れていた目の下の骨の縁や筋肉の境目が露わになります。

目の下の皮膚は非常に薄いため、このボリュームの移動が顕著に現れ、目の下と頬の間に溝のような段差が生まれます。これがくぼみとして認識される影の正体の一つです。

骨吸収による眼窩の拡大と皮膚の陥没

顔の骨格も、年齢とともに変化し続けます。特に注目すべきは「骨吸収」という現象です。加齢により骨密度が低下すると、頭蓋骨の形状もわずかに縮小していきます。

目の周りの骨である眼窩に関しては、骨が吸収されることで穴が外側や下側に向かって広がっていく傾向があります。

眼窩の縁が後退して広がると、その上を覆っている皮膚や筋肉の土台が失われることになります。テントの支柱を短くすると布がたるむのと同じ原理で、皮膚は支えを失い、眼窩の中に落ち込むように陥没します。

この骨格レベルでの変化が目の下の深いくぼみを作り出し、目元が落ち窪んだような印象を与えてしまいます。これはスキンケアでは改善できない構造的な問題です。

皮下脂肪の減少が招く目の下のコケ

目の下の膨らみの原因となるのは「眼窩脂肪」ですが、それとは別に皮膚のすぐ下にある「皮下脂肪」は年齢とともに減少する傾向があります。特に痩せ型の方や、急激なダイエットをした方は、顔の皮下脂肪が失われやすいです。

目の下の皮膚は人体の中で最も薄い部分の一つですが、ここの皮下脂肪が減ると、さらに皮膚のハリが失われます。クッション材がなくなることで眼輪筋の赤みや血管の色が透けやすくなるだけでなく、物理的な凹みが強調されます。

ふっくらとした若々しいボリューム感が失われ、いわゆる「コケ」た状態になることで、影が濃く見えてしまうのです。

くぼみ進行の要因と影響

要因具体的な現象見た目への影響
脂肪の下垂メーラーファットが下がる目と頬の境界線が目立つ
骨の萎縮眼窩の骨が溶けて広がる目周りが落ち窪む
皮下脂肪減少表面のボリュームロスやつれた印象、コケ感が出る

膨らみとくぼみの見分け方|自宅でできる簡単なセルフチェック法

自身の目の下のクマが「膨らみ」主体のものなのか、「くぼみ」主体のものなのか、あるいはその両方なのかを知ることは、正しい対策を立てるために重要です。

専門的な機器を使わなくても、鏡と照明があればある程度の自己診断が可能です。以下のポイントを参考に、ご自身の目元の状態を観察してみてください。

膨らみタイプの特徴

  • 真顔で正面を見たとき、涙袋の下にさらに別の膨らみがある
  • その膨らみは指で軽く押すと弾力があり、押し返される感覚がある
  • 笑うと膨らみが強調されたり、涙袋と一体化して大きく見えたりする

くぼみタイプの特徴

  • 目の下の骨の縁に沿って半円状のライン(溝)がくっきりと見える
  • 横顔を見ると目の下から頬にかけてのラインが平坦、または凹んでいる
  • 夕方になると特に目が落ち窪んで見え、疲れ顔が顕著になる

顔を天井に向けた時の変化を確認する

前の章でも触れましたが、顔の角度を変えるチェックは非常に有効です。手鏡を持ち、天井を見上げるように顔を上に向けます。

この時、膨らみがあるタイプの方は重力の影響で脂肪がわずかに眼窩内に戻るため、膨らみが少し平坦になります。しかし、完全にはなくならず、皮膚の余り具合によっては膨らみの輪郭が残ります。

一方、くぼみタイプの方は上を向くことで皮膚が引っ張られ、凹みが目立たなくなることが多いです。ただし、骨格的に深いくぼみがある場合は角度を変えても溝が残り続けます。

また、上を向いた状態で照明が真上から当たるように調整すると膨らみがある場合はその下に影ができ、くぼみの場合は溝全体が影になります。

笑顔を作った時の涙袋と脂肪の動きを見る

表情を作った時の変化も重要な判断材料です。鏡の前で「ニッコリ」と笑ってみてください。この時、眼輪筋が収縮して涙袋が強調されます。

もし、涙袋の下に別の膨らみがあり、笑うとそれがさらに押し出されるように見えるなら、それは眼窩脂肪による膨らみです。

逆に、笑うことで頬の肉が持ち上がり、目の下の溝が埋まって目立たなくなるなら、それはくぼみによる影の要素が強いと言えます。

笑った時に目の下の線が深くなるか、薄くなるか、その変化に注目することで筋肉と脂肪の関係性が見えてきます。

照明の当たり方で変わる影の濃さを観察する

照明環境を変えて観察することも推奨します。

例えばダウンライトのような上からの強い光の下では膨らみやくぼみによる影は最も濃く、顕著に現れます。逆に、リングライトのように正面から均一に光を当てると、影が飛びやすくなります。

もし正面から光を当てても黒っぽい色が消えない場合は、形状の影だけでなく、色素沈着(茶クマ)や血管の透け(青クマ)が併発している可能性が高いです。

形状による影(黒クマ)であれば、光の当てる角度を変えることで影の位置や形が劇的に変化するはずです。

懐中電灯などで様々な角度から光を当て、影がどのように動くかを確認すると、自分の目の下の凹凸構造が立体的に把握できます。

混合タイプの黒クマ|膨らみとくぼみが併発する複雑な症状

実は、多くの黒クマの悩みは「膨らみだけ」「くぼみだけ」という単純なものではありません。眼窩脂肪の突出(膨らみ)と、その下の皮膚や靭帯の凹み(くぼみ)が同時に存在している「混合タイプ」が最も一般的です。

このタイプは光の当たり方によって複雑な影を作り出し、非常に老けた印象を与えやすいため、最も厄介なパターンと言えます。

ティアトラフ(ゴルゴ線)と脂肪突出の併用

目頭から斜め下に向かって伸びる凹みのラインを「ティアトラフ(涙の溝)」と呼びます。また、そのさらに外側、頬の中央にできるラインを「ミッドチークライン(ゴルゴ線)」と呼びます。

混合タイプの方の多くは、このティアトラフが深く刻まれていると同時に、そのすぐ上に眼窩脂肪の膨らみを持っています。

つまり、山(脂肪の膨らみ)のすぐ隣に谷(ティアトラフのくぼみ)がある状態です。隣り合う「高い部分」と「低い部分」の落差が大きければ大きいほど、その境界線にできる影は濃く、深くなります。

この落差こそが、混合タイプの黒クマを強調させている最大の要因です。単に脂肪が出ているだけでなく、その下が凹んでいることで、相対的に脂肪がより飛び出しているように見えてしまうのです。

目の下が膨らんでいるのに目の下が凹んで見える理由

「膨らんでいるのに凹んでいる」という表現は矛盾しているように聞こえますが、これこそが混合タイプの特徴を的確に表しています。

眼窩脂肪がある部分は前方へ突出していますが、その土台となる骨の縁や、頬の上部の脂肪は加齢により後退・下垂しています。

人間の目は、明るい部分(膨らみ)と暗い部分(くぼみ)のコントラストで形状を認識します。目の下の脂肪が前に出ることで光を受けやすくなり(ハイライト効果)、その下のくぼみがより深い影(シェーディング効果)となります。

この視覚的な対比効果により、実際以上に凹凸が激しく感じられ、疲労感や老いが強調されてしまうのです。この場合、膨らみだけを取ってもくぼみが残り、くぼみだけを埋めても膨らみが残るため、両方への対処が必要になります。

治療難易度が上がる複合的な凹凸の状態

混合タイプの黒クマは単純なアプローチだけでは綺麗に改善しないことがあります。

例えば、突出している脂肪を取り除くだけ(脱脂術)では元々あった下のくぼみが改善されず、かえって目の下が平坦になりすぎて寂しい印象になったり、くぼみが強調されてしまったりするリスクがあります。

逆に、くぼみにヒアルロン酸などを注入して埋めるだけでは上の膨らみが残っているため、全体的に目が腫れぼったい印象になりかねません。

したがって、混合タイプの場合は「出ている部分を引っ込め、凹んでいる部分を持ち上げる」という、立体的かつバランスの取れた調整が求められます。

この微調整には高度な診断力と技術が必要とされ、黒クマ治療の中でも特に慎重な判断を要する領域です。

各タイプの特徴まとめ

タイプ形状の特徴影の出方
突出型(膨らみ)全体的に前へ出ている膨らみの下に丸い影ができる
陥没型(くぼみ)全体的に凹んでいる骨の縁に沿ってライン状の影ができる
混合型(W型)山と谷が隣接しているコントラストが強く、濃く深い影ができる

症状を悪化させる生活習慣と要因|加齢だけではない進行リスク

目の下のクマは加齢現象の一つと考えられがちですが、実際には日々の生活習慣が進行スピードを大きく左右します。

遺伝的な要素も強い一方で、後天的な環境要因によって20代や30代から症状が顕著になることも珍しくありません。無意識に行っている習慣が、目元の老化を加速させている可能性があります。

避けるべき悪習慣リスト

  • 寝る直前まで暗い部屋でスマートフォンを操作している
  • 仕事中、モニターを凝視してまばたきが極端に減っている
  • 花粉症やメイク落としで目元を強くこする癖がある
  • 塩分の多い食事やアルコール摂取が多く、頻繁にむくんでいる
  • コンタクトレンズの着脱時に、まぶたを強く引っ張っている

スマートフォンやパソコンによる眼精疲労

現代病とも言える眼精疲労は黒クマを悪化させる大きな要因です。

近くの画面を長時間見続けると、目のピントを合わせる毛様体筋が緊張し続けます。これにより目周りの血流が悪化し、青クマの原因となるだけでなく、老廃物が蓄積しやすくなります。

さらに、画面を凝視する際は無表情になりがちです。眼輪筋が動かない時間が長くなると筋肉は硬くなり、血流ポンプとしての機能も低下します。

また、目の疲れから無意識に目をこすったり、眉間にシワを寄せたりすることで、皮膚へのダメージや筋肉の偏った使い方が定着し、たるみやシワの原因となります。

デジタルデバイスとの付き合い方を見直すことは、目元の若さを保つために重要です。

瞬きの減少による眼輪筋の筋力低下

眼輪筋は、まばたきをすることで鍛えられ、維持されています。しかし、集中して作業をしている時、人間のまばたきの回数は通常の数分の一にまで減少すると言われています。

まばたきが減るということは眼輪筋を使う機会が減るということであり、これが筋力の低下に直結します。

前述の通り、眼輪筋は眼窩脂肪が前に出ないように抑える壁の役割をしています。筋力が低下するとこの壁が緩み、脂肪の突出を許してしまいます。

意識的にまばたきを増やしたり、眼輪筋を動かすようなトレーニングを取り入れたりしない限り、日常生活の中で筋肉は自然と衰えていきます。

運動不足が体のたるみを招くように、まばたき不足は目元のたるみを招くのです。

遺伝的要因による骨格と脂肪のつきやすさ

生活習慣とは別に、避けられない要因として「遺伝」があります。顔の骨格、眼窩の大きさ、眼窩脂肪の量、皮膚の厚さなどは親から受け継ぐ要素が強いです。

例えば、生まれつき眼窩の骨が大きく、眼球が前気味に出ている骨格の方は、若い頃から眼窩脂肪が突出しやすい傾向にあります。

また、頬骨が平坦な骨格の方は、目の下の皮膚を支える土台が弱いため、くぼみやたるみが生じやすいと言えます。

ご両親や祖父母に大きな黒クマや目袋がある場合、ご自身も将来的に同じような症状が出る可能性が高いと考えられます。

遺伝的要因が強い場合は、セルフケアだけで予防・改善することは難しく、早めの専門的なケアを検討することが望ましいでしょう。

タイプ別の解消アプローチ|足し算と引き算の考え方

黒クマを根本的に解消するためには、ご自身のタイプ(膨らみ、くぼみ、混合)に合わせた適切なアプローチを選択する必要があります。

美容医療の分野では、大きく分けて「余分なものを取り除く(引き算)」と「足りないものを補う(足し算)」、そして「組織を移動させる(移動)」という3つの考え方があります。

これらを単独、あるいは組み合わせて治療計画を立てます。

突出した脂肪を取り除く脱脂術の役割

「引き算」のアプローチとして代表的なのが、突出した眼窩脂肪を取り除く「脱脂術(経結膜脱脂法など)」です。これは、膨らみタイプの方に特に有効な手段です。

まぶたの裏側からアプローチし、余分な脂肪を適量除去することで、前に出っ張っていた部分を平らに戻します。皮膚表面に傷がつかないためダウンタイムが比較的短いのが特徴です。

しかし、取りすぎると逆にくぼんでしまったり、シワが増えたりするリスクもあります。また、くぼみがメインのタイプの方が脱脂だけを行うと、さらに影が深くなってしまうため、適応の見極めが重要です。

あくまで「出すぎている部分を引っ込める」ための手段です。

くぼみを埋める脂肪注入やヒアルロン酸の役割

「足し算」のアプローチは、くぼみタイプや混合タイプの方に必要となります。凹んでいる部分にボリュームを補うことで段差をなくし、影を消す方法です。

手軽な方法としてはヒアルロン酸注入がありますが、持続期間に限りがあります。より恒久的な効果を求める場合は、ご自身の太ももなどから採取した脂肪を注入する「脂肪注入」が選択されます。

特に混合タイプの場合、脱脂術で膨らみを取った後に、残ったくぼみや色味の改善のために脂肪注入を併用することが一般的です。

ボリュームを補うことで皮膚にハリが戻り、青クマなどの色味も改善される副次的な効果も期待できます。平らにならすために「埋める」という発想です。

靭帯を処理し移動させる裏ハムラ法の考え方

「移動」のアプローチとして知られるのが「裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)」です。これは突出している眼窩脂肪を切り取って捨てるのではなく、その下のくぼんでいる部分(ティアトラフ)に移動させて固定する方法です。

つまり、自分自身の組織を使って「山を崩して谷を埋める」という合理的な再配置を行います。同時に、くぼみの原因となっている靭帯を剥離して解除するため、再発のリスクが低く、滑らかな仕上がりになりやすいのが特徴です。

膨らみとくぼみが強く出ている混合タイプの方にとっては、理にかなった選択肢の一つと言えます。ただし、高度な技術を要するため、執筆医の経験や技術力が仕上がりを左右します。

タイプ別・適合するアプローチの目安

タイプ推奨される考え方主な手法
膨らみタイプ引き算(除去)脱脂術で突出した脂肪を減らす
くぼみタイプ足し算(注入)脂肪注入やヒアルロン酸で凹みを埋める
混合タイプ引き算+足し算、または移動脱脂+注入、または裏ハムラ法で再配置

よくある質問

マッサージで目の下の脂肪を減らすことはできますか?

残念ながら、マッサージで眼窩脂肪を減らしたり、突出を元に戻したりすることはできません。眼窩脂肪は構造的な問題で前に出てきているため、外部からの圧力で解消するものではないからです。

むしろ、強い力でマッサージを行うと、皮膚を支える靭帯(リガメント)が伸びてしまったり、摩擦によって色素沈着(茶クマ)を引き起こしたりするリスクがあります。

目の下の皮膚は非常に薄くデリケートですので、自己流のマッサージは避け、血行促進のためのホットタオルなどで優しくケアする程度に留めることが大切です。

痩せれば目の下の膨らみはなくなりますか?

体重を落としても、目の下の眼窩脂肪だけが都合よく減ることはほとんどありません。

むしろ、急激なダイエットを行うと、頬の皮下脂肪が先に落ちてしまい、目の下の膨らみが相対的に目立ってしまうケースが多いです。

頬がこけることで「膨らみ」と「くぼみ」の段差が大きくなり、黒クマが悪化して見える原因となります。

眼窩脂肪の突出は体重の増減よりも、眼球を支える構造の緩みに起因するため、ダイエットでの改善は期待できないと考えた方が良いでしょう。

アイクリームで黒クマは消せますか?

アイクリームは保湿や小じわの予防、皮膚のハリ感アップには有効ですが、黒クマの根本原因である「脂肪の突出」や「骨格的なくぼみ」による物理的な段差をなくすことはできません。

ただし、乾燥によるちりめんジワが影を濃く見せている場合や、ハリが出ることで多少目立たなくなる可能性はあります。

アイクリームはあくまで皮膚表面のコンディションを整えるためのものであり、構造的な影を消すための解決策ではないと理解して使用することが重要です。

20代ですが黒クマができるのは異常ですか?

決して異常ではありません。黒クマは加齢によるものというイメージが強いですが、骨格や眼窩脂肪の量は遺伝的要素が強く影響します。

生まれつき眼窩の骨が大きかったり、眼球が前に出ていたりする骨格の方は、10代や20代から眼窩脂肪の突出が見られることがよくあります。

また、若年層でもスマートフォンの長時間使用による眼精疲労や眼輪筋の衰えが原因で症状が現れるケースが増えています。年齢に関わらず、気になった時点でのケアや対策を検討することをお勧めします。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

日本美容外科学会認定専門医

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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