目の下にできる線「ゴルゴライン」と「ティアトラフ」|靭帯と骨格が作る影のメカニズム

目の下に現れる影や線は、単なる皮膚のたるみや加齢だけが原因ではありません。

特に「ゴルゴライン」や「ティアトラフ」と呼ばれる特徴的な線は、顔の深層にある靭帯(リガメント)の強固な癒着や、頭蓋骨の形状変化、脂肪の配置移動が複雑に絡み合って形成されます。

多くの人がこれらの線を「クマ」と混同しがちですが、実際には解剖学的な構造に起因する段差や影です。

正しい対処法を選ぶためには、自分の目の下の状態が皮膚の色素沈着なのか、それとも骨格と靭帯が作り出す構造的な影なのかを正確に見極める必要があります。

本記事では、専門的な視点からこれらの線ができる仕組みを紐解き、それぞれの特徴や違い、そして根本的な原因について詳しく解説します。

目次

目の下の線を作る正体と原因構造

目の下の皮膚に刻まれる線は皮膚表面だけの問題ではなく、その奥にある骨格、筋肉、脂肪、そしてそれらをつなぐ靭帯の相互作用によって生まれる構造的な「溝」です。

ゴルゴラインとティアトラフは、発生する場所や関与する組織が異なるため、それぞれを明確に区別して理解することが、適切なケアへの第一歩となります。

ゴルゴラインとは何か

ゴルゴラインは、医学的には「ミッドチークライン」とも呼ばれ、目頭の下あたりから頬の中央を斜めに横切るように走る線を指します。

漫画のキャラクターの特徴として知られることからこの名称が定着しましたが、実際には頬の皮膚とその下の組織をつなぐ支持靭帯が、加齢や重力の影響で強く引き込まれることで生じる窪みです。

この線は単なるシワとは異なり、指で皮膚を伸ばしても消えにくいという特徴を持っています。

皮膚と骨をつなぐ繊維状の組織がテントの支柱のように皮膚を内側から引っ張っているため、表面を撫でるようなケアでは改善が難しいのが現実です。

若い頃から骨格の形状によって目立つ人もいれば、年齢とともに頬の脂肪が減少し、皮膚が下垂することで徐々に顕在化する人もいます。

ティアトラフとの違いと見分け方

ティアトラフは「涙の溝」という意味を持ち、目頭から目の下の骨の縁に沿って半円状に伸びるへこみを指します。

ゴルゴラインが頬の中央付近に現れるのに対し、ティアトラフは目のすぐ下、まさに涙が流れるラインに一致するように形成されます。

この二つを見分ける最大のポイントは、その位置と深さの成因です。

ティアトラフは眼窩下縁(がんかかえん)と呼ばれる目の下の骨の縁に沿って皮膚が直接骨に付着している部位で目立ちます。一方、ゴルゴラインはそれよりもやや下方の頬の脂肪層の境目に現れます。

両者がつながって一本の長い線のように見えることもあり、これが目の下の影をより深刻に見せ、疲れた印象や老けた印象を強める要因となります。

各ラインの特徴比較

項目ゴルゴラインティアトラフ
主な出現位置目頭下から頬中央へ斜めに走る目頭から目の下の骨縁に沿う
医学的名称ミッドチークライン鼻頬溝(びきょうこう)
主な成因靭帯の癒着と脂肪の下垂骨の縁への皮膚癒着と脂肪突出

骨格と靭帯が織りなす構造的要因

顔の皮膚は一枚のマスクのように骨に乗っているわけではありません。特定の位置で「リガメント」と呼ばれる強靭な靭帯によって骨や筋膜に固定されています。

この固定点は、顔の立体感を保つアンカーの役割を果たしていますが、同時に皮膚の動きを制限し、窪みを作る原因にもなります。

目の下から頬にかけてのエリアは複数の靭帯が存在し、複雑な構造をしています。骨格が平坦で頬骨が低い日本人は、欧米人に比べて頬の脂肪を支える力が弱く、重力の影響を受けやすい傾向にあります。

そのため、靭帯の固定部分を境界線として脂肪が雪崩のように下がり、固定されたまま動かない部分との間に段差が生じます。これが影となり、線として認識されるのです。

年齢とともに目立つ理由

若い頃は肌にハリがあり、皮下脂肪も豊富で均一に分布しているため、靭帯による引き込みや骨の段差は目立ちません。

しかし、加齢に伴い肌の弾力を支えるコラーゲンやエラスチンが減少すると、皮膚は薄く硬くなり、靭帯の付着部がより鮮明に浮き上がってきます。

さらに、顔面の骨自体も年齢とともに萎縮します。土台となる骨が小さくなると、その上を覆っていた皮膚や脂肪が余り、たるみとなって現れます。

目の下の骨の縁が後退することでティアトラフが深くなり、頬のボリュームが下がることでゴルゴラインが顕著になるという悪循環が生まれます。

このように、加齢による変化は単一の要素ではなく、骨、筋肉、脂肪、皮膚のすべてが連動して線を深くしていくのです。

ゴルゴライン形成に関わる主要な靭帯

ゴルゴラインの形成には、顔面の特定の靭帯(リガメント)が深く関与しています。

これらの靭帯は皮膚を骨に繋ぎ止めるアンカーのような役割を果たしており、加齢による組織の変化とともに、その存在が皮膚表面に深い溝として現れるようになります。

ザイゴマティックリガメントの役割

ゴルゴラインの形成に最も直接的に関わっているのが「ザイゴマティックリガメント(頬骨靭帯)」です。

この靭帯は頬骨の弓状の部分から皮膚に向かって樹木のように枝分かれしながら伸びており、頬の皮膚や脂肪を本来の位置に保持する重要な支持組織です。

ザイゴマティックリガメントは非常に強固な結合組織であり、周囲の脂肪が加齢によって痩せたり下垂したりしても、この靭帯部分だけは骨にしっかりと固定されたまま動きません。

その結果、周囲の組織が下がっても靭帯部分だけが取り残される形となり、皮膚表面に食い込むような深い溝が形成されます。これがゴルゴラインの正体であり、単に皮膚を持ち上げるだけでは解消しない理由でもあります。

靭帯の緩みと皮膚の癒着

「靭帯が緩む」という表現がよく使われますが、実際には靭帯自体がゴムのように伸びてしまうというよりも、靭帯を構成するコラーゲン繊維の変性や付着している骨の萎縮によって、支持力が相対的に低下することを指します。

支持力が弱まると、支えきれなくなった脂肪や皮膚が重力に負けて垂れ下がります。

一方で、靭帯が皮膚に付着している接点は「癒着」に近い状態で強く結合しています。

周りの組織がふっくらとしているときはこの結合部は埋もれて見えませんが、組織が痩せてくると、マットレスのボタン留めのように一点が引き込まれた状態が目視できるようになります。

この癒着が強いほどゴルゴラインは深く、くっきりとした線として刻まれることになります。

表情筋の動きと靭帯の関係

顔の表情を作る筋肉(表情筋)の動きも靭帯と密接に関係しています。笑ったり話したりするとき、表情筋は収縮しますが、靭帯は動きません。

筋肉が動く部分と、靭帯で固定されて動かない部分との間に境界線が生じ、表情の変化とともに一時的なシワが現れます。

若い肌では弾力があるため、無表情に戻ればシワも消えます。しかし、長年の表情の癖や皮膚の弾力低下が重なると、この一時的なシワが折れ癖として定着しやすくなります。

特に頬を持ち上げる大頬骨筋などの筋肉が衰え、靭帯周辺の脂肪を支えられなくなると、静止時でもゴルゴラインが消えずに残るようになります。

筋肉のポンプ作用が低下することで局所的なむくみや老廃物の滞留も起こりやすくなり、溝をより強調させる要因となります。

靭帯と周辺組織の関係性

組織名主な働きゴルゴラインへの影響
ザイゴマティックリガメント皮膚と頬骨をつなぎ支える強い引き込みにより溝を作る主犯格
表情筋(大頬骨筋など)頬を持ち上げ表情を作る衰えると脂肪を支えられず線が定着
皮下脂肪(メーラーファット)頬にボリュームを与える下垂することで靭帯との段差を強調

ティアトラフを深くする骨格と脂肪

ティアトラフは目の下の骨の縁に沿ってできる影であり、その深さは骨格の形状と眼窩脂肪の状態に大きく左右されます。

加齢による骨の変化と脂肪の移動が組み合わさることで、目元の疲れた印象を決定づける深い溝が形成されていきます。

眼窩下縁の骨吸収と後退

顔の骨は一生変わらないものではなく、年齢とともに少しずつ吸収され、体積が減少していきます。

特に目の下の骨の縁である「眼窩下縁」は、骨吸収の影響を受けやすい部位の一つです。この部分の骨が吸収されて後退すると、眼球が入っている穴(眼窩)が広がったような状態になります。

骨の縁が後退することで、本来そこにあった骨による皮膚の支持が失われます。すると、皮膚は支えを失って落ち込み、眼窩の下縁に沿って深い溝が生じます。これが加齢に伴ってティアトラフが深くなる大きな要因です。

また、骨の後退は眼球を支える力の低下にもつながり、眼窩脂肪が前方へ押し出されやすい環境を作り出します。

眼窩脂肪の突出による段差

眼球の周りには、クッションの役割を果たす「眼窩脂肪」が存在します。

通常、この脂肪は眼窩隔膜という膜によって適切な位置に留められていますが、加齢により膜が緩んだり、眼球を支えるロックウッド靭帯が弱まったりすると、支えきれなくなった脂肪が前方へ突出してきます。

これが目の下の「目袋」と呼ばれる膨らみです。この突出した眼窩脂肪の膨らみと、その直下にあるティアトラフ(凹み)が隣り合うことで、高低差が強調されます。

光が当たると膨らみの下には濃い影が落ち、溝がいっそう深く見えるようになります。つまり、ティアトラフ単独の問題ではなく、上の膨らみと下の凹みのコントラストが、目元の影を強烈に印象付けているのです。

メーラーファットの下垂とボリュームロス

ティアトラフの下側、頬の上部に位置する脂肪塊を「メーラーファット」と呼びます。若い頃は、このメーラーファットが高い位置にあり、目の下の骨の縁を覆うようにボリュームを保っているため、ティアトラフは目立ちません。

しかし、重力の影響や支持組織の衰えにより、メーラーファットは徐々に下方向へ移動(下垂)します。さらに、加齢によって脂肪の量自体も減少(ボリュームロス)します。

これまでティアトラフを埋めて隠していた脂肪がなくなったり下がったりすることで骨格のラインが露わになり、溝がはっきりと現れるようになります。

眼窩脂肪の突出とメーラーファットの下垂が同時に進行することで、目の下から頬にかけての段差はより複雑で深いものとなります。

ティアトラフを悪化させる要素

要素変化の内容結果としての見た目
眼窩下縁(骨)骨吸収による後退と拡大皮膚の陥没と溝の深化
眼窩脂肪前方への突出(ヘルニア状態)目袋の形成と下部への影の投影
メーラーファット下垂および萎縮頬のボリューム減少による骨縁の露出

目の下のクマと線の複合的な症状

目の下の悩みは、単一の原因だけで生じているケースは稀です。多くの場合、ゴルゴラインやティアトラフといった構造的な線に加えて、皮膚の色味やたるみといった「クマ」の症状が複合的に重なり合っています。

これらの要素が互いに影響し合うことで、目元の暗さや老けた印象が増幅されています。

黒クマと線の重なり

一般的に「黒クマ」と呼ばれる症状は、まさにこれまで解説してきたティアトラフやゴルゴラインによる「影」そのものを指すことが多いです。

眼窩脂肪の膨らみと、その下の凹みが作る段差に照明などの光が当たることで影が落ち、黒っぽく見える現象です。

この黒クマは色素沈着ではないため、鏡を見ながら顔を上に向けて照明を正面から当てると薄くなったり消えたりするように見えます。

しかし、ゴルゴラインのような靭帯による強い引き込みがある場合、単なる影以上に深い溝として刻まれているため、光の角度を変えても線が完全には消えないことがあります。

黒クマと構造的な線が重なることで、メイクアップ(コンシーラーなど)でも隠しきれない頑固な悩みとなりがちです。

複合トラブルの内訳

症状の種類主な原因見え方の特徴
黒クマ(影クマ)凹凸による影上を向くと薄くなる、メイクで隠しにくい
赤クマ眼輪筋の透け、血行不良赤紫色に見える、皮膚が薄い人に多い
茶クマ色素沈着、角質肥厚茶色く濁る、皮膚を引っ張っても動く

皮膚のたるみによる陰影の強化

構造的な凹凸に加えて、皮膚自体の「たるみ」が影をより濃く、複雑にします。

加齢により皮膚の弾力が失われると、余った皮膚が袋状に垂れ下がります。

この余剰皮膚が眼窩脂肪の突出を支えきれずにさらに伸び、ちりめんジワのような細かいシワを併発させます。たるんだ皮膚は光を乱反射させず、影を吸収しやすいため、目の下全体が暗く見えます。

また、ゴルゴラインやティアトラフの溝部分にたるんだ皮膚が被さることで、線がより深く、折りたたまれたような形状になります。

この状態になると、単に凹みを埋めるだけでは皮膚の余りが解消されず、きれいな仕上がりにならないことがあります。

色素沈着や血行不良との関連性

構造的な線がある部分の皮膚は血行不良や摩擦によるダメージを受けやすい傾向にあります。凹凸があることで洗顔やメイクの際に無意識に力が入りやすく、摩擦による色素沈着(茶クマ)を招くことがあります。

また、眼輪筋の血行不良によって生じる「青クマ」や「赤クマ」が、ティアトラフの凹み部分と重なると、影の色が紫や濃い茶色に見え、より病的で疲れた印象を与えます。

特にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を持つ人は、慢性的な炎症や鬱血により目の下の皮膚色が暗くなりやすく、これが構造的な影と合わさって、見た目の悩みを深刻化させます。

構造上の問題(影)と、皮膚自体の色味の問題(色クマ)を分けて捉え、それぞれに対処する必要があります。

セルフチェックで自分のタイプを知る

自分の目の下にある線が単なる乾燥ジワなのか、それとも靭帯や骨格に起因するゴルゴラインやティアトラフなのかを正しく判断することは、適切なケアを選ぶ上で重要です。

専門医の診断を受けるのが確実ですが、自宅でも鏡を使ってある程度の判断が可能です。特別な道具を使わずに行えるチェック方法を行い、自分の症状がどのタイプに近いかを確認しましょう。

鏡を使った簡単な確認方法

まず、手鏡を用意し、自然光が入る明るい場所でチェックを行います。正面から顔を見た状態で、目の下の線や影の位置を確認してください。

  • 線の位置を確認する
    目頭から斜め下、頬の中央に向かって線が伸びている場合は「ゴルゴライン」の可能性が高いです。一方、目の際の下にある骨の縁に沿って半円状にへこんでいる場合は「ティアトラフ」と考えられます。両方がつながっているケースも珍しくありません。
  • 顔の角度を変えてみる
    手鏡を持ったまま、顔を少し上に向けて天井を見るようにします。この状態で正面から光が当たったとき、目の下の黒い色が薄くなったり消えたりする場合は、凹凸による「影(黒クマ)」が主な原因です。色がそのまま残る場合は、色素沈着(茶クマ)や血管の透け(青・赤クマ)が混在している可能性があります。

皮膚を引っ張ったときの変化

次に、指を使って皮膚の状態を確認します。優しく触れる程度ではなく、少し皮膚を動かすようにチェックします。

  • 目尻を横に引っ張る
    目尻を指で優しく横方向に引っ張ってみてください。このとき、目の下の色が薄くなれば青クマの可能性が高いですが、影の形が変わるだけで線自体が消えない、あるいは線が骨に張り付いているように感じる場合は、靭帯の癒着による構造的な線の可能性が高いです。
  • 頬の肉を持ち上げる
    指で頬の肉を少し持ち上げてみてください。これでゴルゴラインが薄くなる場合は、たるみによる要素が強いと言えます。しかし、持ち上げても線がくっきりと残る、あるいは逆に線が深くなるように感じる場合は、靭帯が皮膚を強く引き込んでいる証拠であり、単純なリフトアップだけでは改善が難しいタイプと推測できます。

照明の角度による見え方の違い

光の当たり方によって、線の見え方がどう変わるかを観察します。これは影の影響度合いを測るのに有効です。

  • 真上からの光(ダウンライトなど)
    洗面所やエレベーターなど、真上から強い光が当たる場所で鏡を見てください。このとき、普段よりも目の下の線や影が極端に濃く目立つようであれば、それは骨格や脂肪の突出による「構造的な影」です。物理的な凹凸があるため、上からの光で強い影が落ちるのです。
  • 正面からのフラットな光
    窓際で正面から自然光を浴びたとき、線が目立たなくなるなら、それは凹凸による影が主な原因です。逆に、光を正面から当てても茶色っぽい色が肌にへばりついているように見えるなら、色素沈着(茶クマ)のケアが必要になります。ゴルゴラインやティアトラフは「形状」の問題なので、光の角度で印象が劇的に変わるのが特徴です。

美容医療によるアプローチと改善策

ゴルゴラインやティアトラフは骨格や靭帯という深層組織に起因するため、化粧品やマッサージといったセルフケアだけで完全に消すことは困難です。

根本的な改善を望む場合、美容医療の力を借りて構造的な修正を行うことが近道となります。ここでは、代表的な治療法とその特徴について解説します。

ヒアルロン酸注入による充填

最も一般的で手軽な治療法の一つがヒアルロン酸注入です。窪んでいるティアトラフやゴルゴラインの直下に、適度な硬さを持つヒアルロン酸製剤を注入し、皮膚を内側から持ち上げることで段差を解消します。

即効性があり、ダウンタイムも短いのが利点ですが、注入技術が仕上がりを大きく左右します。

浅い層に入れすぎると青白く透けて見える「チンダル現象」が起きたり、注入量が多すぎると不自然に膨らんでしまったりするリスクがあります。

特に靭帯の癒着が強い場合、単にヒアルロン酸を入れるだけでは靭帯に押し返されてしまい、両脇に製剤が流れて余計に凸凹が目立つこともあるため、慎重な注入層の見極めが必要です。

脂肪注入でボリュームを補う

自分の太ももやお腹から採取した脂肪を加工し、目の下や頬の凹みに注入する方法です。

ヒアルロン酸と異なり、定着した脂肪は半永久的に残るため、長期的な効果が期待できます。また、脂肪に含まれる幹細胞の働きにより、皮膚のハリや質感が改善する副次的な効果も報告されています。

ゴルゴラインに対しては、失われた皮下脂肪やメーラーファットのボリュームを補うことで、全体的にふっくらとした若々しい印象を取り戻すのに適しています。

ただし、採取部位と注入部位の両方に侵襲があるため、ダウンタイムはヒアルロン酸よりも長くなります。また、注入した脂肪のすべてが定着するわけではないため、定着率を見越した注入量の調整が求められます。

裏ハムラ法による脂肪再配置

眼窩脂肪の突出(目袋)とティアトラフの凹みが併存している場合に適しているのが「裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)」です。

これは、突出している眼窩脂肪を切除して捨てるのではなく、その下の凹んでいるティアトラフ部分へ移動させて固定する方法です。

「山(脂肪の膨らみ)」を崩して「谷(骨の凹み)」を埋めるため、組織を無駄にせず、理にかなったフラットな形状を作ることができます。皮膚表面を切開せず、まぶたの裏側からアプローチするため、顔に傷跡が残らないのも大きな特徴です。凹凸による影を根本から解消するため、黒クマやティアトラフの改善に非常に高い効果を発揮します。

靭帯剥離が必要なケース

ゴルゴラインの原因が、ザイゴマティックリガメントの強力な癒着にある場合、単に何かを充填するだけでは線が消えないことがあります。このようなケースでは、カニューレと呼ばれる鈍針や特殊な器具を用いて、皮膚と骨をつなぎ止めている靭帯の繊維を物理的に剥離(リリース)する処置が行われることがあります。

癒着を解除することで皮膚が解放されて持ち上がりやすくなり、そのスペースにヒアルロン酸や脂肪を注入することで、より滑らかで自然な仕上がりを目指します。

フェイスリフトなどの外科手術と併用されることもありますが、注入治療のオプションとして行われることもあります。靭帯の処理は高度な解剖学的知識が必要とされるため、経験豊富な医師による施術が必要です。

治療法別の特徴まとめ

治療法アプローチ主な対象
ヒアルロン酸注入凹みを充填剤で埋める軽度〜中度の凹み、手軽さを重視
脂肪注入自家組織でボリューム補充長期持続を希望、色味改善も期待
裏ハムラ法脂肪の移動と再配置目袋と凹みが混在するタイプ
靭帯剥離癒着の物理的な解除癒着が強く線が深いタイプ

日常生活でできる予防とケアの限界

美容医療のような劇的な構造変化は望めませんが、日常生活でのケアを見直すことでゴルゴラインやティアトラフの進行を遅らせたり、悪化を防いだりすることは可能です。

ただし、間違ったケアは逆効果になることもあるため、何が有効で何が限界なのかを正しく理解し、過度な期待を持たずに地道に継続することが大切です。

紫外線対策と保湿の重要性

皮膚のたるみは紫外線による「光老化」が大きな原因の一つです。紫外線A波(UVA)は真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを破壊して肌の弾力を奪います。

肌の弾力が低下すると靭帯や脂肪を支えきれなくなり、ゴルゴラインやティアトラフがより深く刻まれることになります。

  • 徹底したUVケア
    季節や天候に関わらず、日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。特に目の下や頬骨の高い位置は日が当たりやすいため、重ね塗りが有効です。サングラスや帽子も物理的な遮断として役立ちます。
  • 高保湿によるハリ感維持
    乾燥は小ジワの原因になるだけでなく、肌のバリア機能を低下させ、老化を加速させます。セラミドやヒアルロン酸、レチノールなどが配合されたアイクリームや美容液を使用し、皮膚表面に潤いとハリを与えることで、浅い影を目立ちにくくする効果が期待できます。

表情筋トレーニングの是非

顔の筋肉を鍛える「顔ヨガ」やトレーニングは、たるみ予防として人気がありますが、ゴルゴラインやティアトラフに関しては注意が必要です。

適切な方法で行えば、眼輪筋や大頬骨筋の維持に役立ち、脂肪の下垂を多少防ぐことができるかもしれません。

  • 逆効果のリスク
    しかし、自己流のトレーニングで過度に筋肉を動かすと、表情ジワを深く刻んでしまったり、皮膚を伸ばしてたるみを助長させたりする恐れがあります。特に目の周りの皮膚は非常に薄いため、無理な負荷は禁物です。
  • 靭帯への影響
    また、筋肉を鍛えても、すでに癒着してしまった靭帯や、減少してしまった骨のボリュームを回復させることはできません。トレーニングはあくまで「筋肉の衰えを防ぐ」予防的なものと捉え、シワを増やさないよう鏡を見ながら慎重に行う必要があります。

摩擦を避けるスキンケア習慣

毎日のスキンケアやメイク、マッサージにおける「摩擦」は、目元の老化を早める大きな要因です。

強い力で擦ると皮膚内部のコラーゲン繊維が傷つき、色素沈着(茶クマ)を招くだけでなく、皮膚が伸びてたるみの原因となります。

  • 触りすぎないケア
    クレンジングや洗顔時は、指が直接肌に触れない程度の優しいタッチを心がけましょう。アイクリームを塗るときも、力が入りにくい薬指を使い、トントンと置くように馴染ませます。
  • 自己流マッサージの禁止
    「リンパを流す」といって目の下をグイグイ押したり引っ張ったりするマッサージは、繊細な靭帯や皮膚組織にダメージを与えるリスクが高いため避けましょう。ゴルゴラインやティアトラフはマッサージでは消えません。摩擦を極力ゼロに近づけることが、結果として目元の若さを保つ最善の策となります。

よくある質問

マッサージで線は消えますか?

消えません。

ゴルゴラインやティアトラフは、骨格、靭帯、脂肪配置という内部構造に起因するものです。

マッサージで一時的にむくみが取れてスッキリすることはあっても、靭帯の癒着を剥がしたり、減った骨を元に戻したりすることはできません。

むしろ、強いマッサージは皮膚を伸ばし、色素沈着やたるみを悪化させる原因になるため控えるべきです。

遺伝は関係ありますか?

大きく関係します。

骨格の形状(頬骨の高さや眼窩の大きさ)や、靭帯の強さ、皮膚の質感などは親から受け継ぐ要素が強いです。

子供の頃から目の下に影がある人や、若い年齢でゴルゴラインが現れる人は、骨格的に線が出やすい素質を持っていると考えられます。

親御さんに同様の特徴がある場合、将来的に同じようなエイジングを辿る可能性が高いため、早めの予防やケアが役立ちます。

体重の増減で目立ち方は変わりますか?

変わります。

急激に体重が減ると顔の皮下脂肪も減少するため、皮膚が余ってたるみが生じ、骨格の輪郭が浮き彫りになることで線が目立ちやすくなります。

逆に体重が増えると、パンと張ってシワが伸びることもありますが、脂肪の重みで重力に負け、下垂が進むこともあります。

適正体重を維持し、急激な変動を避けることが、顔のたるみ予防には大切です。

どの年代から気になり始めますか?

個人差が大きいですが、ティアトラフは20代後半から30代にかけて気になり始める人が多い傾向にあります。これは眼窩脂肪の突出が始まりやすいためです。

一方、ゴルゴラインは皮膚のたるみや脂肪の下垂が顕著になる30代後半から40代以降に悩みとして顕在化することが一般的です。

ただし、骨格的な要因が強い場合は、10代や20代でも目立つことがあります。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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