入れない理由|裏ミッドは「連続性」を整える設計から始める

裏ミッドフェイスリフト(裏ミッド)は「入れない」設計を基本にしたクマ治療です。入れない理由はシンプルで、入れずに成立させた方が、結果が安定しやすいと考えているからです。

執筆:芝 容平|院長紹介|最終更新:2026年2月25日

クマをどう捉えるか

クマが気になるときに、ふくらみは取ればいいし、「凹んでいるなら入れればいい」と考えるのは自然な流れです。実際、注入で凹みを膨らませることで満足できる方もいます。

ただ、私の中でのクマは“量を足して埋める”だけで説明できる現象ではありません。私はクマを「目の下〜頬の連続性が崩れて境界が影として目立つ状態」と見ています。その観点からは、そもそもクマを治療するために、「入れる」必要はないのです。

目の下と頬が滑らかにつながらず、境界が目立っている状態に対して、まず考えるべきは「足す」ことではなく、連続性の条件を整えることです。

「入れる」ことは後からできる。だから順番がある

まず大前提として「入れる」施術は、必要だと判断できたときに後から検討できる選択肢です。もし入れなければ、クマが治せないことが確実なら入れることを最初に選択する必要があるかもしれません。しかしながら、多くのクマは入れずに改善できています。そのため私は、まず入れない設計でクマ治療が成立するかを考えます。

また、最初から、その他の施術と注入を併用することも控えるべきだと考えています。セットで一緒に「入れて」しまうと、「何が効いたのか」が分かりにくくなります。例えば裏ミッドに注入を併用したとすると、クマの改善が連続性を整えた効果なのか、注入で「量」を加えて埋めた効果なのかの評価が曖昧になります。私はそれが好きではありません。

まず連続性を整える。必要なら、その後に必要があれば“足す”。順番を守り、分けられる治療は分けた方が、それぞれの結果が読みやすく、効果が安定しやすいと考えています。

クマ治療で使われる注入(ヒアルロン酸/脂肪注入)

クマ治療でよく行われる注入には、ヒアルロン酸と脂肪注入があります。ここで大切なのは、同じ「注入」でも性質が違うということです。

ヒアルロン酸:溶かせるけれど、簡単ではない

ヒアルロン酸はボリュームを補う治療です。ヒアルロン酸の利点は、注入して満足できなかったときに、ヒアルロニダーゼで溶かせることです。ただし「溶かせる=簡単に元に戻せる」ではありません。きちんと溶かすには技術が必要で、目の下は特に慎重さが求められます。

もう一つ、私が日常診療で強く感じている違和感があります。目の下のヒアルロン酸は「半年でなくなる」と説明されて治療を受けていることがありますが、私はそうではないと思っています。当院ではクマ治療の術前に、必ず触診を行いますが、ご本人も認識していないヒアルロン酸の残留を確認することがあります。「20年、30年前に一度だけ入れた」という方で、もう無くなっていると思って忘れていた方にヒアルロン酸が残っていて、ヒアルロニダーゼで溶かしてみたところ反応があった経験が複数あります。

私は、ヒアルロン酸を完全に否定したいわけではありません。ただ、思ったより長く残っていることがある治療である以上、多量の注入や、手術などとの併用は慎重になるべきだと考えています。必要に応じて最小限が、私のヒアルロン酸との向き合い方です。

脂肪注入:戻せない側面がある

脂肪注入は、いったん入れると「あとで調整する」が簡単ではない治療の一つです。脂肪が理想的に定着することもありますが、状態によっては、しこりや硬さとして残ってしまうことがあります。注入したが、思ったより減ってしまった場合には再度注入することは可能ですが、望まない形で残ってしまった場合に難しさがあります。

何が問題かというと、過剰に入ってしまった脂肪を取り除こうとしても“きれいに元通り”にはしにくいことです。壊死や線維化などの変化が絡むと、除去そのものが難しく、結果として可逆性が低くなります。つまり脂肪注入には、「戻せない治療」になり得る側面があります。

だから私は、裏ハムラや裏ミッド含めて、脂肪の移動で連続性を整えるタイプの治療と脂肪注入を、最初から同時に行いません。分けた方が、それぞれの狙いがブレにくく、良い結果が出ると考えています。

脂肪移動と脂肪注入は、条件が違う

裏ミッド(脂肪移動)は、連続性を整えるために“構造の条件”を変えていく発想です。一方で脂肪注入は、量を増やす目的を達成するために、生着といった条件が絡む治療です。目的も、成立の条件も違います。

同時に行うことを完全に否定する話ではありません。ただし、裏ハムラや裏ミッドの設計思想としては、まず連続性を整える。何が残るかを見極めてから、必要な手段を選ぶ。その方が結果が読みやすく、安定しやすい。私はそう考えています。

私が最初に確認する3点

私は、クマ治療の方針を決める前に、次の3点を確認します。

① 悩みの中心は「へこみ(量)」か「境界」か

埋めれば終わる話なのか。それとも境界が主役で、連続性の崩れを疑うべき状態なのか。ここが最初の分かれ目です。

② 目の下〜頬の連続性はどこで崩れているか

目の下単独の問題ではなく、“面”としてのつながりが崩れて境界が影として目立っているとき、足し算だけでは解決できないことがあります。

③ 連続性を整えたあとに、本当に“足す必要”が残るか

まず連続性を整えた上で、まだ必要なものが残るなら、そこで初めて「入れる」を検討します。

入れる行為も、状況によっては後からの調整が難しく、戻しにくい側面があります。入れないでクマが改善できるのであれば入れない方針で考えます。入れることが最適な場面もありますが、私は最初から注入を前提に決めません。まず連続性を整え、それでも必要が残るなら、そのときに「入れる」ことを検討します。

入れないのは哲学ではなく、設計の結論であり、自然な仕上がりのための手段です。