アトピーや花粉症による目の痒みと茶クマ|色素沈着を防ぐ炎症対策と皮膚科治療

アトピー性皮膚炎や花粉症による執拗な目元の痒みは、単なる不快感にとどまらず、将来的に消えにくい「茶クマ(色素沈着)」を引き起こす最大の要因です。

無意識に行う「目を擦る」という行為が皮膚内部でメラニンを過剰に生成し、目元の印象を暗く定着させてしまいます。

この問題を解決するには、まず炎症を抑えて痒みを断ち切る治療を優先し、その上で美白ケアや美容医療を取り入れるという正しい順序が重要です。

本記事では、痒みのコントロールから茶クマの改善策まで、皮膚科医の視点を交えて体系的に解説します。

目次

摩擦が招く色素沈着と茶クマの発生要因

アトピーや花粉症を持つ人が茶クマに悩みやすい根本的な理由は、慢性的な「炎症」と物理的な「摩擦」の繰り返しによって、皮膚の防衛反応としてメラニンが過剰に生成され、それが排出されずに蓄積することにあります。

目元の皮膚は非常に薄くデリケートであるため、わずかな刺激でもダメージとして記憶し、茶色い色素沈着として肌に残ります。

痒みを我慢できずに擦ってしまう行為こそが、茶クマを形成するスイッチを入れているのです。

皮膚の防御反応としてのメラニン生成

私たちの皮膚は、外部からの刺激を受けると自分自身を守ろうとして防御態勢に入ります。アトピー性皮膚炎や花粉症による痒みを感じて目元を擦ると、その物理的な刺激が表皮の奥にあるメラノサイト(色素細胞)を刺激します。

刺激を受けたメラノサイトは「攻撃を受けている」と判断し、皮膚細胞の核を守るためのカーテンとして黒色メラニンを大量に作り出します。

通常であればターンオーバーによって排出されますが、アトピーやアレルギー体質の人はバリア機能が低下しており、炎症が慢性化しやすいため、生成のスピードに排出が追いつきません。

その結果、メラニンが真皮層にまで落ち込んだり、表皮に滞留したりして、茶色くくすんだ「茶クマ」として定着します。

慢性的な炎症による色素沈着(PIH)

摩擦だけでなく、炎症そのものも色素沈着の原因となります。これを炎症後色素沈着(PIH)と呼びます。花粉やハウスダストなどのアレルゲンが目元の皮膚に付着すると免疫反応として炎症物質が放出され、赤みや腫れが生じます。

この炎症状態が長く続くとメラノサイトが常に活性化した状態になり、擦らなくてもメラニンを作り続けてしまいます。特に目の周りは皮膚が薄く、炎症の影響が色濃く出やすい部位です。

茶クマを改善するためには、今ある色素を薄くすること以上に、この「慢性的な微弱炎症」を完全に鎮火させることが重要です。

赤みが引いた後も茶色い色が残るのはこのためであり、長期的なケアが必要です。

バリア機能低下と外部刺激の悪循環

アトピー素因がある場合、もともと皮膚のバリア機能が弱く、外部からの刺激を受けやすい状態にあります。バリア機能が低下した肌は水分を保持する力が弱く乾燥しています。

乾燥した肌は隙間だらけの状態であるため、花粉や化学物質などの異物が侵入しやすく、それがさらなる痒みを引き起こします。

痒いから掻く、掻くからバリアが壊れる、さらに異物が侵入して痒くなる、という「イッチ・スクラッチ・サイクル(痒みと掻破の悪循環)」に陥ります。

このサイクルを繰り返すたびに皮膚は厚く硬くなり(苔癬化)、色素沈着もより深く濃くなっていきます。茶クマ治療の第一歩は、この悪循環を断ち切ることに他なりません。

炎症と色素沈着の関係性

段階皮膚の状態茶クマへの影響度
初期段階(炎症)アレルギー反応や乾燥により、赤み・痒み・腫れが生じている状態メラノサイトが刺激され、メラニン生成の準備が始まる。まだ茶色くはないが予備軍。
中期段階(摩擦)痒みに耐えきれず手で擦る、叩くなどの物理刺激が加わるメラニンが大量放出される。摩擦による角質の肥厚も加わり、肌が茶色くごわつき始める。
定着段階(沈着)炎症が治まった後も、排出されなかったメラニンが表皮や真皮に残る明確な「茶クマ」として定着。紫外線などの影響も受けやすくなり、さらに濃くなるリスクがある。

茶クマと他のクマの見極め方と特徴

目の下のクマには「青クマ」「黒クマ」「茶クマ」の3種類が存在しますが、アトピーや花粉症の人が抱えるクマは圧倒的に「茶クマ」である可能性が高いものの、他のクマが混在しているケースも少なくありません。

自分のクマがどのタイプかを正しく見極めることは、適切なケアを選択する上で非常に重要です。

皮膚を優しく引っ張ったり、上を向いたりと簡単な動作で確認することで、色素沈着によるものか、血行不良やたるみによるものかを判別できます。

皮膚を引っ張った時の変化で確認する

茶クマかどうかを判断する最も簡単な方法は、鏡の前で目尻を優しく横に引っ張ってみることです。もし、皮膚と一緒にクマの色も移動するならば、それは皮膚自体に色が着いている「茶クマ(色素沈着)」です。

一方で、引っ張ってもクマの位置が変わらず、皮膚の下に色が透けて見えるようならば、静脈の鬱滞による「青クマ」の可能性が高くなります。

また、上を向いて天井を見たときにクマが薄くなる場合は、目の下の脂肪の突出や皮膚のたるみによる影である「黒クマ」です。

アトピーや花粉症の人は、慢性的な摩擦により皮膚が厚くなっていることが多いため、茶クマの特徴である「皮膚の移動と共に色も動く」現象が顕著に現れます。

色味の違いと発生原因の比較

クマの色味も重要な判断材料です。茶クマは名前の通り、茶色や黄色っぽく見え、日焼けした後の肌のような色調をしています。これはメラニン色素の色そのものです。

対して青クマは、青黒く見えたり紫がかって見えたりします。これは寝不足や冷え、眼精疲労によって血液中の酸素が不足し、還元ヘモグロビンが増えて静脈が青く透けて見えるためです。

黒クマは実際には色はついておらず、凹凸による「影」であるため、光の当たり方で濃さが変わります。

アレルギー体質の人は鼻炎による鼻づまりで血行が悪くなりやすく、茶クマと青クマを併発している「混合タイプ」も多く見受けられます。この場合、まずは茶クマの色素沈着ケアを優先しつつ、血行促進も行う必要があります。

皮膚の質感と小じわの有無

茶クマ、特にアトピー性皮膚炎やアレルギーによる茶クマは、色だけでなく「質感」にも特徴があります。長年の炎症と摩擦により、目の下の皮膚がきめ粗くなり、ごわごわとした硬さを感じることがあります。

また、乾燥によるちりめんじわ(小じわ)が目立つことも特徴です。色素沈着はしわの溝に溜まりやすく、しわが深いほどクマが濃く見える傾向があります。一方、青クマや黒クマは皮膚の表面自体は滑らかであることが多いです。

皮膚が硬く、乾燥しており、茶色い色が皮膚そのものについている場合は、間違いなく摩擦と炎症による茶クマ対策が必要です。

クマのタイプ別特徴とアレルギーとの関連性

クマの種類主な原因アトピー・花粉症との関連
茶クマ色素沈着、摩擦、紫外線、化粧品かぶれ極めて高く、痒みによる「擦る」行為が直接的な原因となる
青クマ血行不良、寝不足、冷え、眼精疲労アレルギー性鼻炎による鼻閉が目元の静脈鬱滞を招き、併発することが多い
黒クマ加齢によるたるみ、眼窩脂肪の突出、むくみ直接的な関連は薄いが摩擦で皮膚が伸びるとたるみが悪化し、目立ちやすくなる

痒みを即座に鎮めるための緊急対応

茶クマをこれ以上濃くしないためには、今まさに起きている「痒み」を物理的な刺激を与えずに鎮めることが大切です。

痒みを感じた瞬間に反射的に目を擦ってしまうのを防ぐため、適切な冷却や洗眼などの対処法を知っておく必要があります。

ここでは、皮膚科的な観点から、肌にダメージを与えずに痒みをコントロールする具体的な方法を提案します。

冷やすことで神経の興奮を抑える

痒みを感じた際、絶対に避けるべきなのは「温める」ことです。体温が上がると血行が良くなり、痒みを引き起こすヒスタミンなどの物質が活性化し、痒みが増幅します。

逆に、患部を「冷やす」ことは非常に有効です。保冷剤を薄手のハンカチやタオルで包み、まぶたの上から優しく当ててください。冷やすことで知覚神経の興奮が鎮まり、一時的に痒みの感覚を麻痺させることができます。

ただし、保冷剤を直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため、必ず布を一枚挟むことが重要です。また、冷やしすぎも血行不良による青クマの原因になるため、痒みが引くまでの短時間に留めましょう。

人工涙液や専用洗眼薬での洗浄

花粉やハウスダストが目に入っていることが痒みの原因である場合、物理的にアレルゲンを洗い流すことが先決です。

この際、水道水で目を洗うことは推奨されません。水道水に含まれる塩素が刺激になるほか、涙の浸透圧と異なるため、角膜や目の周りの皮膚に負担をかけるからです。

防腐剤が含まれていない「人工涙液(ソフトサンティアなど)」を点眼して溢れさせるか、カップ式の洗眼薬ではなく、点眼タイプの洗い流し用目薬を使用してください。

目から溢れた液は皮膚に残ると痒みの原因になるため、ティッシュで優しく吸い取るように拭き取ります。決して擦ってはいけません。

抗アレルギー点眼薬の適切な使用

痒みが頻繁に起こる時期、例えば花粉症のシーズンなどは痒くなってから点眼するのではなく、痒くなる前からの「初期療法」として抗アレルギー点眼薬を使用することが大切です。

抗ヒスタミン成分やケミカルメディエーター遊離抑制薬が配合された点眼薬を、医師の指示通りに定期的に使用することで、痒みの発症レベルを下げることができます。

目薬をさす際も容器の先がまつ毛や皮膚に触れないように注意し、清潔を保つことが二次的な感染や炎症を防ぐことにつながります。

  • 冷却パックの活用:保冷剤や冷たいタオルで患部を冷やし、炎症と痒みの神経伝達を抑制する
  • アレルゲンの除去:水道水は避け、防腐剤フリーの人工涙液を使用し、目に入った花粉や汚れを洗い流す
  • 保湿バリアの形成:痒み止めの軟膏やワセリンを薄く塗り、外部刺激が直接皮膚に触れないよう保護する

色素沈着を防ぐ毎日のスキンケア習慣

アトピーや花粉症を持つ人の目元は常にバリア機能が低下し、少しの刺激でもメラニンが生成されやすい状態にあります。

そのため、毎日のスキンケアにおいては「何を塗るか」以上に「どう塗るか」という物理的な接触方法が重要になります。徹底した摩擦レスなケアと敏感肌でも使える美白・保湿成分の選択が、将来の茶クマを防ぐ鍵となります。

摩擦を極限まで減らすクレンジングと洗顔

スキンケアの中で最も肌に負担をかけやすいのが、クレンジングと洗顔の工程です。メイクを落とそうとしてゴシゴシ擦る行為は、茶クマを悪化させる最大の要因です。

クレンジング剤は肌への摩擦が少ない油脂系オイルやミルクタイプを選び、たっぷりの量を使用します。指の腹が肌に直接触れないよう、クレンジング剤の厚みを利用して浮かせることが大切です。

アイメイクが濃い場合は全顔用のクレンジングで無理に落とそうとせず、ポイントメイクリムーバーをコットンにたっぷりと含ませ、肌に置いて馴染ませてから、スッと優しく滑らせるようにオフします。

洗顔時も泡立てネットで弾力のある泡を作り、泡のクッションで洗う「摩擦レス洗顔」を徹底します。

バリア機能を高める保湿成分の選び方

炎症を起こしやすい肌に必要なのは、まずバリア機能を正常に戻すことです。

そのためには「セラミド」が配合された保湿剤を選ぶことが重要です。特に「ヒト型セラミド」は肌への親和性が高く、角質層の水分保持機能を強力にサポートします。

その他、抗炎症作用のある「グリチルリチン酸ジカリウム」や「アラントイン」が含まれた化粧水やクリームを使用することで、慢性的な微弱炎症を抑えながら保湿することができます。

これらの成分はメラノサイトへの刺激信号を遮断する役割も果たします。アイクリームを塗る際も力が入りにくい薬指を使い、トントンと優しく置くように馴染ませます。

紫外線対策と物理的な遮断

炎症を起こした肌は通常よりも紫外線の影響を受けやすく、少量の紫外線でもメラニンが過剰に生成されます。これを防ぐため、外出時は必ず日焼け止めを使用します。

ただし、紫外線吸収剤は敏感肌には刺激となることがあるため、「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」を使用した低刺激なものを選びます。

また、花粉の時期は花粉が肌に付着すること自体が痒みの原因となるため、伊達メガネや大きめのサングラスを使用し、物理的に目元をガードすることも有効です。

帰宅後はすぐに洗顔し、付着したアレルゲンを落とす習慣をつけましょう。

敏感肌・アトピー肌のためのスキンケア適合表

カテゴリ推奨される成分・形状避けるべき・注意が必要なもの
クレンジング油脂系オイル、ミルク、クリームタイプ。ダブル洗顔不要なものが摩擦を減らせる拭き取りシート、洗浄力の強すぎるオイル、スクラブ入り
保湿ケアヒト型セラミド、ヘパリン類似物質、ワセリン、グリチルリチン酸2K高濃度のアルコール(エタノール)、香料、強い清涼感のある成分
紫外線対策紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)、SPF30・PA++程度の日常用紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等)、SPF50+などの高数値すぎるもの

皮膚科で行う炎症と痒みの治療薬

セルフケアで改善しない強い痒みや赤みがある場合、早期に皮膚科を受診して薬物療法で炎症を鎮火させることが、結果的に茶クマを最小限に抑える近道です。

皮膚科では、炎症の程度に合わせてステロイド外用薬や免疫抑制剤が処方されます。これらの薬に対する正しい知識と使用法を理解し、医師の指導の下で適切に治療を行うことが重要です。

ステロイド外用薬の役割と副作用管理

ステロイド外用薬は強力な抗炎症作用を持ち、急性期の痒みや湿疹を短期間で抑えるために非常に有効な薬剤です。

目の周りは吸収率が高いため、通常は眼圧上昇などの副作用リスクを考慮し、弱めのランク(マイルドやウィーク)の軟膏、または眼軟膏(プレドニゾロン等)が処方されます。

「ステロイドは怖い」というイメージから自己判断で使用を中断したり、少量しか塗らなかったりすると、炎症が長引き、かえって色素沈着が悪化する原因になります。

医師が指示した期間と量を守り、一気に炎症を叩くことが、トータルでの使用量を減らして副作用を防ぐコツです。

タクロリムス軟膏(プロトピック)の選択

ステロイドの副作用(皮膚の菲薄化や眼圧上昇など)を避けるため、顔や首などのデリケートな部分には「タクロリムス軟膏(プロトピック)」が処方されることが多くなっています。

これは免疫抑制剤の一種で、ステロイドのような皮膚萎縮の副作用がなく、長期間のコントロールに適しています。使い始めにヒリヒリとした刺激感を感じることがありますが、炎症が治まるにつれて軽減します。

特に、アトピー性皮膚炎で慢性的に目元が荒れている場合、この薬剤で良い状態を維持するプロアクティブ療法が推奨されます。

抗ヒスタミン薬の内服によるコントロール

外用薬だけでなく、内服薬(飲み薬)を併用することで、体の中から痒みを抑えるアプローチも大切です。

抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用することでヒスタミンの働きをブロックし、無意識に目を擦ってしまう回数を減らすことができます。

特に花粉症の時期や夜間に無意識に掻いてしまう場合には、眠くなる副作用が少ないタイプの第2世代抗ヒスタミン薬などを医師に相談してみましょう。

内側と外側からのダブルアプローチで、掻破行動を物理的に減らすことが色素沈着予防になります。

  • ステロイド眼軟膏(プレドニゾロン等):急性期の強い炎症を短期間で抑える。眼圧への影響を考慮し、眼科医や皮膚科医の管理下で使用する。
  • タクロリムス軟膏(プロトピック):ステロイドを使わない非ステロイド性抗炎症薬。長期使用でも皮膚が薄くなりにくく、顔の治療に適している。
  • 内服薬(抗ヒスタミン薬):痒みの原因物質をブロックし、就寝中などの無意識の掻きむしりを予防する。

定着した茶クマに対する美容皮膚科的アプローチ

炎症が完全に治まった後も残ってしまった茶クマ(色素沈着)に対しては、保険診療の範囲内では改善が難しい場合が多く、美容皮膚科での自由診療が選択肢となります。

ただし、アトピー素因がある肌は刺激に弱いため、治療法の選択には慎重さが求められます。レーザー治療や内服薬など肌の状態に合わせた適切な治療法を選択することで、頑固な茶クマも徐々に薄くしていくことが可能です。

レーザートーニングとピコトーニング

茶クマ治療の主流となっているのが、低出力のレーザーを顔全体や気になる部分に照射する「レーザートーニング」や「ピコトーニング」です。

これらは、メラニン色素を少しずつ破壊し、排出を促す治療法です。強いレーザーを一回で当てるのではなく、弱いパワーで回数を重ねていくため、炎症後色素沈着を起こしやすい肌質の人でも比較的安全に受けることができます。

ただし、まだ炎症が残っている状態で照射すると刺激となって逆に色が濃くなるリスクがあるため、必ず医師による診察で「炎症が治まっていること」を確認してから開始する必要があります。

美白外用薬(ハイドロキノン・トレチノイン)

自宅で行う治療として、強力な漂白作用を持つ「ハイドロキノン」や、肌のターンオーバーを促進する「トレチノイン(レチノイン酸)」の外用があります。

ハイドロキノンはメラニンを作る酵素を阻害し、今あるシミを薄くします。しかし、これらは効果が高い反面、かぶれや赤みなどの刺激反応が出やすい薬剤です。

特にアトピー体質の人はかぶれる可能性が高いため、低濃度から開始するか、より刺激の少ない「ルミキシル」などの代替薬を検討することもあります。

使用中は紫外線に非常に敏感になるため、徹底した遮光が必要です。

内服薬によるインナーケア

外側からの治療と並行して、内服薬でメラニンの生成を抑えることも有効です。

「トラネキサム酸」は、メラノサイトの活性化因子であるプラスミンの働きを抑え、肝斑や炎症後色素沈着の改善に効果を発揮します。

また、「ビタミンC(シナール)」や「ビタミンE(ユベラ)」を併せて摂取することで抗酸化作用を高め、メラニンの排出をサポートします。

内服薬は肌への物理的な刺激がないため、肌が敏感な時期でも安心して続けられる治療法です。最低でも3ヶ月以上継続することで効果を実感しやすくなります。

美容医療による茶クマ治療の比較

治療法期待できる効果アトピー・敏感肌への注意点
レーザートーニング(ピコトーニング)メラニンを徐々に粉砕し、肌全体のトーンアップを図る炎症がある部位には照射できない。乾燥しやすくなるため、施術後の保湿を徹底する必要がある。
ハイドロキノン外用「肌の漂白剤」と呼ばれ、メラニン生成を強力に抑制する刺激が強く、かぶれるリスクが高い。パッチテストが必須。赤みが出たら直ちに使用を中止する。
トラネキサム酸内服メラノサイト活性化のシグナルをブロックし、炎症性の色素沈着を防ぐ副作用が少なく安全性が高い。止血作用があるため、血栓症のリスクがある人は医師に相談が必要。

肌の再生力を底上げする生活習慣と栄養

どんなに高価な化粧品や治療を取り入れても、肌を作る材料となる栄養素が不足していたり、ターンオーバーを促す睡眠が質・量ともに欠けていたりしては茶クマの改善は望めません。

アトピーやアレルギーを持つ人は、腸内環境や自律神経が乱れやすい傾向にあります。体の内側から炎症を起こしにくい体質を作り、肌の再生サイクルを整えることが、遠回りのようでいて確実な色素沈着ケアとなります。

タンパク質と鉄分の積極的な摂取

皮膚の主成分はタンパク質です。新しい皮膚を作り出し、傷ついた組織を修復するためには、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)を毎食摂取することが大切です。

また、目の下のクマに悩む女性に多く見られるのが「鉄欠乏(貧血)」です。鉄分はコラーゲンの合成に必要なだけでなく、酸素を運ぶ役割も担っています。

鉄分が不足すると皮膚の代謝が落ち、顔色が悪くなるだけでなく、痒みを感じやすくなることもあります。ヘム鉄を含む赤身の肉や魚を意識的に摂り、ビタミンCと一緒に食べることで吸収率を高めましょう。

腸内環境とアレルギーの密接な関係

「肌は腸を映す鏡」と言われるように、腸内環境の状態は肌にダイレクトに影響します。特にアレルギー体質の人は、腸のバリア機能が低下している(リーキーガット)可能性が指摘されています。

腸内環境が悪化すると有害物質が血液中に漏れ出し、それが皮膚に到達して炎症や痒みを悪化させます。

発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルトなど)や水溶性食物繊維(海藻、もち麦など)を摂取し、善玉菌を育てることが、アレルギー症状の緩和と肌荒れの改善につながります。

睡眠の質と成長ホルモン

肌のターンオーバーを促し、ダメージを修復する「成長ホルモン」は睡眠中の深い眠りの時に最も多く分泌されます。痒みで夜中に目が覚めてしまうと、この修復プロセスが阻害され、色素沈着が居座り続ける原因となります。

寝室の温度・湿度を適切に保つ、寝具を清潔にしてダニ対策をする、就寝前のスマホ使用を控えるなど、睡眠の質を高める工夫が必要です。

十分な睡眠はストレスホルモンであるコルチゾールの過剰分泌を抑え、免疫バランスを整える上でも重要です。

肌再生と抗炎症のための栄養素リスト

栄養素主な働き多く含まれる食品
タンパク質皮膚や細胞の材料となり、バリア機能の維持に必要鶏ささみ、卵、鮭、豆腐、赤身肉
ビタミンA(βカロテン)皮膚や粘膜を健康に保ち、潤いを維持する人参、ほうれん草、カボチャ、レバー、うなぎ
オメガ3脂肪酸抗炎症作用があり、アレルギー症状を緩和する青魚(サバ、イワシ)、アマニ油、えごま油、くるみ

よくある質問

アトピーで長年目を擦ってできた茶クマは自然に消えますか?

一度真皮層まで落ち込んでしまった深い色素沈着や、長年の摩擦で皮膚が分厚くなった状態(苔癬化)が、何もしないで自然に完全に消えることは難しいのが現状です。

しかし、まずは「擦る」という原因を完全に断ち、適切な保湿と紫外線対策を継続することでターンオーバーにより表皮のメラニンが排出され、現在よりも薄く目立たなくすることは十分に可能です。

自然治癒を待つだけでなく、皮膚科での治療や美白ケアを組み合わせることで、改善のスピードを早めることができます。

 目の周りの炎症治療中ですがアイメイクをしても良いですか?

赤みや痒み、皮剥けなどの急性炎症がある期間は、アイメイクは控えることが重要です。

化粧品の成分そのものが刺激になるだけでなく、メイクを落とす際のクレンジングの摩擦が炎症を悪化させ、茶クマを定着させる原因になるからです。

どうしてもメイクが必要な場合は、お湯で落ちるタイプのマスカラやアイライナーのみにし、皮膚に負担のかかるアイシャドウやコンシーラーは避けましょう。

炎症が治まり、医師の許可が出てから徐々に再開することをお勧めします。

市販の美白アイクリームを使えば茶クマは治りますか?

市販の美白アイクリームは「予防」には有効ですが、すでに定着してしまった濃い茶クマを「治療」するほどの効果は期待できません。

市販品に配合されている美白成分の濃度は、安全性を考慮して低く設定されているためです。

しかし、保湿によって肌のキメを整え、光の反射でクマを目立たなくする効果や、これ以上の悪化を防ぐ効果はあります。

本格的な改善を望む場合は、医療機関で処方されるハイドロキノンなどの薬剤を使用する方が確実です。

アトピー肌ですがレーザー治療を受けても大丈夫ですか?

アトピー素因がある方でも現在の肌状態が安定しており、炎症が起きていなければレーザー治療を受けることは可能です。

ただし、健康な肌の人に比べてバリア機能が弱いため、出力設定を慎重に行う必要があります。炎症がある状態で照射すると、火傷のような状態になり色素沈着が悪化するリスクがあります。

必ずアトピー治療に理解のある医師の診察を受け、テスト照射などで肌の反応を確認してから治療を進めるようにしてください。

花粉症の時期だけクマが酷くなりますが対策はありますか?

花粉症の時期特有のクマの悪化は、痒みによる摩擦と、鼻づまりによる静脈の鬱滞が重なっていることが原因です。

対策としては、花粉飛散開始の約2週間前から抗アレルギー薬の点眼や内服を始める初期療法が最も効果的です。症状が出る前から炎症を抑えておくことで、シーズン中の痒みと摩擦を最小限に抑えることができます。

また、外出時のメガネ着用や帰宅後の洗顔を徹底し、アレルゲンを物理的に避けることもクマ予防につながります。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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